「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第55話 現場は工程指標を通して、大きな目標を理解する

現場の目標として、売上T高、利益のみを提示していませんか?

 

5年先、10年先の見通しを示せば、現場のやる気が引き出されます。

これは、経営学の調査でも実証された事実です

伊藤も中小現場の管理者を担っていたとき、現場のベクトル合わせで経験をしました。

 

目指すべき状態を示せば、現場力を呼び起こせます。

今がどんなにつらい状況であっても、頑張れるのは、見通しがあるからです。

さらに、現場に提示されている目指すべき状態が、具体的であればあるほど、現場の共感が得られやすい状態になります。

 

 

 

 

 

中小の現場へ中途で入社し、管理者を任されたとき、考えたことがあります。

まず、やらねばならないことは、現場との信頼関係の構築だ、ということです。

 

現場にしてみれば、それまで、全く縁もゆかりもない人間が突然やってきて、自分の上司になるわけです。

一方的なやり方で、うまくいくわけがありません。

管理者の方から、意識をして現場と接しなければ、短時間のうちに信頼関係を築くことは難しいです。

 

そこで、意識的に、あることをやりました。

現場メンバーとの1対1の対話です。

1対多では伝わらないことも、1対1なら伝えることができました。

 

 

 

 

 

1対1の対話を通じて、多くのメンバーに、職場として目指したい状態へ共感してもらうことができました。

当然ですが、それでも、なかなか共感が得られなかったメンバーもいます。

 

しばしば2:8の法則などと言われますが、実際、10人に働きかければ1~2人、20人に働きかければ2~4人は、信頼関係を構築するのに苦労しました。

しかし、それでも、8割という大勢のメンバーは共感してくれます。

これで十分なのです。

 

会社の規模に関係なく、現場は一生懸命であることを体感してきました。

1対1で話をすれば、現場メンバーの多くは想いに共感してくれて、職場を良くしていこうという考えに賛同してくれるものです。

 

ここは、ベクトル合わせをする上での、中小の強みになります。

大手では、トップが現場と1対1で対話すること自体無理です。

一方、中小現場はトップと現場が近いという特徴があります。

中小のトップは、現場へ意思や想いを伝えやすいという、中小の強みを生かさない手はありません。

 

 

 

 

 

現場は、自分の職場を豊かにしたいと考えています。

人生をかけた職場ですから、当然のことです。

 

ですから、現場に見通しを提示することの大切さを強く感じています。

現場のやる気を引き出し、仕事のやりがいを感じてもらうためにも欠かせません。

 

そして、そうであるなら、ここで注目したいことがあります。

経営者が、現場へ提示する見通しや目標の表現の仕方です。

 

見通しや目標は、具体的であればある程、現場の心に響きます。

それが、トップから1対1で語りかけられれば、なおさらのことです。

「あなたにはこうしてほしい」と期待されたら、現場は頑張りたくなります。

貴社では、見通しや目標を、どの様な表現で、現場へ提示していますか?

 

 

 

 

 

先日、ある部品メーカーの経営幹部の方から、今後3年間の売上高と利益を現場へ提示していると伺いました。

売上高と利益という大きな目標が数字で示されています。

極めて具体的です。

現状対比で、どれだけ増やすのかもはっきりしています。

 

そこで、その方へ、1つだけ聞きました。

「その目標、売上高、利益に結び付く、現場の工程指標は設定していますか?」

現場の工程指標はあるけれでも、その工程指標と目標利益との紐づけは、はっきりしないとのことでした。

 

目標が具体性を持っていても、それに向けて、現場がどう動くべきかがはっきりしないと、現場は戸惑います。

先の中小現場の管理者時代、同じような場面に出会いました。

 

利益を増やそう、と働きかけたとき、現場から上がってきた声のひとつに以下があります。

「利益を増やす目標は理解できたが、結局、俺たちは、具体的に何をどうすればいい?」

 

大手に勤務していたとき、この手の質問はありませんでした。

大きな仕組みのなかで、現場は機能しています。

管理者から設定された指標を当然のように目指します。

しかし、部門の大きな目標と現場の工程指標の目標との関連を気にする現場ありません。

大手の現場ではこんな感じでした。

 

ところが、中小の現場では、素朴に、当然のことを質問してきたわけです。

中小の現場の方が、良い意味で”自分の職場”という意識が強くなる感じがしています。

自職場の収益が悪くなれば、会社全体の収益も悪くなるということを知っているからでしょう。

会社の規模が小さいということは、それだけ全体に及ぼす自職場の影響度が大きくなるということです。

 

ですから、売上高や利益のような大きな目標を設定したら、それに紐づく工程指標を示すことです。

売上高や利益を増やす仕組みを明確にする必要があります。

利益にむずびつく、工程指標を現場と共有するのです。

現場の納得感も高まります。

 

 

 

 

 

弊社では、全体最適の指標として、付加価値額の活用をお勧めしています。

これは、現場の工程指標と利益を紐づけることがやりやすくなるからです。

 

付加価値額を活用し、売上高や利益の目標を現場の工程指標と紐づけます。

大きな目標を現場の指標へ「翻訳」する必要があるのです。

 

工程指標が欠かせないので、現場に生産管理の仕組みが構築されていなければなりません。

まずは、「生産管理」であることにも留意してください。

 

見通しや目標を、下記の段階で提示することで具体性を高めます。

1)目標売上高、利益

2)そのために現状対比で増やしたい付加価値額

3)付加価値額の増加を実現させる現場の工程指標

こうして、現場が目指すべき状態が設定されるのです。

 

具体的な数値目標を知った現場は頑張ります。

トップが、現場へ期待をかけて掲げた具体的な現場の目標値です。

それを実現させれば、トップが掲げた会社が目指すべき状態へ至るのです。

 

そして、トップから、その目標を1対1で語りかけられ、期待されたらどうでしょう。

現場は頑張らないわけにはいきません。

特にやる気のある若手人財の自律性を促します。

自律性はチームオペレーションを機能させるために最も大切なものです。

 

付加価値を活用し、売上高や利益の目標を現場の工程指標と紐づける仕組みを作りませんか?