「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第47話 製販一体で計画の精度を上げる仕組みをつくる
貴社には製販一体となって販売計画、生産計画の精度を向上させる仕組みがありますか?
JITと自働化が、トヨタ生産方式の2本柱です。前者のJITで、後工程による「引っ張り方式」を実現しています。前工程による「押し出し方式」とは対極にある考え方です。
必要な部品を必要なときに必要なだけ準備し、必要な製品を必要なときに必要なだけ生産します。需要変動に対応しながら、ムダを省き、最低コストで製造することを狙っています。
創業者である豊田喜一郎氏の想いを具現化した仕組みです。
そのJITを実現する手段としてかんばん方式が活用されています。トヨタ自動車にとってJITとかんばん方式は切っても切れない関係にあるのは有名な事実です。
一方で、かんばん方式を形式的に真似て現場へ導入しても失敗するとの指摘が多いのも事実です。モノづくりの本質を見極めることが欠かせません。
中小製造企業も5年先、10年先を見通したモノづくり戦略を打ち立てて豊かな成長戦略を掲げることは重要です。
不確実性が高まる昨今、現場の不安をやる気へ変換するために見通しを示します。モノづくりの本質を見極めた、的確な戦略を立てるのです。
そこで、中小製造企業が掲げるあらゆる戦略にかかわらず、重要な取り組みのひとつは「製販一体」であると考えています。
今後、多品種少量生産体制の強化、さらにはマスカスタマイゼーションが目指すべき状態だからです。
かんばん方式を実践するためトヨタ自動車が熱心に取り組んでいることがあります。それは販売計画と生産計画の差異を小さくすることです。
1ケ月前に提示される確定月次計画と生産実績の差を±10%以内に収める努力をしています。製販一体となって、販売計画と生産計画の差を小さくしようとしているのです。
かんばん方式にこうした前提条件があることを忘れてはなりません。こうした製販一体の仕組みが需要変動の緩衝材になっています。
需要変動に柔軟に対応するための仕組みも、前提条件があってこそ機能するのです。
トヨタ自動車はかんばんの仕組みづくりを1950年代から取り組んでいます。10年、20年の視点で仕組みを現場へ定着させてきました。
時間をかけて現場へ浸透させて定着させた仕組みは強力です。他社は簡単に模倣できません。モノづくりの本質を見極めていたトヨタの先人たちの先見性はすごいです。
生産管理が仕組みよらず、複数の生産管理担当者の裁量で進められていた生産現場での話です。
こうした現場では、仕組みがないので、生産計画上の全体最適化が図りにくいです。担当者個々に生産計画を立案するからです。
生産指示を受け取る現場から指摘で計画上の不備が判明する状況に陥ります。したがって、生産管理業務の半分は”調整業務”です。
加えて、この現場では、製販で販売と生産の計画を擦り合わせる場がありませんでした。受注の調整判断も、各生産管理担当者の仕事です。時間をかけて調整し生産計画を組み上げた後、新たな受注情報が営業から届くこともしばしば。
一方、営業担当も受注獲得に向けて汗をかいているわけで、製造側としても可能なら受けたい。しかし、そうした想いがあっても、対応できない場合が多々ありました。
生産管理の仕組みがなければ、生産能力を製販で共有できません。したがって、受注後の生産可否は受注してから考える状況になります。本来なら、生産能力を踏まえ、営業が販売計画、受注計画を事前に製造へ提示するのが望ましい姿です。
製販一体となって生産能力や顧客情報を共有すれば販売・受注計画や生産計画の精度を高められます。
製販一体の仕組みの有無は、組織風土も大きく影響します。組織的に取り組もうという雰囲気がない限り、製販一体の仕組みはできないものです。個人がどんなに頑張っても、組織的に動かなければ、結局、製販一体化は、仕組みとなりません。
経営者にしかできない仕事です。
トップが製販一体の仕組みづくりを主導する必要があります。
合わせて仕組みづくりで必要なのは、製販一体となった取り組みで目指すことを現場へ提示することです。
トヨタではかんばん方式の実現、つまりはJITで最低コストのモノづくりを実現することでした。最低コストのモノづくりは中小製造企業も同様です。
今後の中小製造企業のモノづくり戦略で、需要変動へ柔軟に対応できる体制の構築は欠かせません。それが、製販一体となって販売・受注計画や生産計画の精度を上げる仕組みづくりです。
少数精鋭の現場で、生産性を向上させるためにも重要です。従来の属人的な対応から、組織的な対応へ変えます。
今後、多品種少量生産体制の強化、さらにはマスカスタマイゼーションは、中小製造企業が目指すべき状態です。組織でモノづくり力を高める必要があります。
そのために、製販共に、双方でで、きることとできないことを共有して、コスト最小化で生産する体制を作り上げるのです。
モノづくりの本質は、決して製造現場にのみあるわけではありません。
造れば売れるような単純な時代ではなくなりました。製販一体とならなければ、もはや需要変動に対応しながら、最小コストで製造することは不可能です。
経営者が先頭に立って、製販一体の販売・受注計画や生産計画の精度を上げる仕組みづくりを進めます。これは、多品種少量生産体制の強化、さらにはマスカスタマイゼーションへ確実につながっていきます。
販売計画と生産計画の差異を小さくする取り組みは、モノづくりの本質でもあるのです。モノづくりの本質を見極めると、製販一体の仕組みづくりの重要性も理解できます。
製販一体で販売・受注計画や生産計画の精度を上げる仕組みをつくりませんか?