「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第29話 成功体験以上に優れた先生はいない

小さな成功体験で現場のモチベーションを高めることは、長期の取り組みでは欠かせない。小さくてもイイので成功体験を共有すれば、経営者と現場で一体感、共感が生まれる、という話です。

 

小さくてもイイので現場に成功体験をさせる仕掛けがありますか?

小さな成功体験で経営者と現場で一体感や共感を感じることはありませんか?

 

 

考える枠組み(フレームワーク)を現場へ示すことは思考訓練の支援になります。(カイゼンを考える枠組みを現場へ示す)こうすることで、現場は解決策を広い水準で考えることができるからです。

繰り返し、申し上げていますが、カイゼンとイノベーションはセットです。両者を組み合わせることで、活動が現場に定着しやすくなります。

カイゼンをイノベーションを達成するための手段ととらえるのが当社の考え方です。そのためにはカイゼンを思考訓練の道具にも使います。

そして、10年ロードマップ戦略ではカイゼンを引き金として現場のモチベーションを高めるところから始めます。

 

 

こうした戦略をとる理由として、現場に納得感を感じさせるという狙いがあります。

カイゼンで取り上げるテーマが経営課題や経営者の考える長期計画に沿っていれば、イノベーションを目指すためにカイゼンに取り組むという位置付けがはっきりします。

カイゼンはイノベーションや大きなことを目指すための手段である・・・。現場はカイゼンに取り組む必然性、つまり納得感を感じます。

大きな目標を描き、それを達成する手段のひとつとして、カイゼンで汗をかくのです。

こうした考え方を共有できれば、経営者が活動自体に口を挟まなくても現場は自発的に、自律的に活動を深化させていきます。目的が現場の動機付けに欠かせないということです。

 

 

ですから、現場活動や小集団活動が全般的に停滞していると感じたら、活動自体が目的になっているのではないかと振り返って下さい。

カイゼンで目指すべきことが不明確になっていると、現場の納得感が低下します。

忙しい日々の生産活動に加えて、わざわざ時間を割いて取り組む必然性があると感じなければ、現場は自発的にカイゼンをやろうとはしません。

これは、決して現場の怠慢によるものではなく、カイゼンを定着させる仕掛けが整備されていないことに起因しているのです。

カイゼンの目的が不明確なのです。経営者はカイゼンの目的を現場にはっきりと示す必要があります。

 

 

10年ロードマップ戦略では、イノベーションの達成がカイゼンの目的であり狙いです。目的や狙いがはっきりすると現場もカイゼンに取り組む納得感を高めます。

カイゼンを単独に考えず、イノベーションの手段とすることで現場の納得感を高めることができるのです。

 

 

さらに、ここで、注目したいのはこの逆です。つまり、イノベーションも単独では考えないということです。

イノベーションをカイゼンと切り離し、長期計画にしたがって、ただ地道に、日々の生産と離れたところで取り組みを進める・・、というのは避けます。

イノベーションで目指す成果の水準は高いです。その現場、職場にとって、従来の延長線上にはない水準を狙うわけです。その現場、職場にとってのブレークスルーの水準です。

最終的に半分程度の成果にとどまるかもしれません。また、ほとんど成果が得られずに終えるかもしれません。

それでもやはり、継続しなければならないのがイノベーションの取り組みです。

ですから、イノベーションの達成には地道な取り組みが必要です。試行錯誤の連続です。いかにしつこく続けられるかがカギです。ですから、継続した動機付けが欠かせなくなります。

 

 

大きな取り組み、長期の取り組みをやりきるには、現場の動機付けへ配慮することは欠かせないことです。

そこで、考えたいのが、小さくてもイイので現場に成功体験をさせること。まずは、なんらかの結果を出させる仕掛けを設けることです。

そこで、日々の生産活動に直結しているカイゼンを動機付に活用するのです。

現場にとって、成功体験以上に優れた先生はいません。現場の自発性、自律性で進めた取り組みで、客観的な成果が得られ、それをトップがフォローし評価すれば、現場の動機付けは最大化します。

どんな取り組みでも、それが長期にわたる活動が必要であればあるほど、まずは小さくてもイイから現場に結果を出させる体験をさせるのが大切です。

成功体験をさせる仕掛けをあえて設けることも経営者の仕事になります。成功体験を通じて経営者との一体感や共感を醸成させることも期待できます。

 

 

 

 

中小製造業の現場の管理者を任された時のことです。

その職場では、数年にわたって赤字が続いていました。なんとか状況を変えようとして、現場メンバーとのヒアリングを通じて、現場のカイゼン計画を立てました。

目標は黒字にすること。そこで、複数の取り組みを同時並行して進めることとしました。それまで、こうしたカイゼンを経験したことのない職場でした。また、計画を立てて仕事を進める体験もなかった職場でもありました。

そこで、新たな試みとして、カイゼンによる現場活動に取り組んだわけです。

計画を立てることで見通しを示して、成果も定量化して貢献度合いを実感させることを狙いました。

 

 

こうした中で、小さいけれども、すぐに確実に成果が出る取り組みをあえて組み込みました。現場に設置されていた、とある暖房器具の光熱費用削減です。

使用状況を現場で観察すると、朝礼とともにスイッチを入れ、夕方終業と共にスイッチを消していました。そして、午前、午後の定時休みや昼休みの間、つけっぱなしの状態になっていることが多いことに気づきました。

原則、近くにいた人が消すのですが、明確な分担がなかったので、消し忘れもままある。こうした状況下で、”確実に消すことで費用を削減しよう”という項目も加えました。

こうした取り組みは、当然ですが、やれば確実に結果が出ます。その暖房機部は冬期間の数か月のみの使用ですから、大きな効果額が期待できたわけではありません。

 

 

取り組んで早速、翌月に少額ですが、成果が出ました。決して大きな金額ではありません。しかし、金額よりも、成果を出したという事実、実績の方が、その現場では重要でした。

カイゼンのテーマには担当者をつけます。そして、その担当者へ、毎月、前年対比で削減された費用、つまり効果を棒グラフの推移で示しました。

黒字にするために上乗せしたい付加価値のうちのこの分だけ、貢献できたと実感できたのです。それは、その職場にとっては従来にはない成功体験です。

「なかなかいい調子だね。」とグラフを見せながら説明すると、「これだけ儲かったのなら、給料もあがるのかなぁ」と担当者も満足げでした。成果を実感できたことにより確実に動機付けが図られました。

 

 

まずは、小さくてもイイから現場へ成功体験をさせることの大切さを感じた次第です。これはとりもなおさず、新たな管理者(私)と現場との共感を醸成することにも役に立ちました。

中小の製造現場で新たな管理者として勤務した時に、新参者の私自身を現場に受け入れてもらうためにも、まずは結果の出る取り組みにこだわりました。

 

 

 

 

豊かなが発展と成長を願うならば、イノベーションによるブレークスルーは欠かせません。ですから、多くの経営者はイノベーションを目指します。

しかし、イノベーションで目指す水準は高く、その達成のカギは持続した動機付けです。したがって、小さな成功体験によって、モチベーションを高め、取り組みを定着させます。

イノベーションをカイゼンとセットにするのは、カイゼンによる小さな成功体験をイノベーションへも波及させるためです。

カイゼンの成功体験の積み重ねの先に、ブレークスルー水準の成功が達成されるイメージです。小さくてもイイから経営者の立てた長期計画通りに現場が成果を出すことで経営者と現場の一体感も生まれます。

 

 

 

”勝ち癖”という言葉があります。規模にかかわらず成功の経験がなければ、そもそも成功の仕方を習得できません。カイゼンで”勝ち癖”をつけ、ブレークスルーによりイノベーション水準の成功を目指す。

人財は”褒めて”育てよ、とはしばしばいわれることですが、これもある意味、小さな成功体験を現場にさせることに繋がっていると感じています。

小さな成功体験で”勝ち癖”をつけ、イノベーション水準の大きな成功を勝ち取る。こんなイメージを描きます。

 

 

小さくてもイイので現場に成功体験をさせる仕掛けがありますか?

小さな成功体験で経営者と現場で一体感や共感を感じることはありませんか?

 

 

まとめ:小さな成功体験で、現場のモチベーションを高めることは、長期の取り組みでは欠かせない。小さくてもイイので成功体験を共有するれば、経営者と現場で一体感、共感が生まれる。