「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第77話 緩やかにベクトルを揃え、突発案件へ対応する

貴社の突発案件への対応力はどの程度でしょうか?

 

柔軟性や小回り性、機動性は中小現場の強みです。

これらの強みは、突発案件への対応力でも評価できます。

 

さて、この突発案件、受注生産形態の現場においては、いつ来てもおかしくないものです。

納期の決定権が我々にはないからです。

顧客が決めます。

 

ですから、受注生産形態で必ずあるものです。

顧客要望の多様化を背景に、こうした案件が、今後少なくなることはありません。

 

 

 

ただ、見込生産の現場にしても、製品が多品種少量化している昨今、突発案件に相当する事態に直面することが多くなっているかもしれません。

・売れ筋を見極めた販売直前の生産計画変更

・急な需要拡大で機会損失を回避する緊急増産

など、ある意味では、こうした状況も、受注生産での突発案件と同じです。

 

現場にとっては、見込生産だろうが、受注生産だろうが関係なく、自分たちの生産リズムを壊す案件は、全て、”突発、特急”と感じます。

今は、多品種少量の時代です。

ですから、見込生産だろうが、受注生産だろうが、生産形態に関係なく、突発案件相当の要望があり、そうした要望は、今後、増えていくと推定されます。

 

 

 

今や、突発案件は、受注生産形態に特有のものではないと言えるようです。

そして、この突発案件は、現場担当者の悩みの種であり、ストレスの元になっています。

 

現場担当者にとって、突発案件は、せっかく自ら統制した世界の平和を乱す”侵入者”みたいなものです。

その案件へ対応する重要性は、頭では十分に分かっているのだけれども・・・、どうもね、というのが正直なところではないでしょうか。

 

 

 

板金加工製品の生産管理者を担っているときが、まさにそんな気持ちでした。

なんらかの理由で、突発にならざるを得なかったわけです。

したがって、依頼する側も無理なことをお願いしていることは理解しています。

 

ですから、しっかり対応できれば、次に繋がる可能性は大きいです。

ということはわかってはいましたが。

”待ってました!”とばかりに、突発案件の受注情報を受け取り、笑顔と共に突発案件の作業指示票を現場へ届ける・・・・。

こういうことは、ほとんどありませんでした。

 

現場に、”え~っつ”と言われ、どうしても無理なら、他の案件や工程間の調整をやり、なんとか力づくでやりきる。

一日中現場を調整で走り回ったこともあります。

なんとか処理を終えて、やれやれ、というのが現実でした。

 

 

 

 

 

重要性はわかっているけれど、調整の手間を考えると、やっぱりあって欲しくないというのが、現場担当者にとっての突発案件なのです。

貴社では、現場担当者の突発案件への悩み事に耳を傾け、解決策を関係者が集まり、議論したことがあるでしょうか?

 

突発的案件が現場担当者の悩みの種になっている理由はただひとつです。

対応が属人的であるからです。

突発案件への対応が、現場担当者の個人的な調整能力のみに依存しているからです。

 

多くの現場では、仕事のやり方、流し方を決めています。

その仕事のやり方が文書化されているときもあれば、そうでないときもありますが、通常の生産活動の流れの作り方は明確になっているものです。

 

ただ、そこに突発案件の受注が届いたらどう対応するのか?

これをはっきりさせている中小現場は少ないです。

 

これは、起こりうるケースへの事前対応策ということで、一種のリスク管理となります。

そこで、経営者が、突発案件へ組織的に対応する仕事のやり方を決めるのです。

突発案件へ対応するときの仕事のやり方の方向性を現場に示します。

 

このやり方には、一律の答えがあるわけではありません。

火事場の馬鹿力をテーマにするわけです。

現場だけでなく、営業、外注先、場合によっても顧客も関係します。

 

関係者が多数あり、前提条件も複雑に絡み合っていることでしょう。

万能のやり方が存在するわけでもないのが、”突発案件”の突発案件たる所以です。

 

ただ、従来の属人的なやり方のままでは、いつまでたっても、多品種少量化で中小の独自性を発揮する機会は訪れません。

 

 

 

これまで、現場が力づくで対応してきた”実績”を振り返り、会社として、対応方針だけでもはっきりさせるのです。

営業とは突発案件受注のルールを決めることが考えられます。

例えば受けられる納期を定常時の50%以上にするとか。

さらに、外注先や顧客とも、”突発案件”に対する仕事の進め方を定期的に話し合うことで解決策も出ます。

 

そもそも、突発案件は、文字通り”突発”に届きます。

ですから、突発案件への対応方針を決めても、前提条件が違って、必ずしもそうはできないことも多いです。

 

しかし、対応方針が示されることで、現場担当者の心構えは変わります。

トップが突発案件への対応負荷に気が付いてくれて、会社の方針を示した、ということを感じるとやる気が出るものです。

 

”経営者の決めた対応方針”に基づいて自分で考えられます。

五里霧中で、悩みながら、突発案件へ対応する調整方法を決めていたときとは、置かれた状況が変わるのです。

現場担当者は、前向きの自律性を発揮できます。

 

 

 

まずは、経営者が突発案件への対応方法について、関心を向けることです。

そうして、現場をはじめ、営業、外注先、顧客を巻き込んだ対応方針を決めることです。

 

これにより突発案件というつかみどころのない事態へも”ゆるやか”にベクトルが揃います。

それだけでも、現場担当者のストレスは解消されます。

 

現場担当者の苦労の多くは、このベクトル合わせにあるからです。

これは本来、経営者の仕事です。

そして、この時点に至ってから、突発案件への抜本的な対応策を考えます。

 

多品種少量化の時代において、突発案件への対応力は、中小の強みを発揮する機会をふやしてくれるものです。

ここで、強みを発揮することも考えて下さい。

 

突破案件では、抜本対策の前に、まず、ゆるやかなベクトル合わせをして下さい。

 

突発案件対応で、”ゆるやか”にベクトルを揃える仕組みをつくりませんか?