「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第71話 受注生産では「空き」状況を見える化する

貴社では、3通りの生産計画を使い分けていますか?

 

生産管理は生産計画と生産統制から構成されます。

そして、前者の生産計画は3つで構成されています。

半年~1年の大日程、1ケ月~3ケ月の中日程、そして、1日~1週間の小日程です。

それぞれに目的があります。

 

 

 

大日程では、利益計画との紐づけを行います。

経営者が望むのは利益ですから、具体的な構想がなければなりません。

それを大日程で見える化するのです。

 

昨今、売上高至上主義では、必ずしも利益をコントロールできません。

市場が拡大しつつあり、売上高の伸びを確保できる環境下なら、売上高至上主義でも、利益は結果としてついてくるでしょう。

 

しかし、売上高の大きな伸びが期待できない環境で、その対応ではこころもとないです。

どの製品でどれだけの利益を確保するのか、具体的な構想を大日程計画で明らかにします。

 

大日程と利益の具体的な紐づけ方は、セミナーや個別相談などでご説明していますが、実際にこうしたことをやってきる経営者は少ないようです。

しかし、これは利益の見える化であり、現場にとっては社長がどの製品で儲けようとしているのかを知るために欠かせません。

大日程は、経営者の意図を伝える役割もするのです。

 

 

 

 

 

さて、中日程は大日程で設定した利益計画のあい路を解決するのに活用できます。

弊社では、この中日程を重視しているのです。

 

利益を生み出す障害を事前に把握し対応することは、利益計画達成に欠かせません。

そして、中日程計画の計画確度が50%以上あるなら、多品種少量生産でも、積極的に受注拡大を図れると考えています。

 

見込生産が事業の柱となっている中小製造企業では、中日程の決定権は自社にあります。

1ケ月程度なら、いくつかの変更はあるものの90%以上は、月末まで狂いのない計画が可能です。

 

そうした中で多品種化を拡大すると、計画変更の頻度は増えますが、現場は、それほど大きな混乱もなく、計画に沿った生産活動を維持することができるでしょう。

計画の決定権が自社にある分、柔軟に対応できる強みがあります。

 

 

 

一方、受注生産では、原則、生産計画の計画決定権は自社にありません。

自社に計画の決定権がない状況で多品種化を拡大すると、計画変更の頻度は見込生産よりも多くなります。

納期、仕様に対する顧客の要望は限りがないからです。

 

受注生産は、規格品受注生産と特注生産に分けられますが、特に後者は、受注ごとに設計が必要であることを踏まえると、一種の多品種生産であると言えます。

つまり特注生産はそ、もそも多品種なのです。

 

多くの中小製造企業では、受注生産において、繰り返し生産の規格品と受注ごとに設計する特注品の両者を扱っています。

多品種化のため、規格品で扱う品種が増えていることに加え、特注品はそもそも多品種です。

そして、品種が多い分、生産計画の変更頻度は多なります。

さらに、突発案件として、既存の計画に割り込んでくる案件も少なくないでしょう。

 

生産計画が直前まで確定しないこと、生産計画の変更頻度が多いこと、こうしたことが、中小現場における混乱要因のひとつであることは間違いありません。

ですから、こうした混乱要因は、すべて現場の負荷となり、生産管理担当者の業務上のストレスになります。

中小の現場では、担当者個人の頑張りで、こうした事態を乗り切ろうとしがちです。

ますます、現場の負荷は高まっていきます。

 

 

 

 

 

小回り性は、大手にない中小の強みです。

したがって、計画変更や突発案件への対応を避けていては、中小の存在意義を失うことになりかねません。

 

しかしながら、個人の頑張りで乗り切るにも限界があります。

そこで、計画変更や突発案件への対応を組織的に行うのです。

 

多品種化を極め、生産リードタイムを短縮し、圧倒的な品質、納期を強みとするべく、組織的に活動を進めるのです。

受注生産であっても、計画変更や突発案件へ、柔軟性を持って対応する現場を目指します。

 

そこで、道具として活用するのが中日程計画です。

次の手順で中日程計画(受注生産)を立てます。

1.中日程期間(1ケ月~3ケ月)を決める。

2.規格品の生産計画を顧客へ確認する。

   納期や数量について、事前に情報を入手する。

  (自動車部品業界では3ケ月前に情報が開示されることが多い。)

3.規格品の生産工程を中日程期間に設定する。

4.工程上の「空き」状況を確認し、その情報を共有する。

5.特注品や突発案件を「空き」へ当てはめる。

 

規格品の割合がポイントです。

規格品が50%以上の場合に、効果的なやり方となります。

なぜなら、規格品が埋まっていない「空き」が見える化され、現場といっしょに「空き」をコントロールできるからです。

 

・「空き」情報が共有されるので、新規案件を受けるべきか否かの判断が的確にできる。

・規格品の生産リードタイムを短縮すれば、「空き」が増え、特注品を受注しやすい状況に至る。

こうしたことが見える化されます。

これらは、安定して操業できるのは「空き」50%以下の現場である、という経験則に基づいた考え方です。

 

規格品が50%以下では、特注品が中心です。

そこでは、「空き」が大部分となります。

この場合、「空き」をコントロールするというのとは、別の対応が必要です。

 

中日程計画の計画確度が50%以上あるなら、つまり、「空き」が50%以下なら、多品種少量生産でも積極的に受注拡大を図れると考えています。

こうしたやり方を継続していると、規格品と特注品の最適なバランスが見えてくるからです。

 

見える化されれば、現場の知恵が引き出しやすくなります。

中日程計画に注目して下さい。

 

中日程計画で利益計画のあい路を共有する仕組みを作りませんか?