「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第135話 フォロワーシップと数字
想いを言い切って伝えていますか?
「新たな取り組みを現場へ発表したいのですが、どうでしょうか?」
現社長から数年のうちに事業を承継する予定の40代経営幹部からの質問です。「どんな質問があっても、言い切れるなら大丈夫です。」とお答えしました。
その経営幹部は数年先の事業承継へ向けて、準備を進めたいと考えました。そこで、今後、3年、5年、10年の時間軸で目標を設定し、現場へ想いを伝えようとしたのです。
次世代経営者の想いを現場へ伝えることは、人づくりの観点から、極めて重要な役割を果たしてくれます。
事業承継には、いろいろな課題があります。なかでも重視すべきは、次世代経営者の支援チームづくりです。人は仕組みに勝ります。
どんなに素晴らしい仕組みをつくっても、それを廻す人がいなければ、せっかくの仕組みも絵に描いた餅です。
つくった仕組みは、いわゆる”床の間”に飾られた経営計画となり、全く機能しません。仕組みは人が運用するものなのです。
逆に仕組みがなくても、経営者の右腕役や支援チームが現場で張り切っているのなら、何とかなります。力業、力づくで仕事をやり切る組織力、チームワークがあるからです。
ですから、そうした現場に、新たな仕組みを導入すると、素晴らしく機能します。
弊社のコンサルティングファイル「生産性ロードマップ戦略プログラム」では「製販一体で儲かる価格を設定する仕組み」と「付加価値額を効率よく積み上げる仕組み」を作りますが、このプログラムも同様です。
組織力、チームワークがあるところに弊社プログラムを導入すると、現場が主体的に営業部隊と関わろうとすることがきっかけとなってプラスのスパイラルが生まれます。
本来、こうした現場へ導入したいのですが、必ずしも、ご指導先がいつもそうであるとは限りません。そこで、工程間連携の弱い、つまり組織力に課題がある現場であっても、プログラムを通じて、組織力を高め、チームワークを機能させるように考えています。
先の現場では、次世代経営者の事業承継に向けて、仕組みづくりとともに、現場のより一層の組織力UPも課題と考えられました。
次世代経営者を支援する体制として、時代の変化に対応した新たな仕組みは当然に必要なことですが、それと同じくらい、次世代経営者の支援チームづくりは重要です。人が仕組みを運用します。
ですから、次世大経営者を担うことになるその経営幹部が想いを表明するのはとても大切です。想いを知れば、共感が醸成され、そうした場に、次世代経営者の支援チームが徐々にできあがっていきます。
人づくりには、当然のことですが、経営者の熱い想いの表明が欠かせません。熱い想い触れるからこそ人は動きます。「パワー」です。言葉に込められた熱意や魂のようなもの。その言葉を耳にした作業者をワクワクさせる力です。
そこでは、言い切って、断言すること以外、ありません。自分は●●したいと思っています、ではだめです。自分は●●したい!!!なぜなら・・・・・、と訴えることです。
自信なさげな状況を垣間見てしまうと現場は不安になってしまいます。せっかく、良かれと考え、自らの言葉で現場へ語ったのが、かえって負の影響を及ぼすのです。
不確定要素があろうがなかろうが、今は言い切ることが重要ですとお伝えした次第です。現場は自分の会社の将来に安心したがっています。
経営者が発揮すべき現場を引っ張る力は、しばしば、「リーダーシップ」と表現されます。「リーダーシップ」の重要性は論を俟ちません。
ただ、今後、少数精鋭で筋肉質の現場を目指すなら、リーダーシップに加えて、相乗効果を得るにも欠かせない力があります。
フォロワーシップです。「現場が主体性を持ってリーダーを支援すること」と「自主的に組織へ貢献すること」を意味します。
現場のひとりひとりが主役です。作業者ひとりひとりが、組織で成果を出すために、上司やチームに働きかけます。
こうした場で求められるのは、組織の活気であり、やる気です。共通の目標、貢献意欲、コミュニケーションといういわゆる組織の3要素で現場を活気づかせ、自律性、有能性、大きな目的を感じさせてやる気を引き出すことが欠かせません。
活気があり、やる気に満ちたばでこそ、フォロワーシップが機能します。少なくともヤラサレ感たっぷりの現場では絶対に機能しないのがフォロワーシップです。
モノづくりが複雑化、高度化している昨今、経営者のリーダーシップのみでは、事業の変化やスピードに追いつきません。
現場のひとりひとりが経営者の顔を思い浮かべながら、ここは頑張らねばとか、ここは絶対に過ちを起こしてはダメだ、という思考と自律性が求められます。
指示待ちの現場では、激しい競争を勝ち抜けないのは火を見るよりも明らかです。リーダーシップとフォローワーシップの相乗効果によって、中小現場の強み、柔軟性、小回り性、機動性が強化されます。
しばしば、申し上げていますが、工場経営の本質は”他人を通じて”経営者の想いを実現させることにあります。これは、まさにフォローワーシップを指すのです。
ですから、次世代経営者を担う、その経営幹部には、想いを言い切れる程に確信、覚悟を持っていただきたいと考えています。
確信、覚悟にあふれた言葉には力があります。言い切る表現以外、あり得ません。経営者のそうした強い想いにこそ、現場は共感します。将来への期待感を持ち、ある意味で安心感を覚え、現場にフォロワーシップが醸成されるのです。
経営者は意思決定の判断軸を持つに至り、そこで、経営者に求められることがあります。それは、工場経営を数字で語れるようになることです。
数字ほど説得力があるものはありません。数字で表現された客観的な判断軸がなければ、そもそも、経営者も確信、覚悟を持てないでしょう。
現場の自律性を促そうとするなら、生産活動の見える化が必要です。言い換えれば数値化です。モノづくりは工学であり、科学ですから、状況を数値で語ることで人を動かせます。
売上高に始まり、利益、現場の生産性やリードタイム、付加価値額生産性、固定費、損益分岐点やその比率・・・・。
多くの数値を使って、工場経営を語ります。数値を自由に操り、的確な説明ができれば、現場の納得感を引き出すことができるのです。それがやる気や自律性につながり、フォロワーシップとなります。
これからの経営者、特に次世代経営がやるべきは、数値を語って現場を動かすことです。カリスマ性もさることながら、フォロワーシップを引き出せる力ではないでしょうか?
そこで、大切な役割を果たしてくれるのが”数字”です。数値で工場経営を語ります。フォロワーシップの源は経営者の確信や覚悟であり、それは数字から生まれるのです。
弊社のプログラムは価格と付加価値額生産性を活用し、固定費に焦点を当てています。当然ですが、すべて数字です。先の次世代経営者を担う経営幹部には、プログラムを通じ、数字で工場経営を語っていただきたいと考えています。
現場は人の集まりです。個々の想いを持った集団です。想いはいろいろですが、豊かな生活をしたいという点ではベクトルがそろっています。経営者はこうした想いに応えるべく、ご自身の想いを言い切ってください。
数字に明るくなれば、確信、覚悟を持って、想いを言い切れるのです。現場は言い切る経営者の言葉を信じて、自ら動き始めます。想いを言い切れる経営者の現場にフォロワーシップが生まれてくるのです。
・成長する現場は経営者の覚悟に触れて自ら動き始める。
・今の仕事のやり方でいいと思い込んでいる現場は、指示されたことしたやらない。
工場経営を数字で語りフォロアーシップを醸成させる仕組みをつくりませんか?