「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第155話 関心を寄せる

製造現場と営業部門は、相手の仕事を互いに理解していますか?

「他者の関心事に関心を寄せることが、敬意につながります。」

一体感を持って仕事ができる環境整備に腐心している経営者の言葉です。

 

事業を成長させるには、価格設定の体系が必要であると考え、現在、独自の仕組みづくりに取り組んでいます。

一体感を醸成するには、現場のひとりひとりに「安心感」を感じさせることも大切であると考えている経営者です。失敗は現場で共有しながら、相互に助け合うことで「安心感」が生まれるとも語っています。

 

世界最強の組織と言われる米国海兵隊の強固なチームワークの源は「信頼関係」にあると言われていますが、「安心感」はそれに通じるのではないでしょうか。信頼関係が欠落したチームで、命をかけた仕事はできません。

司令官は、部下を1人残らず母国へ連れて帰るぞ、との強烈な覚悟を示し、部下は、自分に向けられた期待に応えるべく、仲間のために渾身の力を振り絞って任務の遂行です。

極限状態の戦場で仕事をするとは、そういうことではないでしょうか。

 

程度の差こそあれ、多くの中小製造現場も生き残りを掛けた戦いをしています。そこでもチームワークが欠かせません。相互に助け合う雰囲気は、「安心感」から生まれるとその経営者は考えています。

そして、そうした雰囲気を醸成するのが、他人への「敬意」であり、それには、「他者の関心事に関心を寄せる」ことが大切だ、との考えをお持ちです。伊藤も中小現場の管理者時代を振り返り、大いに共感を覚えます。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営では、製販一体の現場活動を目指しています。儲かる工場経営の要諦は「顧客に選ばれる製品(商品)を効率良くつくること」です。

顧客に選ばれない製品(商品)を効率良くつくっても、全く儲かりません。また、顧客に選ばれる製品(商品)をムダ一杯のつくり方をしていては、儲けも限定的です。

 

顧客に言われたモノをつくっていれば、そこそこ儲かっていた時代は過ぎ去りましたから、「私、つくる人」「私、売る人」という発想では、事業の成長を望むべくもありません。

現場の2重構造に着目し、従来のヨコ連携は維持しつつも、顧客の問い合わせから納品までの一気通貫の流れを重視するタテ連携を強化するのが、これから成長、発展する中小製造現場が目指す方向です。

・ミクロ的には工程間連携

・マクロ的には製販一体

 

「顧客に選ばれる製品(商品)」に焦点を当てるなら、製造現場も、顧客要望に耳を傾け、どうしたら顧客が喜んでお金を支払ってくれるかに知恵を絞らないとなりません。

一方、営業部門も、製造現場で「できること」と「できないこと」や「効率良くつくれる製品(商品)」と「効率がイマイチの製品(商品)」を理解している必要があるのです。

 

「現場が・・・・・」「事務所が・・・・」と双方で不平・不満を言い合っていては、儲かるモノも儲かりません。司令官と隊員との信頼関係がない海兵隊にしたくありません。

工程間連携や製販一体で必要なのは、自分の役割のみならず、相手の役割も理解し、全体最適化の視点を共有することです。

・自工程のみならず、前後工程のことも知ること。

・現場は営業のこと、営業は現場のことを知ること。

 

全体最適化の視点に相互理解は欠かせません。他者の関心事に関心を寄せることです。

 

 

 

 

 

弊社は付加価値額人時生産性、いわゆる労働生産性を高める仕組みづくりに軸足を置いています。固定費を豊かに成長させたいからです。

そして、固定費を豊かに成長させる意義を共有できる経営者の方々とお仕事をさせていただいております。

固定費を削減の対象ではなく、投資、成長・発展の対象と考えたいのです。ですから、価格力と現場力の連動で将来投資型固定費戦略となります。

 

そこで、価格力と現場力を見える化して、経営者の方々と議論を深めるのです。価格力と現場力を見える化する手法は、各種ありますが、既存製品(商品)分析は、そのひとつです。

例えば、所要工数と付加価値額の相関図があります。

・横軸(X軸)に製品(商品)別、所要工数

・縦軸(Y軸)に製品(商品)別、付加価値額

 

この相関図で、各製品(商品)が目指すゾーンは、どこにあるでしょうか。

最小の労力で最大の成果を得るゾーンです。相関図の左上ゾーンであることは言うまでもないことです。

 

既存製品の相対的な位置を把握したら、その位置を基準にして、シフト方向を検討します。X軸方向のシフトを担うのは主に現場、Y軸方向のシフトを担うのは主に営業。

現場のベクトルと営業のベクトルを合成して表示されるベクトルが貴社の成果です。製品(商品)別の付加価値額人時生産性を加えて考察するとやるべきことが見えてきます。

 

 

 

 

 

先の経営者も、いくつかの製品(商品)に注目できました。

それぞれの製品プロットに矢印を書き入れて、こちらが営業部門のベクトル、こちらが製造現場のベクトル、と確認したのです。

 

営業部門も、たくさん売るなら、効率良くつくっているモノを売った方が、製造現場も無理なく、付加価値額を積み上げられます。

また、製造現場も、つくる効率を高めるのなら、積み上げ規模が大きいモノを選んだ方が、成果の波及効果も大きいです。

 

営業は現場のことを、また、現場は営業のことを知ることが、儲かる工場経営、つまり全体最適化に繋がります。他者(前後工程、他部門)の関心事に関心を寄せることです。

価格力と現場力を見える化させると、経営者の方々との議論を深められるだけでなく、現場と営業の相互理解を後押しします。見える=わかる、です。

 

履歴書も写真もなく、当日、目隠しされて、紹介された見合い相手と一緒になりたいと考える人はいません。

相手のことを理解できれば、工夫をしたくなります。そうでなくても、もともと、同じ釜の飯を食う仲間なのですから。関心を持たせる材料を提供するのは経営者の仕事です。

 

 

 

 

 

製造現場と営業部門が相互の役割を理解しあって、双方で敬意を持ち合えるようになったら、どんな製販一体チームができるでしょうか?

先の企業の将来が楽しみです。想像するだけでワクワクしてきます。

 

・成長する現場は、前後工程、他部門の関心事に関心を寄せる。

・停滞する現場は、自工程の関心事だけに関心を寄せる。

製品(商品)分析を通じて、製造現場と営業部門でやるべき事を明らかにしませんか?