「10年ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第10話 現場に埋もれている管理技術をコアとして認識する

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管理技術にも焦点を当て現場に埋もれている強みを抽出する、という話です。

チームオペレーションに起因した強みが、現場に埋もれていませんか?

仕組みが未整備でも工程間で連携し、仕事をやりきれる現場力に光を当てていますか?

 

コア技術戦略では、

・モノづくりの力、技術力

・モノづくりの力を強化し続ける力、組織力

の2つに注目すると申し上げました。コア技術戦略では技術力だけでなく〇〇力も

外部環境変化に対応するには、ぶれることのない自社工場の強みを持つこと、そして継続的にそれを強化することが重要であり、その基盤となるのがコア技術です。

5年先、10年先の成長戦略を描く時に、把握しておかねばならないのはコア技術であり、自社の強みです。当然、成長戦略の主役になる新商品(製品)、新サービスを検討し、狙いを定めることも必要なことですが、まずは、自社の強みから考えます。

そして、コア技術には、固有技術や要素技術のような純粋に工学的な要因(技術)の他に、工程間の連携や現場での情報伝達網、完成品を作り上げる流れ、納期を遵守する体質、ノウハウの蓄積方法等、主に現場の組織力に起因する管理的な要因も含まれていることにも注目するべきです。

コア技術の見極めは、戦略立案上、とても重要な作業です。顧客価値を創出するのに貢献しているか否かも判断基準であり、自社視点のみならず、顧客から見たコア技術など、自社工場が持つ強みを広く抽出します。

工学的な要因に加えて、組織力に起因した強みにも焦点を当てます。

”コア技術”と言うと、純粋な固有技術、要素技術をピックアップすべしと考えがちですが、それだけではありません。組織力に起因した強みも加えます。チームオペレーションが機能することで初めて発揮される力です。ここでは管理技術と表現します。

仕組みが未整備でも工程間で連携して、仕事をやりきれる技術、暗黙知とされる現場のノウハウを蓄積していく技術、突発的なオーダーへも柔軟に対応できる技術・・・。

つまりチームとして成果を出す力(技術)もコア技術です。こうしたチームとして成果を出す力(技術)は、諸先輩方の実績をはじめ、その職場が積み重ねてきた歴史によって徐々に形成されるものです。

純粋な技術による強みもさることながら、その会社の歴史的な履歴に依存した強みは、それ以上に重要であると考えています。

例えばトヨタ自動車、2016年3月期業績は売上高、28兆4,031億円、営業利益2兆8,539億円であり、営業利益率は10%に達しています。これは日産、ホンダを大きく上回っています。

そして、2016年度は円高等の外部環境変化の影響で先期を下回る業績を予想していますが、それでもなお営業利益1兆7,000億円ですからすごいです。

このような実績を上げ続けるトヨタ自動車の強み、コア技術は何でしょうか?固有技術や要素技術の工学的要因(技術)でいくつか挙げられる項目はあるかもしれません。

例えばプリウスに代表される「ハイブリット技術」には、実績から考えるに一日の長があると思われます。ですから、この「ハイブリット技術」はトヨタのコア技術のひとつに挙げてイイかもしれません。

ただ、そのハイブリット車の将来が明るいのかというとそうでもないようです。原油値下がりの影響を受け、北米市場では大型SUVの売れ行きが伸びつつあるとか、あるいは次期の主流派は燃料電池車?電気自動車?等、多様な議論があって、ハイブリット車で絶対優位を築けるわけではないようです。

したがって、「ハイブリット技術」が技術的に優位ではあるかもしれませんが、トヨタの将来を全て背負う「コア技術」という括りで考えるには少々違和感があります。「コア技術」はその企業の屋台骨を支える技術ですから。

トヨタの競合である日産自動車はその昔から「技術の日産」と言われるように技術にこだわりを持っていますし(その度合いが強すぎて、ゴーン氏の登場となったわけですが)、ホンダは創業者のDNAが脈々と受け継がれロボットや飛行機などその独創的な技術への取り組みはホンダらしさと言われます。

ですから、自動車メーカーが有している多様な固有技術の中で圧倒的な差別化によって持続的な競争優位性を確立する程のものは存在しない、世の中で工学的にウチしかできない絶対的な固有技術、要素技術というのは意外と少ない。このようにも考えられます。

業種業態によっては、世界を見回してもウチしかできない〇〇〇というのはあるかもしれません。しかし、少なくとも自動車業界では企業連携が進む中で、独自に有する圧倒的な固有技術や要素技術は意外と存在していないようです。

では、トヨタの圧倒的な業績を生み出す源泉、「コア技術」は何か?

固有技術や要素技術のような純粋に工学的な要因(技術)に加えて、現場の組織力に起因する管理的な要因も含めた、「車で商売をする力」、ではないでしょうか。

自動車は3万個程度の部品で構成されています。これだけの部品を、しかも多種多様な仕様に対応して、製造、調達し組み立てる。それも安く、短時間にです。

トヨタ自動車の営業利益率の高さから判断すると、明らかに日産やホンダよりも、製造原価から販管費まで含めた費用の効率がイイ。

ジャスト・イン・タイムと自働化の2本柱で代表されるトヨタ生産方式によって最適な生産活動が展開され、滞りなく顧客へ商品が届く流れができていることこそとトヨタの強み。

ハイブリット技術などの固有技術の強みもさることながら、多種多様な仕様に応じてタイムリーに、自動車という商品を顧客へ届けられる力がコア技術。

こうした力は一朝一夕に出来上がるものではなく、トヨタが創業以来、重ねてきた歴史によって形成される、まさにトヨタならでは強みであり、工学的な要因と比較して圧倒的に模倣困難性が高いです。

設計開発力、モノづくり力、品質力、販売力、こうしたトータルの力が営業利益率に表れていると考えられます。

ですから、コア技術では組織力に起因した「管理技術」にも注目したいのです。

自動車部品工場で開発業務の責任者時代に次のようなことがありました。

売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新製造技術開発のプロジェクトに取り組んでいた時のことです。

コア技術と認識していた加工技術を発展、高度化させる方針で新製造技術の開発を進めていました。そのコア技術の要素技術はプレス機、金型、金型冷却技術等、複数あり、各要素技術の部会を設けて開発を進めていきました。

そして、開発を進めるうちに現場での課題が明確になりました。新たな製造技術を成功させるには、プレス機稼働中の現場での監視、および金型整備でのチェック作業を強化する必要があったのです。

その対応に不備があると不稼働につながるトラブルを引き起こす懸念がありました。

そこで、製造の現場リーダーや各工程のキーパーソンと、いかにやりきるかを繰り返し話し合い、実践に備えました。

いよいよ、当新製造技術での量産が立ち上がり、稼働率、品質をヒヤシヤしながら監視したわけですが、当初、慣れない新技術でドタバタがありましたが、現場が踏ん張ってくれたお陰でなんとか採算ベースにのる生産活動に至りました。

振り返ると、現場力のお陰であったと改めて実感します。

新技術を無事に立ち上げるのに欠かせない現場力を磨き上げること、それに関しては、私自身何もしていません。

現場は独自にやるべきことを認識し、足りないことは現場の中で補い、現場力を高めてくれていたわけです。

こうした現場力は、私がその現場を離れ、全く異なる企業の、異なる現場を経験した時に実感したものです。

チームオペレーションが機能することで発揮される力、組織力を基盤にした”管理技術”もコア技術と考えるべきです。

見えないけれども、しっかりと根を張って現場に定着している組織力を基盤とした力、管理技術にも焦点を当てて、コア技術の把握に努めます。

そして、経営者が自らの言葉で、「現場で決められた○○をやりきる管理の力、組織の力も我々のコア技術である」とを語っていただきたいです。

現場では、自分たちの働きをトップがそのように見てくれていることを知って、ますます、やる気を出して、その力に磨きをかけることでしょう。

さらに、別の現場ではこんなことがありました。

板金、溶接加工が中心の生産現場において、汎用旋盤やフライス加工機を操って機械加工に対応していたベテラン作業者がいました。生産現場で必要になる部品修理やちょっとした単品の部品加工で、そのベテラン作業者は活躍していました。

ある時、現場でそのベテラン作業者に、ある製品の部品加工をお願いしながら雑談した際、こうした職場で汎用性旋盤やフライス盤を使いこなす技能は貴重ですよね、という話になりました。

そのベテラン作業者が話してくれことには、

「俺も先はそう長くはないから、こうした技能を引き継がせたいのはヤマヤマなんだけどね。技能伝承について、上に提案するけれども、なかなか前に進まないねぇ。」とのこと。

たしかに、その工場での旋盤加工やフライス加工の必要性は低いです。生産ラインの工程には直接には関係がなかったからです。

ですから、その現場の管理者や幹部は必要性を感じつつも、主流の技術ではなく、かつ、今すぐどうのこうのという緊急性もないこともあり、静観していたのかもしれません。

ただし、切削加工はモノづくりの基本。ちょっとした対応には不可欠な技術です。こうした技術、技能を有することが安定した生産活動の下支えになっていることに気付きたいです。

トップの認識が薄いにも関わらず、そのベテラン作業者は、その技術、技能の重要性を体感しているので、伝えるべきことはしっかり把握している状態でした。

つまり、伝承すべき情報は、属人的ではありますが、”管理”されていたと言えます。こうした強みにも焦点を当てたいです。

現場には、地味で目立たないけれども、独自の技術や技能が必ず存在しています。現場の組織力に裏付けされた管理技術をはじめ、現場に埋もれている多様な技術や技能を、経営者自身が掘り起こし、それらに光を当てることは強みの強化につながります。

人は他人の役に立ちたい、チームの役に立ちたいと考えるものです。

トップが黙っていてもそうします。

ですから、光を当てることで、現場の働き甲斐も高まり、モノづくり力は強化されます。経営者の視点を、少々、現場の見えにくいところへも向けることで、そうなります。

コア技術は、固有技術や要素技術に加え、現場の組織力に基づいた管理技術、ノウハウ、技能によっても構成されている、と考えます。

現場に埋もれている”宝”を見つけ出す感覚で、経営者が、自社工場のコア技術を全て抽出して下さい。

5年先、10年先の成長戦略を描く時に、把握しておかねばならないのはコア技術であり、自社の強みですから。

まとめ:管理技術にも焦点を当て、現場に埋もれている強みを抽出する。