「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第65話 想いがあれば実現する

社長の想い、現場へ伝えていますか?

 

金属製パイプの塑性加工で各種部品を製造する企業の工場見学をする機会がありました。

そこの現場では、情報通信技術(ICT)を積極的に導入し、生産管理に必要な情報を見える化しています。

 

その企業では情報の共有化により、自律性を発揮する環境を整備しようとしているのです。

現場に「気づき」を促すのが狙いとなっており、技術導入の目的が明確でした。

 

具体的には、製品ロットのトレーサビリティーや品質保証の機能を果たすシステムなどが構築されています。

その企業は従業員数が160名、資本金が4000万円の中規模製造企業です。

 

そこでは、IOTに代表されるICTを現場へ導入する取り組みが、地道に、計画的に行われている印象を受けました。

現場を見学し、担当者と話をして、地に足のついた活動をしているなと感じたわけです。

それだけ、現場担当者の取り組みに対する想いが伝わってきたのです。

この確固たる想いは、どこから?

取り組みを始めたきっかけを知って、納得しました。

 

 

 

 

 

社長は、現場の生産活動を見える化して、生産情報を共有したいというコンセプトを20年前から持っていたとのこと。

現在構築されている仕組みは、その成果物です。

社長自身が、生産活動の見える化を推進したいと20年前から想い続けていたからこそ実現しました。

 

同社の工場の入り口には、その日、工場を訪問する顧客の情報が、大型モニターに表示されるようになっています。

これは、現場向けの情報発信のためです。

 

このモニターを設置する前でも、社長は、口頭、その他の方法で、こうした情報を現場へ伝えていました。

しかし、ある時、それだけでは不十分であると気が付いたそうです。

 

そこで、工場の入り口にモニターを設置しました。(同社では、デジタルサイネージと表現していました。)

従業員は入り口にあるモニターを見て、今日工場を訪問するお客様を知ることになります。

 

事前情報に加えて、モニターでの情報。

そこまでしなければ、情報が、現場へ浸透しないと、社長は気が付いたのです。

 

社長曰く「社長の私自身が、見える化は重要だと言っておきながら、見える化していないではないか!」

そこで、モニターを設置したとの担当者の説明がありました。

 

 

 

 

 

情報共有が不十分であると感じた時、問題が現場側に有るのではなく、経営者側にあるのでは?と考える社長に導かれた現場のモチベーションはどのようなものでしょう。

このような社長の生産管理情報を見える化したいとの強い想いは、現場へも伝わります。

 

現場へIOTを導入した担当者も、社長の強い想いを知ったからこそ、知恵を絞るのに汗をかいたようです。

20年来の社長の想いを実現させるため、その担当者も10年以上にわたって、地道に取り組みを進めました。

 

例えば、加工機の加工数をカウントするのにスマホの加速度センサーを活用しています。

カウンターの代わりに、中古のスマホを購入して、それらを活用しているのです。

 

こうした工夫が浮かぶのも、社長の想いに呼応して、自分自身でもこうしたいとの想いを持ち続けたからこそだと語っていました。

想いがなければ、はじまらないわけです。

 

ちなみに、同社の現場では、カウンター代わりのスマホが40台近く設置されています。

中古品ですから、安価に入手できます。

 

 

 

 

 

社長の想いが現場のやる気を引き出し、コストパフォーマンスの高い投資を実現しました。

中小の現場では、社長の強い「想い」こそが、実現への原動力です。

社長が強く、熱く想うことで、現場が呼応します。

つまり、社長が「想い」を持たないかぎり、あらゆることは実現しません。

 

同社には、もともとICTに詳しい従業員はいませんでした。

金属加工のモノづくりメーカーだったわけですから。

そこで、社長は、ICTに詳しい従業員を採用しました。

しかし、その従業員は、モノづくりを全く知りません。

 

そこで、社長は丸2年をかけ、その従業員に現場を通じてモノづくりを教育したそうです。

そして、本職であるICTの仕事を全くさせませんでした。

 

「想い」があるからこそ、計画的に取り組めます。

人材へも積極的に投資をします。

全て、社長の「想い」次第です。

ですから、社長が「できない」と思った瞬間、何も実現しなくなります。

 

私自身、経営者が、現場に対して後ろ向きの考えを持つことで、現場の士気が下がってしまう場面に何度か遭遇しています

社長の想いが現場を動かすのです。

その想いこそが「モノづくり戦略」です。

 

現場を信じて情報開示を進め、見える化を実現させた社長の強い想いに触れられた工場見学でした。

 

ちなみに、その企業の従業員平均年齢は30歳台前半。

現場で会う若い方々、全員が、笑顔で挨拶をしてくれました。

こうしたモノづくり現場に身を置くと、とても気持ちがいいものです。

 

社長の想いを「モノづくり戦略」に現わして、現場を鼓舞しませんか?