「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第4話 モノづくり現場を機能させるための事前準備とは?

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カイゼンや技術イノベーションに取り組むに当たり、現場を機能させるためのプラットフォームを事前に整備する、という話です。

カイゼンでは、現場と上司が連携して仕事を進めていますか?

あらゆる現場活動を始めるに当たり、現場を機能させるための事前準備ができていますか?

小集団活動、QCサークル、改善活動を展開しているモノづくり現場は多いです。

通年で活動し、年一回、全社で発表大会を開催し取り組みを締めくくります。そして発表大会では社長や会社幹部の評価による表彰が行われ受賞したグループには金一封が贈られる。そして、新たな年度を迎えて、再度テーマを選定し、活動を継続する・・・。

1980年代に今井正明氏によってアメリカで出版された「KAIZEN」が欧米の経営者に注目され、日本企業が世界を舞台に国際競争で勝ち抜いたノウハウとして紹介されて以来、現場の自主的な活動の重要性は世界標準になっています。

ですから、現場の活動を重視した工場経営の本家本元は、日本ということになります。しかしながら、国内中小のモノづくり現場で現場の自主的な活動が形骸化し、実は上手く機能していないケースも少なからずあると感じています。

板金組み立てを主業とする50名程度の工場の現場で加工工程のリーダー役を担っているS君から、次のような話を聞いたことがあります。

「地域のQCサークル発表大会に参加して、他社の発表を聞いてうらやましくなりました。他社のQCストーリーの中では、必ず現場上長や上司とのやり取りがあって、大きな問題を解決できている。ウチでは現場に任せっきりで、現場でしか動けないから、本当に解決したい大きな問題を解決できないんですよ。」

積極的なS君は会場で発表者とも名刺交換し、現場における取り組みの雰囲気を尋ね、自分たちの現場には無い、現場と上司が連携して仕事を進めている前向きの雰囲気を感じ取ったようでした。

自主性を重んじることと業務の丸投げは異なります。まずは、こうした状況になっていないか経営者は現場と管理者との関係をチェックする必要があります。モノづくり現場を機能させるための仕組みの有無を把握するためです。

もし、丸投げ状態に陥っている現場があれば、業務を進める仕組みの構築を指示する必要があります。

先のS君も自分たちの現場には仕組みがない、ルールがない、したがって上司との連携した仕事のやり方にも至らず、いつも思い付きの仕事のやり方になっているのを、他社の事例を知ることで感じたようでした。

モノづくりで儲ける事業形態を構築する意識を持っているならば、小集団活動、QCサークル、改善活動では、現場の自主性を確実に機能させたくなります。モノづくり現場で付加価値を拡大させるためには技術イノベーションは欠かせず、さらに、この技術イノベーションのためには現場の自主活動となるカイゼンが機能しなければなりません。

カイゼンは将来投資の原資を稼ぐためであり、またモノづくり力や人財力をブラシュアップするためでもあります。技術イノベーションは突然に沸いて出てくるのではなく、現場で積み上げたノウハウの延長線上で達成されます。

ですから、現場の自主性が機能する仕組みが不可欠です。生産活動の見える化であったり、現場に対するフォローと評価であったり、従業員からやる気を引き出すための仕組みであり、仕掛けです。

「仕掛け」とは経営者が意図を持って工夫した仕組みです。その意図とは現場から持続的なやる気を引き出すことです。持続的なやる気が原動力だからです。

金一封を渡せば、持続的なやる気が引き出されるのだろうか?と考えてみて下さい。現場の自主的なカイゼンが定着しない、上手くいかない、形骸化していると感じるならば、それは、カイゼンの取り組みではなく、現場の自主的な活動を促すべき仕組みの方に不備があるからです。

現場業務を機能させる仕組みが不備な状況で、いくら小集団活動、QCサークル、改善活動の手法を学んでも生きることはありません。現場と管理者や上司との連携で不備があるのに、技術イノベーションへ繋がる”熱い想いのこもった”カイゼンが展開されるとは到底考えられません。

カイゼンにしろ、技術イノベーションにしろ、こうした取り組みを始める前に必要なのは、見える化、フォローと評価などのやる気を引き出す仕組みづくりであり、仕掛けづくりです。

これらを抜きに経営者が焦ってカイゼンを進めようが、また、5年先、10年先の長期計画を立てようが、全て画餅に帰します。

モノづくり経営者は技術イノベーションを見据えています。技術イノベーションへどのように至るべきかを常に考えています。

①技術イノベーション ← ②現場の自主的なカイゼン ← ③持続的なやる気 ← ④仕組みや仕掛け

これが、儲かる工場経営の事業形態であり、特に重要なのは④です。儲かる工場経営の土台、足場、基盤です。つまり、仕組みや仕掛けとは儲かる工場経営を実現させる事業形態の「プラットフォーム」と言えます。

ビジネスを展開する場を提供する役割を担うプラットフォームビジネスと同様に、儲かる工場経営のために、現場が自主的に活躍する場を提供する役割を担っていると考えれば、その役割の重要性が理解できます。

当社のコンサルティングでは、この「プラットフォーム」の整備を重視します。「プラットフォーム」が整備されてこそ、現場の能力を最大限に引き出すことが可能であると考えるからです。

モノづくり現場を機能させる「持続的なやる気」がなければ、どれほどに経営者が頑張っても想いは実現しません。

ここで、「工場経営の本質は自分の想いを、他人を通じて実現することにある。」ということを思い出せば、現場からやる気を引き出す仕組みや仕掛け、つまり「プラットフォーム」の重要性にも思い至ります。

カイゼンや技術イノベーションのためには、現場の自主性を機能させなければなりません。そのためにやるべきことがあるのを忘れないで下さい。やるべきことをやらず、焦って、こうした活動に取り組んでも成果は出ません。

遠回りのようですが、確実に成果を上げるためにまずやることは、現場からやる気を引き出す「プラットフォーム」創りです。

 

まとめ:カイゼンや技術イノベーションに取り組むに当たっては、現場を機能させるためのプラットフォームを事前に整備する。