「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第448話 市場から届く声に耳を傾けているか?

「売上の減少傾向が止まりません。」
切削加工をコア技術として事業を展開している経営者の言葉です。
その経営者とは、月一で収益状況を確認しています。売上や付加価値額、人時生産性などの変化を捉えるのです。
支援を始めてから複数年が経過していることもあり、収益状況から、支援先事業の「体調」が見えてきます。
昨年の初めから収益が伸び悩む感じがありました。そして、昨年の10月以降、売上の減少傾向が数値でも明らかになっています。
直近の3年間で、このような状況に直面したことはありません。経営者は、何か手を打たなければならないと考えています。
●市場が我が社に向けて発してくれているメッセージ
経営者は実績と目標を比べて、状況を確認します。実績が目標から大きく乖離していたら何かがおかしいのです。収益は、数値そのものが大事です。その多寡が問われます。
ただ、経営者の仕事は、足元の状況確認だけではありません。経営者の視線は将来にも向いています。将来を見通す経営者は、収益の「変化」も知りたくなるはずです。
・増えつつある
・横ばい
・減りつつある
「変化」は、市場が我が社に向けて発してくれているメッセージでもあります。
繰り返し申し上げていますが、経営者の仕事場は外にあります。市場と向き合うのが経営者の仕事です。
市場には、お客様や競合先、業界があります。経営者はそこで得られた情報に基づいて、意思決定をします。経営判断の多くは、市場からの情報に基づくのです。
中小製造企業の柔軟性、機動性、小回り性という強みは、経営者の迅速な意志決定から生まれます。経営者は市場と向き合い、市場が我が社に向けて発してくれているメッセージを受け取り、儲かる工場経営の土台を創るのです。
●「儲かる事業モデル」をつくることが経営者の仕事
経営者の仕事は、儲かる事業モデルを創ることです。これが儲かる工場経営の土台となります。したがって、儲かるか、儲からないかは、全て「儲かる事業モデル」次第と言えます。
「現場の働きが悪くて儲からない」と言っているようでは・・・・・儲からない原因が現場にあると考える時点で、経営者の思考回路ではありません。全ては、経営者が考えた「儲かる事業モデル」に問題があるということです。
「お客様に選ばれる製品」と「効率よく造る現場」が儲かる事業モデルのキーワードになります。貴社の事業モデルでは、この2つが両輪のように機能していますか?
そして、この2つのキーワードは密接につながっているのです。「効率よく造る」には、明確な目的があります。「お客様に選ばれた製品」を効率よく造ることです。
ここに現場改革の論点があります。変える判断基準は「お客様の要望」です。お客様の要望に応えられない現場は儲けを積み上げられません。
現場も経営者と一緒に、お客様の要望に応えられるよう、変わる努力をします。こうした現場には、「できないからやらない」という思考はありません。
お客様の要望に応えるために現場を改革するという言動しかないのです。できないことをできるようにするのが製造現場の使命であることを理解しています。
経営者が「お客様の要望」を現場に伝えます。現場改革の機会はここから生まれるのです。現場改革のきっかけは、市場に身を置く経営者からもたらされます。
このように「お客様に選ばれる製品」と「効率よく造る現場」、2つのキーワードは密接につながっているのです。こうした「儲かる事業モデル」をつくるのは経営者の仕事です。
そして、現場を改革するには、現場をその気にさせなければなりません。そうしたチームづくりも儲かる事業モデルの一部です。
●直面している売上減少は一時的なものなのか?
お客様に選ばれる製品を開発し、それを効率よく造る仕組みが回っていれば、売上を成長させられます。持続的競争優位を保てるからです。
そして、この両輪構造こそが、「儲かる事業モデル」です。
売上が右肩上がりになっていれば、貴社の儲かる事業モデルは機能していると言えます。
先代から事業を引き継いで、一定水準の売上を維持できているなら、それは先代から引き継いだ事業モデルが上手くいっていたのです。先代と先代から引き継いだモデルに感謝です。
ただし、引き継いだモデルに、将来もずっとこのまま機能して欲しいと望んでも、それは無理というものです。時代は変わります。お客様も変わるのです。
我が社の売上が、右肩下がりになったら、その変化に注視しなければなりません。その「変化」は、市場が我が社に向けて発してくれているメッセージからです。
今の事業モデルの続けていても売上が伸びす、限界を感じる場合、市場が私達に、「その事業モデルを見直す機会がやってきたのだ」と教えてくれているのかもしれません。
・その変化は一時的で小さなものなのか?
・その変化は構造的で大きなものなのか?
変化に直面した時には、この判断が大事です。技術は進化しています。競合先も我が社に追いつこうと必死です。製造業の市場変化は多くの要因で起きています。
一時的な変化であるなら、現状の延長線上でやられる改善程度で対応できます。そうでなく、実は大きな構造変化が市場に起きているなら、慣れ親しんできた今の儲かる事業モデルの見直しが必要です。
売上高減少傾向が止まらない場合、市場は新たなモデルが必要であるとの警告を発してくれているのかもしれません。
●中小製造経営者の強みは迅速な意思決定にある
事業展開で何か不自由や障害を感じる場合、今の仕事のやり方をそのまま継続していても、不自由さや障害もそのままです。何も変わりません。
もし、幸いに、市場の変化が一時的なら、そのうち、もとに戻ります。しかし、そうでなく、構造変化が起きているなら我が社を変えなければなりません。事業モデルの見直しです。
そして、そこで発揮されるのが中小製造企業の強みです。柔軟性、機動性、小回り性。中小ならではの強みと言えます。その原動力は経営者による素早い意思決定です。
改革に着手する決断を先延ばしして、「いつか事業モデルの見直しに挑戦したい」と考えるだけでは・・・・・光陰矢の如し、時間ばかりが過ぎるのです。
タイムマネジメントにおいて、競合先に負けます。そして、やがて時間切れになってしまうのです。貴社はそれでもいいですか?
●市場からの警告に耳を傾けることができる経営者
・売上伸び悩みの状況を、単なる一時的な問題であると毎度軽く考える
・売上伸び悩みの状況を、事業モデルの見直しをやる機会かもしれないと常に考え続ける
どちらの思考回路を持った経営者が生き残るかは自明です。
経営者は、市場からのメッセージを正しく読み取らなければなりません。市場が「その製品では儲からないよ」とつぶやいているのなら、それが答えです。
売れるか、売れないかはお客様が決めます。売れないモノを売れるようにするエネルギーは全て、お客様に選ばれる新たな売れるモノを考えることに向けるのです。
市場の声が聞こえている経営者の思考回路はそうなっています。
事業モデルを考え続ける経営者は市場に向き合っています。市場に向き合っているので、市場からのメッセージを聞き取ることができます。市場の警告に耳を傾けることができる経営者です。儲かる事業モデルの是非判断は市場にしかできません。
貴社は、市場のメッセージを受けて、迅速な意思決定ができていますか?
先の企業は下請け型の事業モデルです。経営者は支援を開始して以降、下請け型であっても、儲かるモデルに変えることが課題であると認識しています。
そして、事業モデル構造改革の切り口はいろいろです。先の経営者は「業界の見極め」で作戦を練ってきました。
「いよいよ実践のときかもしれません。」とは経営者の言葉です。
先の経営者は、今、事業展開で不自由や障害を感じています。そのことを成長の機会と捉えました。市場からの警告に耳を傾けることができている経営者です。
社長業をしっかりやれている経営者の意志決定は速いです。右腕役に現場を任せています。
次は貴社が挑戦する番です!
成長する現場は、経営者の迅速な意思決定によって儲かる事業モデルを改革し続けている
衰退する現場は、外部変化があっても迅速な意思決定ができず今のまま仕事をつづける