「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第64話 若手には生産3条件をしっかり教えたい

 

貴社には現場の問題を抽出するやり方がありますか?

 

2017年版の中小企業白書に、2012年と2014年の中小企業の会社数が、業種別に掲載されています。

製造業以外の、主だった業種を思い浮かべて下さい。

建設、

電気・ガス・水道、

情報・通信、

運輸、

卸売・小売、

金融・保険、

不動産・保険、

宿泊・飲食、

医療・福祉。

製造業以外の業種を9つ挙げました。

頭に浮かぶ業種は、これら9つで、ほとんど網羅されているのではないでしょうか?

 

 

 

そこで、製造業も加え、これら10業種の中小企業を対象に、2012年と2014年における会社数を比べます。

掲載されている統計を見ると、おおむね、どの業界も、2014年の会社数は、2012年のそれを上回っていることがわかります。

つまり、主な業種では、おおむね、今から5年前時点から3年前時点にかけて、会社数が増えているのです。

2020年東京オリンピックやその他の外部環境変化が背景にあると推測されます。

しばしば言われることですが、今、国内の経済は、主に東京オリンピックへ向けて動き出しているようです。

これからの3年間、ビジネスチャンスはどんどん増えていくとも言えます。

 

 

 

しかし、実は、先に挙げた業種の「全て」で、会社数が増えているわけではありません。

先に挙げた10業種のうちで、あるひとつの業種だけが減っていました。

それは、・・・・製造業です。

製造業だけが、減少していました。

中小製造企業数(個人事業者を除く)

2012年 273,525

2014年 268,552

(出典:2017年版中小企業白書)

27万社を下回りました。

こうした事実があることを、皆さんと共有しなければなりません。

 

 

 

どんな素晴らしい事業をしていても、それが継続できなければ、雇用も維持できませんし、地域への貢献もできません。

生き残りをかけ、モノづくりの足腰を鍛えるモノづくり戦略が、今こそ必要なのです。

まずは、現場の問題の抽出です。

あらゆる取り組みは、問題を、問題として認識することから始まります。

 

 

 

貴社には、現場の問題を抽出し、整理する方法がありますか?

現場で発生する問題は、複雑に入り組んでいます。

したがって、問題を無造作に、ランダムに列記しても、全てが抽出されるとは限りません。

因果関係も複雑です。

問題の抽出が不完全だと、問題の本質に至らない場合も考えられます。

問題の原因究明は、トヨタ生産方式で有名な「なぜを5回」がありますが、その前に、現場に存在する問題を、全て、的確に抽出することが先です。

全ては、問題を正しく認識するところから始まります。

 

 

 

そこで、問題を的確に抽出するのに、モノづくりの体系を活用します。

体系にそって、逐一、確認していくのです。

要するに、チェックシートです。

モノづくりの体系を活用して、全ての要因をもれなく確認します。

 

 

 

モノづくりの体系は、生産3条件で整理できます。

品質

コスト

納期

 

貴社で生み出される付加価値は、これら3つに分解できるのです。

そして、それぞれに、体系があります。

品質管理

原価管理

生産管理

これらの体系に沿って、チェック項目を設定できます。

貴社も、貴社の現場に沿った、チェック項目を設定できるのです。

 

 

 

弊社でも、独自のチェック項目を設定しています。

弊社では、生産管理を柱に据えます。

そこを中心に、品質原価に着目した品質管理のチェック項目を加えるというイメージです。

原価管理については、付加価値額に焦点を絞って、チェックします。

こうした考え方に、決まったものはありません。

貴社独自のチェック項目を設定すればいいのです。

弊社も、ご支援している企業様の状況を勘案して、チェック項目をアレンジしています。

改善活動にせよ、技術開発や製品開発にせよ、現状の問題点を的確に把握できていなければ、その後の取り組みが徒労に終わってしまうことに注意です。

問題抽出の技術は、取り組みの成否にかかわります。

 

 

 

現場の問題を抽出する切り口として、生産3条件を活用します。

これは、原則、受注生産でも見込生産でも同じです。

したがって、貴社でも、チェック項目を設定することができます。

しかし、これには、モノづくりの体系となる生産3条件の基礎知識が必要です。

知識なしには、体系を効果的に活用できません。

ですから、弊社は、現場の若手には生産3条件の基礎知識をしっかりと身に着けて欲しいと考えています。

現場で経験的に知ったことを、知識で強化するのです。

「考える」ためには、「知識」が必要です。

なるほど、知識よりも、経験がものを言う場合もあるでしょう。

しかし、昨今のモノ作りは、複雑化し、高度化しています。

これからは、IOTやAIなども現場へ導入されるような時代です。

生産3条件の基礎知識を理解していないと、入り組んだ、複雑な問題を、解決に導くことはできません。

これからの若手は経験のみでは解決できない場面に直面することが多くなることでしょう。

そもそも、過去の成功体験のみで乗り切れるほど、これからの商売は簡単ではありません。

ましてや、私たちは、進化している技術で戦うモノづくりで事業を展開しているのです。

 

 

 

知識を正しく使えば、的を射た分析が可能です。

現場の問題点をもれなく抽出し、的確な解決手段を考えるためにも、現場の若手にしっかりと生産3条件の基礎固めをしてもらいます。

これらは実学です。

机上の理論ではありません。

若手には、使える知識を学ぶ機会を、是非、作って下さい。

そして、若手に生産3条件を徹底的して教え込むのです。

そうしていけば、いずれ、経験に裏付けされた知識を持つ地頭の強い若手が、経営者の力強い右腕になってくれるでしょう。

さらに、現場の問題をもれなく抽出するのに使える、貴社独自のモノづくり体系(生産3要素)を経営者は手にします。

 

 

 

他の業種とは異なって、なぜ製造業だけ、会社数が減っているのでしょうか?

人手不足、後継者不足、需要減少、顧客要望変化、M&A・・・、いろいろなことが推測されます。

しかし、こうした外部環境の変化は、中小製造業にのみ、ふりかかってきているわけではありません。

他も業種も同様な外部環境に晒されています。

ですから、なぜ?なのです。

 

 

 

少なくとも、皆さんには、国内製造業の基盤として、生き残り、ますます豊かに成長してほしいのです。

生き残るための独自の技を磨きあげて下さい。

現場で発生する問題を抽出するスキルは、真っ先に活用したい技のひとつです。

全ては、問題を認識するところから始まります。

そこで、若手には、OJT、OFF-JT、自己啓発を通じて、生産3条件を、しっかりと教育して下さい。

 

若手に、生産3条件をしっかりと教える仕組みをつくりませんか?