「10年ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第63話 改善活動で将来投資の原資を捻出する

貴社では、継続的な研究開発を実施するための経営資源を確保できていますか?

 

技術で戦うモノづくりの世界は、先手必勝です。

モノづくりに携わる経営者は、どなたも、自社のコア技術を深耕させ、周辺技術を強化することの重要性を理解されています。

 

規模では争わない中小製造企業が生き残る唯一の手段は、独自性の発揮です。

この独自性が顧客に認められ、初めて、顧客に貴社の製品が選ばれます。

独自性がなければ選ばれず、関心を引くために、低価格路線へ向かえば、その先どうなるかは言うまでもありません。

 

したがって、継続的に、組織的に、コア技術の深耕・強化を図る仕組み、体制を構築するのは儲かる工場経営の課題のひとつです。

大手企業ならば、技術開発や製品開発をする専門部隊がいます。

人やお金などの経営資源をたっぷりと持っている大手は、体力があります。

 

 

 

伊藤は、大手メーカーの工場で、入社後9年間ほど、技術開発業務に専念していました。

その間、原則、生産業務に、関わらない役割分担となっていたのです。

開発業務に遷延できたお陰で、成果を、新たな生産ラインへ反映させることができました。

大手では、こうした、人への「将来投資」が可能です。

 

一方、中小製造企業ではどうでしょうか?

企業規模が小さくなるほどに、技術開発や製品開発の将来投資を、継続的にできるところは少なくなる傾向にあると中小企業白書は説明しています。

継続的研究開発を実施している企業の割合が多い順位は、大規模企業(82%)、中規模企業(57%)、小規模企業(47%)です。(割合の数値は2009年中小企業白書より)

 

つまり、大手に負けない独自性を磨くために、中小製造企業の経営者が考えなければならないことは、研究開発テーマの選定もさることながら、それ以上に、継続的な将来投資を可能とする経営資源の確保です。

貴社では、継続的な研究開発に、どれほど将来投資をかけているでしょうか?

5年先、10年先を見据えた技術開発、製品開発へ、十分な将来投資を充てられているでしょうか?

技術で戦うモノづくりの世界は先手必勝なので、スピードを上げたいと考える経営者も多いことでしょう。

 

 

 

10人規模の自動車部品製造現場、管理者時代に、小規模の現場ながら多品種化に対応するための設備投資を計画したことがあります。

その現場のコア技術周辺技術強化に相当する取り組みです。

 

人材育成の目的も兼ねて、現場が主役になって、設備導入を進めてもらおうとしました。

そこで、現場リーダーに、取り組みを主導してもらう役割を委ねようとしましたが、即刻、そうした体制は敷けませんでした。

 

慢性的な人で不足で、シフトのつなぎで、現場リーダーも作業に入らなければならない状態だったのです。

現場リーダー抜きで現場が回るようにすることが、先にやらなければならない課題でした。

高付加価値化を進める余剰の経営資源を生み出す生産性向上です。

 

そこで、現場全員で知恵を出し、改善活動を進めました。

具体的には、役割分担の見直しと現場レイアウトの変更です。

その結果、課題を解決できました。

例外的な状況を除き、概ね現場リーダーは設備投資業務に専念できる状態に至ったのです。

 

さらに、数%にすぎませんが、職場全体の付加価値額生産性も向上しました。

そもそも、余剰の経営資源を生み出すことが、主目的の改善活動でした。

しかし、一方で、現場共通の指標である付加価値額生産性を高めたという実績も、併せて、現場へ示することができました。

利益につながる改善活動は、付加価値額生産性を必ず高めるので、成果の見える化により、現場は、「余剰の経営資源を生み出す取り組み」でも、達成感を実感できるのです。

 

 

 

先の例では、現場リーダー抜きの生産体制を再構築し、設備投資業務に専念してもらう環境を整備しました。

コア技術深耕・強化の将来投資を実現させることが、改善活動第一の狙いです。

言い換えれば、将来投資に向けた原資となる固定費の生産性、効率性向上です。

大きな目的を共有すると、現場のやる気が喚起され、利益につながる改善活動ができます。

 

セミナーでも申し上げていますが、改善活動とコア技術の深耕・強化をリンクさせることが改善活動を定着させる、ひとつのやり方です。

改善活動の目的が、明確になります。

そして、その目的が、大きければ、大きいほど現場は燃えます。

そうした改善活動を通じて、経営者は、継続的な研究開発を可能にする経営資源(人、お金、時間)を捻出するのです。

 

さらに、その改善活動の成果は、付加価値額生産性という指標でも見える化されます。

改善活動のフォローと評価の物差しです。

そして、その見える化のために機能しているのが、生産管理の体系となります。

 

コア技術の深耕・強化は改善活動および生産管理による見える化とつながっているのです。

この連鎖のイメージで、儲かる工場経営の全体最適化ができます。

 

技術開発、製品開発と改善活動および生産管理による見える化との連鎖を考えてください。

継続的な研究開発を可能とする将来投資の原資を捻出するためです。

 

この将来投資が、5年先、10年先の高付加価値化へつながります。

そして、経営者は、単価アップをしても顧客に選ばれる製品を、手にできるのです。

 

なお、このコア技術の深耕・強化の将来投資の規模は、貴社が獲得した付加価値額対比で考えます。

売上高対比ではありません。

将来投資は、固定費だからです。

付加価値額と固定費は、経営者が押さえておかなければならない指標のひとつ、損益分岐点比率に影響をします。

 

コア技術の深耕・強化の将来投資を捻出する改善活動の仕組みをつくりませんか?