「工場実装コンサルティング」—儲かる工場経営を目指して—第527話 なぜ、一品一様の現場ほど仕事の進め方を標準化すべきなのか?

●20人規模、装置メーカー企業社長の言葉

 

「一品一様のウチでも標準化ができるのでしょうか?」

先日、個別相談をいただいた20人規模、装置メーカー企業社長の言葉です。

 

この企業がつくる機械はオーダーメードの1点物であり、開発・設計から加工、組立、電気設計、PLC、試運転までを社内で一貫して担っています。

 

こうした特注品個別生産の現場では、経験のある人ほど仕事が集まりやすくなります。ベテランが判断し、調整し、最後は帳尻を合わせる。目の前の仕事はそれで回ります。

 

しかし、この企業には大きな経営課題がありました。現在の主要事業は環境変化によって頭打ちになり、この先は成長どころか減少も懸念されています。社長は次の柱となる新規事業を構想しています。

 

ところが、新しいことを考えようにも、そのための人も時間もありません。今いる人員で現行業務を回しながら、新しい仕事へ振り向ける余力を生み出さなければならないのです。

 

そこで社長が着目したのが、リードタイム短縮でした。そのカギとして考えたのが、業務の標準化と規格化です。ベテランに依存している仕事を他の従業員でも担えるようにする。作業の目標時間が見えるようになれば、仕事のバラツキも減らせます。

 

この考え方は正しいです。

標準化は、速い人をさらに速くするためだけのものではありません。人による作業時間の大きなバラツキを小さくし、現場全体の仕事の進め方を底上げすることに意味があります。誰が担当しても一定の進め方ができれば、工程と工程の連携も取りやすくなるのです。

 

ただし、ここで社長が迷う論点が出てきます。

 

同じ製品を繰り返しつくる工場なら、製品仕様を基準に標準化しやすいです。一方で、一品一様の特注品は毎回仕様が違います。「毎回違うのだから、標準化できない」と考えたくなるのも自然です。

 

では、論点はどこにあるのか?

 

一品一様、特注品個別生産の現場では、「製品が毎回違う」という前提の中で、いったい何を標準化し、何を規格化すればいいのでしょうか?

 

 

 

 

 

●特注品では、製品ではなく仕事の進め方を標準化する

 

一品一様の特注品個別生産で標準化を進めるとき、最初に変えたいのが「製品」を基準に考える視点です。

規格品なら、同じ仕様の製品を繰り返しつくるため、作業手順や条件をそろえやすいです。

しかし、特注品はお客様ごとに仕様が違います。製品そのものをそろえようとすれば、「ウチでは標準化できない」という結論になりがちです。

 

ここで視点を変えます。

 

標準化する対象を、製品から仕事の進め方へ移します。つまり、プロセスを標準化するのです。毎回つくるものが違っても、仕事を進める過程には共通する部分があります。そこを見つけて標準化、規格化、型化していきます。

 

では、プロセスのどこに標準化を当てはめるのか。ここで、大きく三つに分けて考えます。

 

一つ目は、仕様判断・設計。担当者による判断の違いを小さくし、設計にかかる時間を抑えることを狙います。

 

二つ目は、工程。作業抜け、待ち、手戻りを減らし、各工程のリードタイムを短縮します。

 

三つ目は、工程と工程の間、部門と部門の間、つまり受け渡し。前工程が終わっているのに次工程が動けない。必要な情報がそろっておらず確認待ちになる。こうした部門間、工程間の停止時間を減らします。

 

 

 

次に、それぞれの仕事を大きくAとBの二つに分類します。

 

Aは、流用できる、同じやり方でできる、誰でもできる仕事です。ここは標準化、規格化の対象になります。

 

Bは、毎回個別対応が必要に見える仕事です。ここを、いったんグレーゾーンとして扱います。ただし、最初から「個別だから仕方がない」と決めてはいけません。分解してみると、その中にも共通する判断や作業が含まれていることがあります。

 

 

 

さらに、この分類を三つの時間軸で見ます。

 

「つくる前」「つくっている途中」「つくった後」です。

 

中でも注目したいのが、「つくる前」の受け渡しです。

ここを標準化できれば、製造へ入る前に確認すべき項目が明らかになります。確認項目が明らかになれば、チェックシートにできます。デザインレビューも、その延長線上にあります。

 

つくってから不具合や抜けに気づくのでは遅いのです。つくる前に確認できれば、手戻りや待ちを未然に減らせます。製造業はつくる前が勝負です。

 

 

 

特注品の標準化は、「同じ製品をつくること」ではありません。

どこへ当てはめるのか。何を共通化できるのか。そして、いつ確認するのか。

この三つの観点を重ねて仕事を見ることで、一品一様の現場でも、標準化、規格化できる部分が見えてきます。ただし、実際の現場では、AとBをそう簡単に分けられるとは限りません。

 

 

 

 

 

●標準化の答えは、現場から引き出す

 

先に示した特注品個別生産の標準化は、考え方としてはシンプルです。

標準化を当てはめる場所を決め、仕事をAとBに分け、「つくる前」「つくっている途中」「つくった後」で見直す。

 

しかし、実際の現場では、そう簡単には分かれません。

 

特にBのグレーゾーンです。

「これは毎回違うから標準化できない」と見える仕事でも、仕事を細かく分け、現場の話を聞いていくと、その中に標準化できる判断や作業が見つかることがあります。逆に、机上では標準化できそうに見えても、現物を見ると難しいこともあります。

 

だからこそ、ここは3現主義です。現場へ行き、現物を見て、現実を確かめる。右腕役と現場キーパーソンが作業者から仕事のやり方や判断の根拠を引き出し、何を共通化できるのかを考えます。

 

場合によっては、仕事を標準化するだけでは足りません。

つくりやすい形状へ変える。作業しやすい手順へ変える。受け渡しの方法そのものを変える。そこまで踏み込んで初めて、リードタイム短縮につながる標準化になります。

 

 

 

社長が示すべきなのは、「標準化を進めろ」という号令ではなく、標準化を進めるための判断基準です。どこを標準化の対象にするのか。何を基準にAとBを分けるのか。そして、成果を何で確かめるのか。

 

そして成果は、リードタイムがどれだけ短くなったかで確かめます。標準化したのに時間が変わらなければ、やり方を見直す。フォローと評価を続けてこそ、標準化は現場の日常へ定着します。

 

一品一様だから標準化できない、と決めつける必要はありません。

現場から答えを引き出しながら、できるところから共通化する。その積み重ねが余力を生み、社長が次の事業を考える時間につながります。

 

社長の判断基準を、右腕役と現場キーパーソンが使える形にする。そして現場の日常業務へ定着させていく。それが工場実装です。

 

一品一様だから標準化できない、ではない。仕事の進め方で標準化すれば余力を生み出せる。