「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第405話 従業員が助けてくださいと気軽に言える現場か?

「従業員同士が、互いのことを、気にしながら仕事をすることです。」

30人規模紙加工企業、製造担当幹部の言葉です。

 

その幹部は経営者の指示を受けて現場改革に取り組んでいます。

それまでは、納期にのみ焦点を当てた仕事のやり方でした。それはそれで素晴らしいことです。すったもんだしながらでもお客様の納期を守ってきました。

ただ、人時生産性向上の必要性を強く感じている経営者は危機感を持っています。

このままでは、事業を成長させられない。売上げが横ばいだ・・・。

 

そうした経営者の意志と意図を理解している幹部です。

まずは、指示導線の設計をやらなければと感じています。その幹部が、日程計画とその進捗確認、トラブル対応等々、現場の重要業務のほとんどをこなしているからです。チーム力が発揮できていません。チーム力を発揮できる体制に変えます。

 

そこで、現場改革の実務にあたり、その幹部へ次のような問いを投げかけました。

「現場が目指すチームの姿とはどんなものでしょう?」

しばらく考えた後、先の幹部が答えてくれました。冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営の原則のひとつに下記があります。

工場経営の本質は他人の力を借りて経営者の想いを実現することにある。

経営者が一人でできることは、たかが知れています。だから、わざわざ人を採用しているのです。そして採用した従業員(他人)をバラバラで仕事をさせても、「烏合の衆」に留まります。成果も限定的です。そこで、単なる人の集まりをチームに変えます。

 

先の企業では、作業者一人ひとりに、担当設備が割り当てられます。朝、その日の作業指示が出され、各自が指示された仕事量をこなしているのです。作業指示にしたがって、各自が仕事をさばこうとしています。

しかし、いつも順調ということはないのです。日によっては調子が悪くて仕事が進まない従業員もいるでしょう。設備トラブルで明らかに遅れが出ている従業員もでてきます。

遅れを認識したら、従業員は、幹部へSOSを発信して対応してもらうのが、この現場でのルールです。そして、このルールはしっかり守られています。

ここまでは問題ありません。

ただし、このやり方だけは、経営者が考えている事業の成長には貢献できなさそうです。幹部だけが納期遵守で忙しく走り回っています。

 

 

 

 

 

先の幹部が考えるチームで仕事をする姿は次のようなものです。

・従業員同士が互いを見合いながら仕事をする

・従業員どうしで助け合って、トラブルに対応する。

・周囲を見ながら、遅れがある仲間に手を差し伸べて挽回する。

・技能を持っている人は新人を指導して、成長の後押しをしてあげる。

今の現場は上記ができていません。今はそうなっていないので、そうしなければならないと考えています。何かが足りないのです。

 

ただし、これは、現場が悪いのではありません。経営者や幹部が、そうさせてこなかっただけです。幹部は、今、何かが足りないことに気付きました。これからそうするよう指導すればイイのです。

 

この現場では、「自分の遅れを認識したら、従業員は幹部へSOSを発信する。」がルールでした。そして、そのルールは守られていたのです。

これからは納期遵守に加えて、人時生産性向上を柱に成長路線を歩みます。現場をチームで仕事をする集団に変えるのです。

実務やPJを通じて、現場改革意識改革を推し進めます。その結果が構造改革です。事業を儲かる構造に変えます。

 

 

 

 

 

人に教えることが最大の学びになる。

しばしば言われることです。机上で、一人で学んでいても実践的ではありません。他人へそのことを教えてあげれば、いろいろなことに気付き、学びが促進されます。

人と人との相互作用の効果です。

 

人と関わることで、人は成長できます。自分が得意なことを他人へ提供する一方、不得意なことは助けてもらうのです。

・相互補完の姿勢が豊かな職場

・応受援性が高い職場

・「助けてください。」と気軽に言える職場

チーム力を高めるために、こうした言動を促す仕組みをつくります。経営者や幹部は従業員に相互補完の思考回路を埋め込むのです。

 

サッカーや野球など、スポーツ選手は、相互補完を普通にやっています。

バックアップです。内野ゴロを打たれたら、キャッチャーは一塁手のバックアップに入ります。ディフェンダーが攻め上がったら、空いたポジションを周りの選手が埋めます。

スポーツはチームで勝ちにいっているので、相互補完は、自然にやられていることです。チームで勝ちに行く意識を持っていれば、そうした行動になります。

事業も競争ですから、競合他社との戦へ勝ちに行っています。経営者一人では勝てません。だからチームで勝ちに行くのです。チームを機能させます。

できないことを、チームでできるようにすれば、従来対比での積み上げが実現できます。分母一定で分子を積み上げたいのです。

 

 

 

 

 

ドラッガーは「マネジメント 基本と原則」の中で組織の目的について語っています。

「組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある。天才に頼ることはできない。天才はまれである。あてにできない。凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する。」

 

凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定するということは、従業員同士の相互作用があるかどうかということです。

・相互補完の姿勢が豊かな職場

・応受援性が高い職場

・「助けてください。」と気軽に言える職場

ドラッガーは、クオリィティーの高い職場は上記のような職場であると語っています。

 

今、現時点、スキルが低いこと自体、問題ではありません。人と人との相互作用を通じて、その人は、これから、その人のペースで、スキルを高めればイイのです。

そうした環境がなく、スキルを高められない従業員が放置されていること、これが問題なのです。

脱落者を出すことなく、今いるメンバーを一人残らずPJに参画させて、従業員全員で一緒に成長路線を歩ませます。相互補完の姿勢、応受援性がそれを後押ししてくれます。

中小製造現場は少数精鋭です。

 

 

 

 

 

多くの中小製造企業では、若手従業員の採用に苦労しています。

応募者がありません。大手や知名度の高い企業へ流れていくのです。現時点で直面するこの事態は、どうしようもありません。

そして、もし、今、貴社が、そうした状況にあるなら、将来へ向けて、今から、手を打たなければなりません。若い人たちに選ばれる魅力を持った企業に変わるしかないのです。

将来の我が社を支えてくれる若い人たちを受け入れる体制を整えます。

 

・相互補完の姿勢が豊かな職場

・応受援性が高い職場

・「助けてください。」と気軽に言える職場

仲間のために働ける職場です。人は、仲間の役に立っていると実感したときやりがいを感じると言われています。こうした職場なら、若い人も安心して仕事を続けられるはずです。

我が社のにじみ出る魅力が、口伝えで地元に広がっていきます。若い人たちに選ばれようになれば、採用に困りません。地元に根差して事業を展開している中小製造企業の戦略です。

 

相互補完姿勢の豊かな職場、応受援性の高い職場をつくることは、仲間の役に立っていると実感できる職場をつくることであり、将来の我が社を支える若い人たちを受け入れる体制をつくことに他ならないのです。時間を味方につけて取り組みます。

時間を味方につけると将来投資同義です。経営者にしかできない仕事です。ご支援先の経営者もそれに挑戦しています。思い立ったが吉日です。意欲的な経営者は行動が早いです。

 

 

 

 

 

「チームで仕事をする仕組みをつくります。」とは先の幹部の言葉。

仕事の遅れを認識したら、幹部へSOSを発信するルールがありますが、当面、これは継続します。が、今後は、従業員の連携で仕事をっできるように導きます。

 

ただし、「チームで仕事をやるように」と指示しても、できるものではありません。言われて、その言動を直ぐに変えられる類のものではないです。仕組みを通じて気が付かせます。

「成果に焦点を当てる、あの仕組みづくりですね。」

先の幹部が進めるその仕組みづくりの要点は、儲かる工場経営の勘所を押さえることです。先の幹部はそのことを分かっています。

次は貴社が挑戦する番です!

 

成長する現場は、助けてくださいと気軽に言える相互補完による人の相互作用で成長する

衰退する現場は、作業者が自分ひとりでやろうと考えるため若い人は辛くなり成長できない