「工場実装コンサルティング」—儲かる工場経営を目指して—第516話 右腕役に工場を任せるのに、なぜ「フォローと評価」が必要なのか?

●モニター越しに届いたプロジェクトリーダーの第一声

 

「フォローと評価の時間をとれませんでした。」

オンラインでの実践会が始まった直後、モニター越しに届いたプロジェクトリーダーの第一声です。40人規模、切削加工企業のご支援先が2年後の目標値に向かって、人時生産性向上活動をスタートさせました。

 

弊社の「工場実装」プログラムは、原則として現場での取り組みを重視します。人時生産性向上のヒントは現場にあると考えるからです。

ただ、現場で議論し、検討し、動いていくためには、共通用語が必要になってきます。チームのベクトルを揃えるには、同じ言葉で考え、同じ基準で判断できる土台が欠かせません。

 

製造業での共通用語の多くは、生産管理3本柱から生まれます。品質管理、原価管理、工程管理です。考えるためには知識が必要です。

製造業で儲ける基礎は、この生産管理3本柱にあります。知らないことは、知っている人から教えてもらえばいいのです。

我流ではなく、中小現場に対応した基礎を知ることが大事です。基礎とは時代が変わっても、変わらないことなので、ブレない思考のためには欠かせません。

 

 

 

この企業では、訪問時の現場実践を主体としながら、オンラインによる基礎の指導も重ねています。夕方の時間帯に実施した3回目のオンライン実践会のテーマは、製造業の収益構造でした。そこで冒頭の報告があったのです。

 

「フォローと評価」は、このコラムでも繰り返しお伝えしてきた重要事項です。ただ、中小現場では、これが意外と難しいのです。

この企業は、年商を2年のうちに1.5倍にしようと挑戦し始めています。そうであるなら、右腕役や管理者が「フォローと評価」をできるかどうかは、ますます重要になります。

 

この支援先は成長モードにあります。プロジェクトリーダーの士気も高いです。それでも、なかなか実践できていません。

 

ではなぜ、重要だと分かっている「フォローと評価」の時間を確保しにくいのか?

 

 

 

 

 

●右腕役に工場を任せるには何が足りないのか?

 

「フォローと評価」の時間をとれなかった。

この報告だけを聞けば、忙しかったからできなかった、という話で終わってしまいます。しかし、ここで見なければならないのは、プロジェクトリーダーの意識ではありません

士気は高いのです。成長への意欲もあります。それでも実践できていないところに、中小製造業ならではの構造による原因があります。

 

「フォローと評価」は、チーム力を高めるための基本動作です。

社長の仕事場が外にある以上、生産活動そのものは現場に任せられなければなりません。年商を伸ばすことと、生産活動を現場に任せることは、切り離せない関係にあります。

社長が市場で将来をつくるなら、社長に代わって右腕役が現場を仕切る場面は増えます。

 

そのとき、右腕役は何をするのでしょうか。

現場キーパーソンの協力を得ながら、作業者一人ひとりへ働きかけます。指示を出すだけではありません。指示したことが理解されているか、困っていないか、うまく進んでいるか、期待した行動が出ているかを見ます。

そして、できていることを評価し、ズレを修正します。これが「フォローと評価」です。

 

現場の各工程を構成する「作業」を担うのは、作業者一人ひとりです。

そして、作業は判断の連続です。

目の前の仕掛品をどう扱うか。遅れが見えたときに誰へ伝えるか。品質に不安があるときに止めるのか、進めるのか。新人が助けを求めたときに、どの順番で対応するのか。

現場では小さな判断が日々繰り返されています。

 

この判断が、「作業者それぞれの個人的な感覚」に任されていたら、チーム力は高まりません。互いに助け合う、補完し合う、相互扶助の姿勢は、気持ちだけでは続かないからです。

 

リードタイムはどこまで詰めるのか。仕上がり具合はどの水準まで求めるのか。短納期案件を受ける意味は何か。新人を助けることをなぜ優先するのか。

こうした社長の判断基準が言語化され、数値化され、現場の日常業務へ定着しているから、同じ方向へ動けます。

 

 

 

「工場実装」とは、この社長の判断基準を現場の日常業務へ定着させることです。従業員一人ひとりが、社長基準で考え、判断し、動ける状態をつくります。

この際、トップダウンで判断基準を伝えるだけでは足りません。伝えたあとに、「あれはどうだったか」「困っていることはないか」「指示の意味は分かったか」と問いかける必要があります。

丁寧に見てもらえば、作業者は、自分の仕事が気に掛けられていると感じます。同時に、「これは大事なことなのだ」と考える機会を得ます。

この繰り返しが、判断基準を現場へ定着させるのです。

 

逆に、社長や右腕役から方針は出たものの、その後は言いっぱなしで、フォローもなければ、評価もない、こうした現場では何が起きるでしょうか?

もともと、現場は毎日の納期対応に追われ、目の前の仕事をこなすことが最優先です。

トップから伝えられた大事なことも、いつの間にか記憶のかなたへ流れていきます。悪気があるわけではありません。現場とは、そういうものです。

 

言いっぱなしで、社長の願望を実現させるための判断基準は定着しません。できないことをできるようにしたいと考える社長基準も、ただ伝達しただけでは、現場に定着しないのです。現場は、いつまでたっても従来のペースで仕事を続けるだけです。

 

 

 

だからこそ、4階層指示導線では、トップダウンとボトムアップの両方が必要になります。

社長は判断基準を伝える。右腕役はそれを現場の言葉へ翻訳し、日々の仕事の中でフォローする。現場キーパーソンは作業者の動きを見て、異常やズレを上げる。

この流れがなければ、社長の判断基準は現場の日常業務へ入っていきません。

 

今回のプロジェクトリーダーは、この重要性を理解しています。だからこそ、こちらから問いかける前に「フォローと評価の時間をとれませんでした」と報告してくれました。

課題を分かっているのです。

それでもできていません。

なぜか?

 

多くの中小現場では、右腕役であってもプレーイングマネージャーだからです。ワーカー業務が先に来ます。

手を動かす仕事が多ければ、現場を見る時間、一人ひとりへ声を掛ける時間、判断基準を確認する時間は後回しになります。

 

ここに、少数精鋭の中小で工場を任せる難しさがあります。

右腕役に任せるとは、単に仕事を振ることではありません。社長の判断基準で現場を見て、フォローし、評価できる状態にすることです。

その時間を確保できないままでは、目の前の作業に追われ続けるだけで、右腕役は現場を仕切っていることになりません。これでは、社長も安心して外へ出られないのです。

 

 

 

 

 

●社長が先に整えるべき「フォローと評価」の環境

 

社長業に専念できる環境を整えることは、経営者の大事な仕事です。

社長の仕事場は外にあります。市場と向き合い、顧客に選ばれる商品や製品を見極め、将来の付加価値額を積み上げる。そのために、内である工場を右腕役へ任せられる状態にしなければなりません。

 

ただし、任せるとは丸投げではありません。右腕役が社長に代わって工場を導くということは、右腕役が社長に代わって「フォローと評価」をするということです。

社長の判断基準を現場へ伝え、作業者一人ひとりの行動を見て、できていることを認め、ズレていることを戻す。この役割を担えるようにすることが、右腕役育成の工場実装です。

 

 

 

社長はまず、自ら「フォローと評価」の姿を右腕役へ見せる必要があります。言葉で重要性を説くだけでは足りません。社長が何を見て、何を問い、何を評価するのか。

右腕役は、社長の仕事ぶりから学びます。

 

もうひとつ、社長が確認すべきことがあります。

右腕役の仕事の中身です。多くの中小現場では、右腕役であってもプレーイングマネージャーです。ワーカー業務とマネージャー業務の比率が7対3、8対2になっていないでしょうか。

作業が大半を占めているなら、「フォローと評価」をしなさいと言っても進みません。時間がないからです。

右腕役に必要なのは、気合いではありません。社長の判断基準で現場を見られる時間と役割です。その準備をするのは社長です。右腕役が現場を仕切れていないと嘆く前に、まず、仕切れる状態になっているかを見直すことです。

 

 

工場を任せ、社長が将来に専念するための入口は、右腕役へ「フォローと評価」を実践させる前の準備にあります。その準備をするのは社長です。

右腕役が現場を仕切れる状態にあるかどうかを見直すことです。工場を任せ、社長が将来に専念するための入口は、ここにあります。

次は貴社が挑戦する番です!

 

儲かっている経営者は、社長基準を現場へ定着させてから、右腕役に工場を任せる