「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第91話 「大きな目的」を現場へ伝える

現場に”大きな目的、目標”を掲げていますか?

 

弊社のご支援は、現場の診断から開始します。

生産管理3本柱を切り口に、儲かる工場経営の仕組みづくりを進めるにあたって、その現場特有の「型」を知る必要があるからです。

 

モノづくりの現場は注文住宅のようなものです。

戸建て住宅はどれも外観上、似ています。

壁があり、屋根があって、玄関がある・・・・いわゆる”住居”であり、見た目は同じです。

しかしながら、細部では各家庭のこだわりが反映されおり、どれひとつとっても同じ住宅はありません。

 

 

 

モノづくりの現場も同じです。

製造業という範疇は同じで、工場の外観は似ているかもしれませんが、現場の様式はいろいろとあります。

受注のタイミングの違いや、設備レイアウトの違いなど、いくつかの観点から、現場特有の「型」を探るのです。

 

問題を解決する論点が異なってきます。

ここを見誤ると、虫歯が痛むのにもかかわらず、頭痛薬を処方することになりかねません。

 

生産管理や改善活動は工学であり、科学ですから、3現主義に徹し、現場のヒヤリングなどを通じて、的を外さないように仕組みづくりを進めます。

仕事の流し方に焦点を当てるべきか、生産計画に焦点を当てるべきか、あるいは・・・。

 

これらは、モノづくりそのものに焦点を当てた活動です。

形となって見える取り組みでもあります。

成果物を獲得するための、ご支援の”本丸”です。

 

ただし、この”本丸”に乗り込む前にならなければならないことがあります。

形となって見える取り組みの前にやるべきことがあるのは、弊社が経営者へ繰り返し申し上げていることです。

 

 

 

 

 

さて、工場経営の本質は経営者の想いを現場を通じて実現させることです。

ですから、経営者の最大の仕事・・・・・、それは現場に働きかけ、現場を動かすこと。

現場からやる気を引き出さなければ、そもそも、儲かる工場経営の仕組みづくりは始まりません。

 

ここで、2つの職場を想定します。

職場A:儲かる工場経営の仕組みが未整備でありながらも、リーダーシップを発揮する人材ややる気満々の若手がいる。

職場B:見える化をはじめ、フォローと評価など必要な仕組みが整備されてはいるものの、リーダーシップを発揮する人材や意欲的な若手がいない。

 

新たな問題が発生したとき、どちらの職場が解決に至りやすいでしょうか?

 

仕組みはあくまで、人材が回すものです。

人を得なければ、どんなに素晴らしい仕組みであっても、その価値が発揮されることはありません。

 

したがって、職場Bでは、ゴールにたどりつくことはできないでしょう。

ベクトルを揃えられないので、集団としての行動を喚起することができません。

 

一方、職場Aでは”人財”がいます。

使命感に燃えた人材が現場を引っ張り、経営者の想いを実現させるべく目的に向かって進むことでしょう。

 

適切な仕組みがないので、右往左往、暗中模索、五里霧中となって、遠回りするかもしれません。

しかし、こうした手探り状況を打破するほどの”情熱”が現場にはあるのです。

時間はかかりますが、見事に問題解決にまで至ります。

現場にはたらきかけ、やる気を引き出せば、こうしたことが可能です。

 

 

 

人材は仕組みに勝ります。

大手から中小の現場へ転職したとき、管理者としての成果を求められ、無我夢中で仕事をしながら気が付いたことです。

 

複数経験した中小の現場では多くのメンバー、特に若手に助けられました。

仕組みが未整備の現場がほとんどでしたが、現場を変えよう!いい仕事がしたい!という意欲に満ちた若手がどこの現場にも、居たのです。

こうした若手がいてこそ、新たに作られた仕組みが、その機能を十分に発揮します。

 

仕組みづくりを始めるにあたって、現場のやる気を引き出す仕掛けづくりを重視するのはこうした経験に基づきます。

ご支援では、プロジェクトチームで一体感を醸成するところから始めます。

現場ベクトル合わせのきっかけづくりです。

 

 

 

 

 

カギは、繰り返し申し上げている、やる気を引き出す3つのポイント。

①自律性②有能性③大きな目的

これらを踏まえて現場へ働き掛けるのです。

 

さて、優先すべきは③となります。

まず、これです。

弊社では大きな目的を重視しています。

 

3つ目の大きな目的とは経営者の(実現させたい)想いに他なりません。

弊社では、ご支援を開始するにあたって、経営者にお願いしているのは、5年先、10年先の見通しの言語化です。

 

5年後、現場をどうしたいか?10年後、事業をどのように成長させたいか?

現場と共有すべき”夢”を言語化します。

 

これがなければ現場は動きませんし、”変わる”こともありません。

現場を変えるにはエネルギーが必要であり、現場自身がそうしたいと考えない限り、そうはなりません。

やる気を引き出さないと、お話にならないわけです。

 

 

 

生産性向上を目指して、”新たな仕事のやり方”を現場へ定着させるには、現場を変えなければなりません。

意識改革、現場改革、構造改革の実践です。

 

経営者が示す5年先、10年先の見通しが、現場の意識を変える”上陸作戦”の足場、橋頭保となります。

 

組織には過去の成功体験に従う傾向があり、変化の必要性を認識しても、なかなか行動できないものです。

それが”組織文化の逆機能”と言われている組織の保守化と固定化です。

 

現場の意識を変える”上陸作戦”には、この”組織文化の逆機能”の勢力に押し返されないよう踏ん張るための、確固たる足場が欠かせません。

橋頭保が必要であり、経営者が示す5年先、10年先の見通しがその役割を担います。

 

そして、これが、やる気を引き出すための”大きな目的”として機能するのです。

現場の意識を変える”上陸作戦”を成功させるには、”大きな目的”が絶対に必要です。

 

 

 

 

 

新たな仕事のやり方を定着させたいと考えた中小製造現場での話です。

現在、ご支援をしているクライアント先のひとつです。

 

工程間の連携に乏しく、各工程の作業者は、自分の工程だけをやっていればいいという部分最適の考え方に囚われていました。

そこで、経営者は工程間の連携を促し、工場全体として生産性を高める、全体最適化を目指した新たな仕事のやり方を定着させたいと考えたのです。

 

まず、最初にやったのは、経営者に5年先、10年先の見通し、つまり実現させたい想いを言語化してもらうことでした。

新規顧客開拓、海外進出、工場設備投資・・・こうした計画に加え、目指す売上高や利益、従業員のスキルアップなど・・・・。

 

社長の頭の中には、イメージとしての経営計画、事業計画があるものです。

それを見える化します。

 

そして、5年先、10年先のこうした見通しを現場のひとりひとりに語り伝えました。

すると何が起きたか?

 

数名の若手が前向きにコメントを発するようになり、行動が積極的になったのです。

「そうなんですか!」「それなら頑張らなければ。」こうした言葉を発しながら、経営者が示した見通しに耳を傾けていました。

 

まだまだ、現場全体がそうした行動で一致したわけではないのですが、若手の変化はいい意味で現場全体に波及します。

少しづつですがベクトルが揃い始めました。

そして、さっそく、現状把握のための工程分析に着手することになりました。

 

今や現場が一体となって仕事に取り組む必然性があります。

経営者の想いは現場の夢でもあるのです。

 

やる気が引き出されないはずがありません。

こうして、現場が組織として果たすべき機能を発揮し始めるのです。

 

 

 

そもそも、人を採用し、組織を形成して、経営者が”現場”を持つのは、なぜでしょうか?

それは、個人では達成できないことを、協働を通じて達成するためです。

 

集団の行動が伴わない現場では意味がないのです。

必然的に、共有すべき”大きな目的”が必要となることに気づきます。

 

やる気を引き出す3つのポイントの一つである”大きな目的”は、現場が、そもそも組織としての役割を果たすためにも欠かせないものなのです。

これのない現場は、組織としての機能を果たせず、烏合の衆、有象無象、なんとももったいない集団に留まります。

弊社が”大きな目的”を重要視する所以です。

 

現場へ”大きな目的”を定期的に伝える仕組みを作りませんか?