「10年ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第7話 間接費を費用ではなく投資の視点で生かして使う

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製造間接費は業務ノウハウを、個人ではなく、組織的に蓄積するための投資であると考える。そして新たな付加価値創出する余力を生み出す、という話です。

製造間接費を投資として考え、付加価値を生み出す原動力としているでしょうか?

生産活動を効率よく「お金」に変換することを意識し、製造間接費を生かしていますか?

少ない経営資源で頑張っている経営者の皆様へ、費用ではなく投資の視点を持っていただくことをお伝えします。

 

製造業の費用の中で規模が大き代表項目といえば材料費と労務/人件費の2つです。そして後者はさらに直接費と間接費に分類できます。そのうちの後者、間接労務費に注目します。

「間接費は可能なかぎり抑えたいので余分な間接部門は設置しない。」

このようなメッセージを全社に向けて発した中小製造企業の経営者の方がいました。そこは従業員130人程度、売上高30億円規模の金属加工メーカーです。

モノづくりに専念し、モノづくりに直接かかわらない費用は極力かけずに限られた間接員でやりきる。少ない経営資源を最大限に生かし、費用を最小化して利益を確保するという考え方です。これはひとつの知見であり、短期的には成果の出る方針のひとつではあります。

ただし、工場全体最適化の視点で見た時、あるいは生産活動を効率よく「お金」に変換することが工場の役割であると考えた場合、問題はないでしょうか?

余分な間接部門は設置しないという考え方は、小さな本社機能という考え方にも通じるところがあってこれはこれで傾聴に値する方針ではありますが、それがために為すべきことが為されていないとすれば、その対応は近視眼的であり、本末転倒であると言わざるを得ません。

先に上げた金属加工メーカーには購買部門、資材部門がありませんでした。

その現場では概ね製品別の縦割り役割分担となっている設計部門と生産管理部門の間接員が、製品ごとに必要な部品や資材を、都度、”個別”に購入することになります。全社で同じ購入品が必要な場合であっても、別々の担当者が都度、業者へ購入依頼をする状況が発生します。

全社の間接部門として購買部門を設置し機能させれば、発注工数、購入費用の削減が可能になるはずです。

小さな本社機能論の前提条件は必要最小限の役割分担が為されていることです。間接部門はなんでもかんでも不要であると考えるのではかえってムダ生じることがあります。

創業したての企業であって、まだまだ規模が小さく成長期にあるならば業務の優先順位から間接部門の設置は時期尚早という考え方はあり得ます。会社全体が将来の成長に向けて明るい見通しを持っている段階であり、少々業務が煩雑で忙しくても先々体制を整備できるという希望が持てる。

その一方で、工場の規模も大きくなり従業員も100名を超え、自社製品も多様化する段階まで成長した現場において、従来通りのやり方をしていたらどうなるでしょうか。直接的な工数や購入費用のムダが発生することに加え、長期的にも致命的な問題があります。ここでは、この問題点を重視したいです。

それは、業務が属人的に為され、組織的にノウハウの蓄積ができない状態が続くことです。

材料の購入依頼、外注先への業務依頼やメーカーへの部品購入依頼など、こうした業務を都度個別にやらざるを得ない状況になると、各担当者は横の連携よりも、自分の業務が滞りなく進むことを優先して考えたくなります。

雑多な作業を落ち度なく進めることしか価値を感じることができなくなる。仕組みがないために自分が動かねば仕事が動かず、追われるように仕事に取り組くため、余裕を欠くからです。いきおい担当者は”個別に”自分の業務の効率化を図ることに熱心になります。

先に上げたメーカーの現場担当者に仕事上の工夫を聞いてみたところ、「多くの情報を管理するための一覧表を作っていますよ。」との返事が返ってきました。

その担当者に見せてもらいましたが、表計算ソフトである「エクセル」でマクロ機能も活用した随分と凝った表を制作して「個人的に」使っているようでした。

つまり一人一人がこうした取り組みをせざるを得なくなるわけです。そして、そうした状況が続くと、仕事は個人が工夫するものという組織文化が定着してしまう。

さらに、外注先への依頼も担当者が個別に行うため、外注先に依頼した時点で初めて、自社の他担当者の依頼とバッティングしていることに気が付くというなんとも恥ずかしい状況になったりします。挙句の果てには、外注先に自社業務間の調整をお願いしてしまう・・・・。

こうした状況は決して各担当者が怠けているとか、手を抜いているとか、そうしたことで生じるわけではなく、仕組み応じた仕事のやり方になっているということです。

間接部門を設置することで、外部へ依頼する業務、部品を購入する業務に関して効率的にすすめるノウハウが、組織や部門に積み上がりやすくなります。

そうしたノウハウは、担当者ではなく、部門に蓄積されて初めて、工場の情報的な経営資源となります。

つまり間接部門を設置することの意義のひとつには、設置部門に関連したノウハウを組織的に蓄積することが挙げられます。

ですから製造間接費はノウハウを組織に蓄積するための投資と考えてはどうでしょうか?

昔、勤務していた中小製造企業で、業務全般に渡って個人の力量に依存していた部門がありました。そこは、生産現場向けの構造物を受注生産する部門でした。

担当者が受注から、設計、製造指示、完成品を顧客現場へ設置するという一連の流れをすべて一人でこなす。小規模な事業を展開する企業で小回り性を優先するならば、あり得る業務形態です。

が、数億円規模の売上を上げる規模の企業体であるならば部門としてノウハウの共有や業務の効率化を図る必要もあったのでは?と今となっては思える部門でした。

個人に依存した業務形態では、業績も個人の仕事のやり方に左右されます。その部門では担当者が退職して、別の企業へ転職すると、それまで顧客もいっしょにその転職先へ移る。つまり、仕事上のノウハウが部門に全く蓄積されない状況で事業が運営されていました。

その部門は私が在職中に社長の判断により廃止されました。ノウハウの蓄積がなく、全社への成果の寄与が小さいということが廃止の理由にあったのではないかと推察されます。

モノづくり現場では組織力を生かすこと考えたいです。

工場では受注からスタートして、生産を実施し、販売、売上高を計上してお金を回収するまでの間で多種多様な業務が存在しています。このお金を回収するまでの一連の流れ全体を眺めたときに、この流れの効率化を図りたくなるはずです。

ムダを省いた流れを作って効率よく生産活動を「お金」に変換する。間接部門はこうした生産活動を効率よくマネタイズするためのノウハウを組織的に蓄積するのが役割です。

ですか、製造間接費、特に間接労務費はノウハウを組織的に蓄積するための投資と考えます。そして、効率化で生まれた余力は新たな付加価値を生み出す源泉にもなります。

さらに、投資的な発想に乏しい現場では仕事を時間で評価する傾向が強いです。一生懸命に長い時間働くのが頑張っている証であるという考えが優先されていては、現場から新たな付加価値が生み出されることはないことにも留意します。

間接費用を投資と考えて、業務のノウハウを部門や組織に蓄積させます。そうすることで新たな付加価値を生み出す土台が整備されるのです。先を見通して、儲かる工場経営を展開したいと思います。

自社工場で製造間接費を効果的に”投資”してみることを試みませんか?

工場オペレーションの効率は確実に高まります。

5年先、10年先の目指すべき状態を実現させる手段のひとつであり、ここでは業務を時間ではなく価値で判断することが求められます。

全ては経営者の想いを実現させるためです。

 

まとめ:製造間接費は業務ノウハウを、個人ではなく、組織的に蓄積するための投資であると考える。そして新たな付加価値を創出する余力を生み出す。