「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第99話 現場を動かす生産管理

生産管理の機能に気が付いていますか?

 

「現場での日々ミーティングが継続し始めました。」

現在ご支援中の板金加工メーカで、今、まさにプロジェクトを引っ張っている現場リーダーの言葉です。

 

そこの経営者は将来へ向けて売り上げ規模を50%程度アップさせようと考えています。

しかしながら、今の仕事のやり方のままでは、仕事が回らなくなるとの懸念があり、その懸念解消のご依頼を受けてのご支援です。

 

工場長に相当する現場リーダーが30人規模の現場を引っ張っていますが、経営者はその現場リーダーの仕事の進め方に改善の余地があると考えています。

その現場リーダーには、もっと目線を上げて、工場全体の効率を高めることに知恵を絞って欲しいと考えているのです。

 

一生懸命にやってくれているのはわかるのだけれども、その現場リーダーが作業に従事している頻度の多さに物足りなさを感じています。

まずは、現場リーダーがいなくても現場作業が回る状況を作ってもらいたいというのが経営者の想いです。

そうして、その現場リーダーには、将来へ向けて、現場の生産性を高める仕事に専念してもらいたいと願っています。

 

一方、その現場リーダーに聞いてみると、現在、1日のうちの半分、現場作業に時間を費やしているようです。

現場作業の支援をそれだけやらないと現場は回りませんか?と尋ねると、現場リーダーからは次のような言葉が返ってきました。

「作業者が休んで、その穴埋めのために入らないといけませんが、現場へ任せる仕事をもっと増やせば、今、私がやっている現場作業を減らすことはできます。」

 

現場あがりのベテランであるその現場リーダーの技能はピカ一です。

本人としては、体を動かして作業に集中している方が、仕事の達成感を感じるようでした。

優れた技能を持ったベテランであるものの、経営者が望むところの”目線を上げた”仕事のイメージを描くことができず、現場全体を見渡しては、人員が足りないところに入って補助していたというのが正直なところのようです。

 

「社長の望む”目線を上げた仕事”を定義してみましょう。」

こうして具体的な取り組みに着手しました。

 

 

 

 

 

繰り返し申し上げていることですが、経営者が最も気にするのは、利益が出るのか、出ないのか、現場からお金が生み出されるのか、出ないのか、です。

現場では日々、製品という”モノを生み出し、”コト”を顧客へ届けています。

製品という”モノ”には実体感があるので、日々、現場に身を置いていると仕事をしている実感はわきやすいです。

 

しかし、それと収益確保は別の話となります。

現場全体を常時俯瞰し、鳥の目でモノの流れをチェックして、付加価値額の最大化を目指した全体最適化へ導く現場リーダー、工場長が欠かせません。

 

こうした人材が社長の右腕となって動いてくれることで、初めて経営者は”将来”の仕事に専念できるのです。

つまり、この中小製造企業の経営者が望む”目線を上げた”仕事とは、全体最適化の視点を持った仕事に他なりません。

 

したがって、その現場リーダーが全体最適化の業務に集中するには、各工程のキーパーソンに動いてもらうことがカギとなってきます。

自分で現場に入って作業をしていては、全体最適化どころではないからです。

部分最適化業務にとどまります。

 

現場リーダーが全体最適化の仕事に移行するためには、部分最適化の仕事を部下となる各工程のキーパーソンへ任せられるようにしなければならないのです。

現場リーダーと部下となる各工程のキーパーソンとの間で、社長と現場リーダーとの関係と同様の関係を築くことです、との話に、そのベテランの現場リーダーは腹落ちした表情をしてくれました。

 

その方が、現場リーダーとして影響力の大きい仕事ができるし、良い結果を現場全体へ波及させることができます。

そのベテランの現場リーダーが、まずやるべきことは、”自分に替わって”、各工程のキーパーソンにどんどん動いてもらうことなのです。

 

では、どんな道具を使って現場を動いてもらうのか?

それが生産管理の体系なのです。

生産管理には人を動かす機能があります。

 

 

 

 

 

生産管理3本柱を切り口に現場の見える化を進めます。

生産管理3本柱はQ:品質、C:コスト、D:納期です。

製造業はこれで商売しています。

 

そして、それぞれに、品質管理、原価管理、工程管理の体系がありますが、これでは網羅的すぎて中小現場向きではありません。

そこで、弊社では焦点を絞って現場のご支援をしています。

繰り返し申し上げていますが、品質原価の考え方、付加価値額の考え方、リードタイムの考え方、これらを柱に据えた生産管理です。

 

この生産管理の最大の役割が見える化であり、これが人を動かすことへつながります。

先のベテラン現場リーダーには、各工程のキーパーソンを動かすための切り口のヒントをいくつか伝えました。

 

その中のひとつに次の問いがあります。

・現場が気になっている数字は何ですか?

 

答えは一通りではないですが、少なくとも自分たちが日々汗をかいている仕事の達成度合いは気になっているはずです。

仕事量、生産量、進捗度合い・・・。

 

こうしたことは作業者なら誰でも気にすることです。

遅れているなら急がねばなりません。

計画通りに生産できているのなら、この調子を維持すればいいわけです。

 

生産管理の体系の中に生産統制がありますが、生産統制4項目のうちの進捗管理が作業者の気にしていることに答えられます。

日々の仕事の進捗度合いを見える化してアクションを起こすのが進捗管理です。

 

そして進捗管理には数量的進捗と過程的進捗の2つありますが、先の現場の仕事は数量的進捗でほとんど表現できました。

そこで、まずは仕事の進捗を数字で現場に示しましょう、ということで実績数値を把握することから始めたのです。

 

ここで、実績数字を把握するときに、現場が気にする2つの観点を忘れてはなりません。

それは、日々と累積です。

 

昨日の出来高はどうだったのだろうか?

今月は順調に仕事をこなしているのだろうか?

現場に動いてもらいたかったら、現場が抱くこうした疑問にまず答える必要があります。

 

 

 

 

 

ベテランの現場リーダーは、日々と累積実績を現場へ表示し始めました。

こうした数字の共有化で、何かが変わることを期待したのです。

 

すると、出来高の達成、未達成を気にする人が一人、二人と出てきました。

さらに、それまでなかなか現場で定着しなかった各工程での日々ミーティングが続くようになったのです。

 

それまでも何度か試みましたが、定着しませんでした。

そのベテラン現場リーダーから各工程のキーパーソンへ、直接に、業務上の伝達事項を話すれば用が足りていたからです。

 

ただ、それでは、現場の隅々にまで意思を浸透させることができません。

時間もかかります。

これからは、各工程で2分でも3分でも集まって、あえて顔を突き合わせる時間を持ってもらうことが必要です。

 

そこで、定着を狙っての、日々ミーティングの再開でした。

しかし、ながら、懸念もあったようです。

また頓挫するのではないか?

継続するのは、やっぱり難しいかも?

 

各工程のキーパーソンからは、毎日集まっても話をすることはない、話が続かないとの声が出ていました。

こうしたこうした状況下での再開です。

 

幸い、心配事は全くの杞憂に終わりました。

今は、全ての工程で、キーパーソンを中心にした日々ミーティングが無理なくやられており、現場リーダーから情報が伝達されやすくなっています。。

 

話すネタがないと言っていたキーパーソンの方々でしたが、現場に日々と累積実績が表示されると、それを話題に、作業者へ必要な指示を出すようになったと現場リーダーは説明してくれました。

そして、最初のコメントとなりました。

 

 

 

生産管理の目的は見える化です。

そうした中で、注目したいのが、生産管理には現場を動かす機能もあることです。

生産管理には現場を動かす機能があるのです。

 

知らせることで現場は動きます。

やる気を引き出す3つのポイントのひとつ、自律性を促すからです。

目標を掲げると頑張りたくなるのが現場であると確信しています。

 

現場が動きたくなる見える化の仕組みをいっしょに作りませんか?