「10年ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第1話 技術ロードマップの手法を生かした変革の取り組み

第1話

経営者が頭の中で描いている将来構想を、計画等で見える化して現場へ示していますか?

 

ある金属加工業の経営者の方とお話しした時、「自分の頭の中に将来構想が入っているので計画は取り立てて必要はない。」とのコメントを耳にしたことがあります。

中小製造業の強みは、経営者による意思決定が迅速であること、そして、その指示に従って現場も直ぐに動き出せることにあります。ですから、将来構想などの計画は、経営者さえ把握していれば概ね実務上は問題はないと考えがちです。

しかし、それでもモノづくり現場の将来構想の見える化を図るべきです。なぜならば、取り組みの過程で実務上の問題が起きないことと、工場経営の革新をやり遂げるのは別の話だからです。

経営者の想いを見える化することで、現場は現在行っている仕事の長期的な展望を理解できる状態に至ります。見通しが立つことで、現場の想いは不安から希望へ変化します。仕事への動機づけがなされます。

やる気を引き出しやすい状況に至れば、工場経営の革新を成し遂げ、経営者の想いを実現する確度が確実に高まります。つまり、儲かる工場経営を展開できます。

儲かる工場経営では、経営者と現場が一丸となって変革に取り組むこと、それをやり切って成果を出すことが求められます。無難に取り組みを進め、現場も指示のみにしたがってなんとなく仕事をしているようではダメです。現場からやる気を引き出す迫力ある取り組みが不可欠です。

製造業の現場が、今後10年で大きく変わると予想される昨今、現場生き残りのため、変革をやり切る方法論が問われます。

大手の自動車部品製造工場でエンジニアとして腕を磨いていた頃、上司や先輩に繰り返し問われた言葉があります。

「現場を変えているか?現場の見た目が3年変わらなかったら、それは技術屋の怠慢だ。」

将来を見通した技術イノベーションの取り組みが欠かせないことを強烈に教えてくれた言葉でした。モノづくりの現場を継続的に成長させるには絶対に必要なことでもあります。

現場が3年前と同じ技術のままであるならば、相対的には後退しているのに等しいです。

製造業は技術イノベーションの競争であり、先手必勝です。時間との勝負でもあります。

業界において競合先に先んじて技術開発や製品開発を成功させ、成果を市場に問うことが、モノづくり事業で勝つための原則です。ですから、自社の固有技術の進化を止めることはできません。一時的なカイゼンの成果に安住していては、技術で戦う世界で存続できないのです。

現場では、日々、予期せぬトラブルが発生します。いきおい現場のエンジニアは生産活動を支援する現状維持の業務に没頭する状況に陥りがちです。

しかし、その状況を甘受していては、長期的な視野に立って将来の目指すべき状態を設定するスキルが身に付きません。上司や先輩は、日々の業務をこなしつつ、将来を見通した仕事もするようにと言いたかったわけです。継続的な固有技術の進化のため、将来展望を設定し、現場と情報共有してリーダーシップを発揮せよとの教えでした。

現場を存続・発展させるには、日々の生産活動で稼ぎながら、将来への種まきもすることが必要です。この「今」と「未来」の取り組みの両輪をバランス良く廻し続けるのが儲かる工場経営の要諦でした。「今」と「未来」を現場へ提示すれば、現場の自発性が発揮され、取り組みが加速されることを実感しました。

そして、様々な仕事を経験していく中で、将来を見通すためにとても大切な観点があることにも気付きました。それは、今を知り尽くしていることです。

そこで、当時、自社の技術水準を把握するため、多くの人に協力をもらいながら業界の技術動向や、競合の固有技術を調査して廻りました。こうした調査を経て自社が持つ技術水準の「今」が整理されました。すると不思議なもので、将来の目指すべき状態が見えてきました。

「未来」はそれ単独では設定できません。「今」と比較して設定します。技術イノベーションは突拍子もないひらめきで実現させるのでありません。理論に沿った検討の積み重ね、つまり「今」を起点にして「未来」とのギャップを自社が持つ経験と知識で埋めて実現させるものです。

このように技術の将来像を見える化して技術開発を進める方法論が「技術ロードマップ」です。技術の今と将来を見える化します。そして技術開発や製品開発の方向性を打ち出します。新規事業プロジェクトの管理者をしていた時、大いに活用し、その効果を実感しました。

技術動向を見据えて、取り組むべき技術を設定し、選択します。技術開発には多額の資金が必要です。現場の固有技術 、競合の固有技術 、業界での技術動向を体系化することで、どの技術を開発するべきか、どの技術が競合との差別化で必要かを客観的に判断できます。より良い技術投資が可能になるのです。

加えて、計画全体を見える化することで周囲の協力を得られやすくなります。いつまで何が必要なのかが明示されているからです。何を提供すれば計画が成功しやすくなるか、周囲も理解できます。これは組織で仕事をする上で、とても重要な論点です。

特に現場が仕事の位置づけを理解できます。その後の協力も得やすくなります。工場全体が一体感を持って業務を進めることが可能でした。

さて、不確実性が高まっている昨今、工場経営の手法そのものにも革新が求められます。外部環境の変化に対応し、一層儲かる工場経営を展開して、豊かな発展を実現させるためです。

進化させねばならないのは自社技術だけではありません。オペレーションレベルからマネジメントレベルまであらゆる仕組みづくりで将来を見据え、変革をやりきる必要性が高まっています。未来へ向けた製造業の土台作りのため、モノづくり現場の変革の必要性を強く感じている次第です。

多くの経営者の方々には、今後大きく変わっていく製造業の姿を的確に捉え自社工場の変革を是非ともやりきっていただきたいです。変化はチャンスでもあります。未来志向で自社工場を豊かに成長させて欲しいと心から願っています。

そして、工場経営の革新手法に技術ロードマップの考え方を適用するのです。

そもそも、工場はモノづくりの現場であり「技術」との親和性は高いです。工場経営全般へ応用しやすいです。

技術ロードマップの考え方を工場経営の革新に生かすことの最大のメリットは、「今」を起点にして「未来」へ向けた目指すべき状態を設定できることです。「未来」へ向けて目指すべき状態が明文化、定量化され、経営者の想いが見える化されます。

その結果、現場は経営者の想いを理解し、将来への見通しを理解します。動機付けが図られます。「今」と「未来」を現場へ提示することは極めて効果的です。儲かる工場経営に変えたかったら、まず、「見せる」ことです。

技術ロードマップの考え方を工場経営の革新手法へ適用して、変革をやり切る原動力となる現場のやる気を引き出します。経営者がひとりで頑張る必要はありません。組織力を生かして変革をやり切ります。経営者の想いを見える化すれば実現できます。

 

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