「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第8話 チームオペレーションを機能させるためには?
信頼感をベースにした連携によって、チームオペレーションを現場で機能させる。現場リーダーや各工程のキーパーソンが経営者に代わって工場を回してくれるので、経営者は将来投資を考える時間を捻出することができる、という話です。
現場には信頼関係に裏付けされた連携をする雰囲気がありますか?
現場リーダーや各工程のキーパーソンが主導するチームオペレーションが機能していますか?
今、経営者は将来投資を考える十分な時間を確保できていますか?
「今回は、ありがとう。いい仕事をやってくれてたおかげでお客さんが喜んでいたよ。また、何かあったら頼むよ。」
工場の現場で開発業務に携わっていた時に、当時の営業部長からかけられた言葉です。新入社員で工場配属となり開発業務に携わってから3年程経過し、社会人として仕事をすることにも慣れ、私も現場の技術スタッフとして周囲の協力を得ながら仕事を組み立てることができるようになってきた頃のことでした。
チームで仕事をすることの意義や面白さに気が付かせてくれた言葉です。声をかけてくれた営業部長も、頑張ってやっているように見えた若手の技術スタッフなので、まぁ励ましておこうかくらいの軽い気持ちで声をかけてくれたのかもしれません。
ただし声をかけられた私には、自分が関わった業務で直接的に喜んでくれる工場以外の人がいること自体に嬉しさを感じたとともに、営業と一緒になって、現場の協力をもらいチームで仕事を仕上げることの意義や面白さを強く感じる経験となりました。
それまで工場の技術屋として現場のカイゼン支援や固有技術開発に関わり、工場内で完結した業務を数人のスタッフメンバーと現場関係者で仕事をしていました。ですから、その業務が私にとっては、初めてお客様の顔が見える営業からの依頼業務となったわけです。
業務に関わる関係者の数も若干多かったこともあり、初めてチームを意識した仕事でした。さらに、チームでやり遂げた達成感を実感した初めての仕事でもあります。営業も含めたチームで仕事を回すことで、従来以上に複雑で、調整が必要な業務を滞りなくやりきることができました。
加えて、仕事の進捗を気にして毎週、現場へ足を運んでくれる営業関係者をがっかりさせたくないという気持ちが自然と湧き上がってきます。人は仕事を目の前にした時、その仕事をしっかりやり遂げたい、チームの役に立ちたい、他人に認められたい、という意識が自然と生まれるものではないでしょうか。
仕事をする環境次第ではありますが、多くの人は仕事を機械的にではなく、目的的にやりきろうと感じているはずです。
ですから仕事はチームで行うのが最も効率が上がると考えています。自然とチームのメンバーの役に立つような仕事をしたいという動機づけが生まれるからです。
さらに、モノづくり現場では営業と連携したチームを構成することで、ますますそのチームは機能します。イイ意味での刺激を受けるきっかけとなります。
モノづくり現場では信頼感に裏付けされたチームオペレーションを構築・機能させることが管理者に求められる重要な仕事である、と気づかせてくれたのが先の経験です。
モノづくりは多様な工程で構成される仕事ですから、ひとりで仕事をやりきることはあり得ません。現場であたりまえのように為されている活動の裏には、必ずチームオペレーションが存在しています。その意味では、工場の現場こそチームオペレーションを機能させるにふさわしい場所です。
中小モノづくり現場が抱えている経営資源上の問題を解決する手段のひとつは「工場経営の本質は自分の想いを、他人を通じて実現することにある」を実践することであり、”他人”に活躍してもらうことがポイントであると以前申し上げました。 ( ”他人”に活躍してもらい問題を解決する工場経営 )
経営者がやらねばならないのは5年先、10年先の将来を見据えることで、組織力を最大限に生かした工場経営を実践していただきたいと考えているからです。
そして、この”他人”に活躍してもらう、組織力を最大限に生かした工場経営の実践するために必要なのが「チームオペレーション」なのです。
ですから、モノづくり現場でチームオペレーションを機能させることの重要性をお伝えしています。人に依存した仕事のやり方ではなく、信頼関係に裏付けされた連携をベースに仕事を最適にやり遂げる力であり、仕組みであると考えています。
一方で、忙しい割には報われる感覚に乏しいの職場では、往々にして個人単位で仕事をやらねばならない状況にあるようです。こうした職場では、他人との”実質的”な連携が機能していません。
かって勤務していた中小製造企業でこんなことがありました。
営業から届く受注情報に基づいて、現場へ生産指示を発信している職場でのことです。その職場は責任者1名を含め3名で構成されており、各人の業務は手一杯で余力がない状態でした。
そこへ、新たな業務が加わることになりました。従来の業務のやり方では3名で新たな仕事をこなすことができません。そこで、他職場のAさんへその業務を回そうということになりました。
なぜ、Aさんにやってもらうことになったのか・・・・。
「Aさんは毎日、定時で仕事を終えて帰宅できているから。」
この説明を聞いた時、メンバーのひとりは、次のように感じたそうです。
「俺たちの仕事は、これからもずっと定時で上がれなく、ずっと残業続きなのか・・・。」
業務の効率を上げて定時内で仕事を終わらせる工夫をしても、ただ機械的にドンドン仕事が回ってくると思わせる職場で、他人との信頼関係をベースにした連携が生まれるでしょうか?
その職場でも、仕事はお互いに協力してやろう、問題が発生したら皆で考えようということは常々言われていました。しかし、その一方で、上からは、仕事の評価は時間でしか為されていないような発言がちらほら聞こえてくる・・・・。
仕事は”長時間”やっているのがイイ状態。効率上げて隙間時間ができたら、その担当者にはさらなる仕事が加わる。
「仕事の工夫のし甲斐がないよね」、というのがそのメンバーのコメントでした。
形だけの連携はありますが、残念ながら”信頼感”をベースにした連携は構築しがたい職場だった印象が拭えませんでした。
信頼関係の薄い職場で、チームオペレーションは機能しないことに留意する必要があります。
効率よく経営者の想いを実現させるために、”他人”に活躍してもらう職場を構築します。具体的には現場でチームオペレーションを機能させることです。そのためには相互に信頼感を持てる雰囲気を醸成することが欠かせません。
儲かる工場経営では経営者が5年後、10年後の目指すべき状態を設定し、そして”今”、手を打つことが絶対に必要です。
先を見通す仕事に時間を割くためには、”今”の仕事を”他人”である現場へ任せなければなりません。チームオペレーションを機能させることで可能になります。
現場にチームオペレーションを機能させたいです。真の信頼関係が生まれる雰囲気づくりを進めます。
また、先の事例にあげたような、営工一体となって仕事をやりとげ、全員でガッツポーズ!!という経験を現場へさせることも手段のひとつです。
仕事を時間で評価しない、という視点も重要であると考えます。
そのほか、チームオペレーションを機能させるための独自の工夫はあると思われます。
信頼感をベースにした連携によって、チームオペレーションを機能させます。現場リーダーや各工程のキーパーソンが経営者に代わって工場を回してくれます。経営者は将来投資を考える時間を捻出できます。
足元の収益を確保することが、優先順位で最上位でありますが、それに加えて、儲かる工場経営の要諦は、経営者がどれだけ未来を見据えることに時間が費やすかにもあるのではないでしょうか。長期的視野はモノづくり企業での豊かな成長に欠かせません。
チームオペレーションが機能する現場を目指します。
まとめ:信頼感をベースにした連携によって、チームオペレーションを現場で機能させる。現場リーダーや各工程のキーパーソンが経営者に代わって工場を回してくれるので、経営者は将来投資を考える時間を捻出することができる。