「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第128話 企業生存率

直面している問題はなんですか?

 

「従業員の”幸せ”を実現させることです。」

現場の豊かな成長を願い、現場改革に着手した中小製造企業経営者の言葉です。

付加価値額を積み上げる仕組みづくりの初手は一体化です。先の企業では経営者の右腕役をリーダーとしたプロジェクトチームを立ち上げようと準備をしています。

年明けより、具体的な現場活動を開始する予定です。経営者の右腕役の現場リーダーが現場を引っ張ります。

 

弊社の事業の柱は生産性向上と人材育成の仕組みづくりです。まずは改革を成功に導く継続的な現場活動に焦点を当てています。

経営者が改革への羅針盤を示しますが、それを実行するのは現場です。

 

実行されない羅針盤は、絵に描いた餅にとどまる以上、現場を引っ張る実行部隊の有無が現場改革をやり切るカギを握ります。

実行されなければ全く意味をなさないのが、いわゆる経営計画です。経営計画は床の間に飾るものではなく、使い倒すものです。

 

ですから、現場改革を推進させるには、経営者の見える化とプロジェクトチームづくりを平行させる必要があります。

経営者の見える化で経営者の想いを明文化、数値化するとともに、経営者の想いに共感し呼応する経営者の右腕役、プロジェクトチームを揃えます。

経営者の想いに共感しているチーム〇〇(〇〇には皆さんの企業名が入ります)が現場改革をやり切るのに必要なのです。

 

先の企業では、従来の仕事のやり方を見直し、”変える”ことに挑戦をし始めました。

当コラムでは、”変える”ことの重要性を繰り返し申し上げているので、”変える”必要性の背景説明は省きますが、先の経営者も”健全な”危機感を抱き、現場改革を決断したのです。

想いを明文化、数値化する際、経営者の方々に将来に向けて目指す状態を伺います。そうした中で先の経営者が語ったひとつが最初の言葉です。

中小製造現場を専門としている伊藤は経営者の方々のこうした言葉を身が引き締まる思いでお伺いしています。

 

 

 

 

 

経営が行き詰まったらトップが交代して、次の経営者の手腕に期待すればいい。。。。。これは多くの大手製造企業のやり方です。

しかし、ご自身の会社として経営している中小製造企業の経営者の多くはそんな悠長なことを言ってられません。

ましてや昨今の大手電機メーカーや自動車メーカーでやられていたような従業員視点が全く抜けた会社経営などはあろうはずがありません。

 

経営が行き詰まろうが、どうなろうがまず、ご自身が踏ん張って難局を乗り越えなければならないのです。

創業以来、積み重ねてきた歴史を踏まえると、第三者へバトンタッチとはそう簡単にいかないのが中小製造企業の工場経営であると感じています。

 

必死の思いで頑張っている中小製造企業経営者の後押しをするのが弊社の使命です。今年も引き続き、熱い想いを持った経営者の後押しをしっかりやらせていただきます。

 

 

 

 

 

さて、人生をかけて現場で汗を流している従業員の幸せを願う経営者の使命は”生き残ること”です。

持続的な競争優位性を確立して差別化を図り、競合に打ち勝つという競争戦略では「事業環境」に変化をもたらす要因が5つあるとしています。

・新規参入者の脅威

・サプライヤーの交渉力

・顧客の交渉力

・代替品や代替サービスの脅威

・既存企業同士の競争

 

こうした要因が事業環境に変化をもたらし、その変化に対応できない企業は市場からの退場を余儀なくされるのです。

事業環境に変化をもたらす要因を知り、変化の兆候を嗅ぎ取って、先手を打つことが求められます。従業員の幸せを実現させるには変化に対応しながら、まずは生き残らなければなりません。

 

2006年版中小企業白書p38には開業年次別、事業所の経過年数別生存率のデータが掲載されています。経済産業省工業統計表に基づくデータです。

従業者4人以上の製造業、法人と個人事業所の84年~02年開業企業の生存率平均値は下記となります。

創業後 1年後の生存率 72.8%

創業後 5年後の生存率 41.8%

創業後10年後の生存率 26.1%

 

製造業では、創業してから10年後、4社のうち1社しか生き残らないという事実があるのです。

さらに、翌年に生き残る生存率は生き残った経過年数を重ねるほど高くなる傾向にあります。10年間生き残った企業が翌年に生き残る生存率は92%です。

 

弊社にご相談いただく企業の多くは創業後10年以上ですので、皆さん、この生存率をクリアしていることになります。

そうです、皆さんの現場にはすでに”生き残る”だけのポテンシャルがあるのです。それがコア技術であり、固有技術と管理技術に蓄積されています。

 

現在、問題に直面しているということは、それは取りも直さず、事業のステージを高める段階に至ったことを意味するのです。

過去は過去で、過去のやり方で成果を出せました。ですから、皆さんの企業は生き残っているのです。

 

 

 

 

 

中小製造企業は創業後10年後、4社に1社しか生き残っていない事実を踏まえると、皆さんの現場は十分なサバイバル力を持っています。

ただ、5つの要因が事業環境に変化をもたらすので、過去のやり方ではうまくいかなくなるのです。変化がもたらす当然の帰結です。それを経営者は”問題”と認識します。

 

変化に対応する新たな仕事のやり方を模索することが次のステップへ歩みを進める際の課題です。

知らず知らずに蓄積したサバイバル力、つまりはコア技術(固有技術+管理技術)を生かせば十分に生き残れます。

 

現在ご指導中の企業で、”ピンチをチャンスに”をモットーに頑張っている経営者がいらっしゃいますが、まさにその方の心構えのとおりです。問題を機会に変えて、ビジネスのステージをアップさせます。

問題に直面したこと自体を問題視する方が、間々いらっしゃいますが、そうした考え方は誤りです、というかモッタイナイことです。

消えゆく競合他社を横目に見ながらこれまで事業を継続させてきた強力なサバイバル力をもってすれば、皆さんの事業の質を高められます。

問題に直面している事実から目を背け、機会を生かさず、容易なやり方に流され、なんだかんだと従来のやり方に始終していることが問題なのです。

 

10年間生き残った企業が翌年に生き残る生存率は9割以上であり、経過年数を重ねるほど高くなる傾向にあります。

皆さんには”これまで生き残ってきた”という貴重な実績があり、その結果、蓄積されたサバイバル力(コア技術)が現場にあるのです。

 

直面した問題の解決へ向け果敢に挑戦してください。弊社は挑戦する経営者の方々の後押しを今年も精一杯させていただきます。

・成長する現場は、生き残ってきた実績を生かし、ピンチをチャンスに変える。

・現状維持にとどまり、今の仕事のやり方でいいと思い込んでいる現場は、問題から逃避する。

ピンチ(問題)をチャンス(機会)に変えませんか?