「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第70話 生産データを現場から収集するときに配慮すべきこと

貴社では生産管理をベースにした現場の「見える化」に取り組んでいますか?

 

弊社では、生産管理を「見える化」の手段と位置付けています。

現場へ浸透させる詳細なやり方はセミナーなどでお話ししておりますが、仕組みを構築する中で、重要でありながら意外と忘れられていることがあります。

 

それは、生産データを収集するために現場が負わなければならない負荷への配慮です。

 

生産管理の仕組み化を考え始めると、いろいろな情報が欲しくなります。

生産数実績、工数実績、品質実績、そして生産性実績・・・。

 

こうした情報を迅速に入手できれば、工場経営の水準を高められるからです。

経営者だけではありません、現場も同様です。

現場も生産に関係したあらゆる情報を手にできれば、自律性が高まります。

情報をもとに、自己判断、自己決定ができるからです。

これは、現場のやる気を引き出すという点でも、重要な論点となります。

 

 

 

 

そして、生産に関係した情報を見える化するとき、絶対に必要なプロセスがあります。

それは、生産データの収集です。

 

製造した製品のカウント数、作業時間、不良品のカウント数・・・、こうした数値は黙って集まるものではありません。

対象となるモノ、人、作業に注目し、「計測、観察、記入、入力」等の作業を通じて初めて手にできます。

そして、経営者や現場が一目で理解できるよう、手にしたデータを加工する必要もあるのです。

 

さらに、考えたいのは、こうした「見える化」を、「死亡診断書」のように使うだけではもったいないということ。

月末に集計して、翌月の月初に、先月の実績は○○で当初計画よりを下回ったのは、この工程の生産性が○○だけ低下したからである、という分析結果を聞かされても、経営者や現場も、「あぁ、そうだったんだ。」となんとなく、先月のことを振り返るに留まります。

 

「死亡診断書」としてであっても、それまで、生産活動に関係した数値が全くない現場であるなら、数値として評価される仕組みが出来上がったことでは前進です。

しかし、「見える化」の本質は、その場で使えること、その場で使って、今、どうするべきかを現場が判断できることなので「死亡診断書」では不十分であると弊社では考えています。

 

遅くとも週末、つまり1週間単位での振り返り、そして可能な限り、翌日、つまり1日単位での振り返りが「見える化」の目標です。

数値を目にして、行動を変えることに使いたいからです。

数値を目にした現場は、自らの行動を振り返り、必要に応じた対応ができます。

 

昨日の実績が良かったのは〇〇だったから、悪かったのは△△だったから、というよう数値と行動を結び付けられるのです。

1ケ月後に実績の数値を見せられても、これはできません。

 

 

 

 

生産管理の見える化で、生産データを収集するとき、考えるべきことが3つあります。

1)対象となるモノ、人、作業に注目した「計測、観察、記入、入力」

2)収集されたデータの加工

3)加工されたデータの迅速なフィードバック

見える化には、これだけの工数がかかります。

コストがかかるということです。

 

生産管理の「見える化」で、生産データを収集するとき、まず、このことを考えて下さい。

特に1項目を現場の作業者へ任せるときは、現場の負荷を踏まえることが欠かせません。

情報を収集するという新たな業務を遂行するために、生産活動がおろそかになってしまってはなんのための「見える化」なのか・・・。

 

「作業標準」を作成しようと考え、業務の流れの記録をとるように現場へ指示したけれどもできなかった、とのご相談を受けることがあります。

これなどは、まさに1項目に関連した問題となっています。

 

生産活動を優先する現場の対応は間違っていません。

ですから、そうした経営者の指示に対応できない生産現場の実情を踏まえて、生産データを収集する工夫が必要だということです。

弊社では、現場の人員体制や目的に応じて、これら3つへの対応方法をご提案しています。

 

現場は、生産データ収集の意義を理解はしています。

が、生産データを収集し、記録・入力する作業はしたがりません。

こうした作業は、モノづくりのリズムをくずすからです。

 

現場の本音も斟酌する必要があるのが、この生産データ収集作業なのです。

ピンポイントで見える化を進める、雛形を現場へ提示して進め方の工夫を促す、等々やり方はたくさんあります。

現場作業を通じて、生産データを収集するのなら、現状の現場作業に無理なく組み込む視点が欠かせません。

 

いずれにしても、経営者が、生産管理の「見える化」で得られる成果を現場へしっかり伝えることが大切です。

ある意味で、この「見える化」がない限り、その後の改善活動はあり得ないですから。

 

貴社現場では、どのような生産データを収集すると、生産性向上へ生かせますか?

さらに、データを収集するとき、先の3項目へどう対応しますか?

 

まずは、こうしたことを考えるのです。

こうした検討が、後々、貴社の現場へIOTを導入しようとするときにも生きます。

 

現場の負荷を高めずに生産データを収集するしくみをつくりませんか?