「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第72話 小さく作って小さく回し付加価値額で計る

時間のかかる大きな取り組みで、現場のやる気を持続させる仕掛けをしていますか?

 

経営者の唯一の関心ごとが利益である以上、あらゆる活動において、利益との関係をはっきりさせる必要があります。

 

優れた経営理念や事業理念を掲げても、会社が存続、成長しなければ、社長の想いを実現できません。

利益は、社長の想いを実現させる手段であり道具ですから、そこに経営者の焦点が当たるのは当然のことです。

 

弊社では、生産管理視点で利益を継続的に積み上げるしくみづくりをご支援しています。

経営改革ののろしを現場から上げるためです。

 

生産管理には、生産計画と生産統制の2つのフレームワークがありますが、こうした体系づけられた仕組みの構築に加えて、利益との関連を明確にしておくことが新たな仕事のやり方を現場に定着させるのに有効です。

 

利益を出すことは、社長の想いを実現させることにつながっており、その仕事の意義が理解できます。

「大きな目的、目標」を現場と共有することは、やる気を引き出す3大ポイントのひとつでもあり、そうした観点からも「生産管理」と「利益」を関連付けて現場へ伝えることは重要なのです。

 

 

 

 

 

利益は手段であり道具でもある一方で、現場活動の成果そのものでもあり、その成果を客観的に計る指標でもあります。

ただし、ここで言う利益は、損益計算上、個別原価上の利益と異なることに注意です。

弊社では付加価値額を使います。

 

付加価値額の具体的な活用方法は、弊社主催のセミナーや個別相談などでお伝えしていますが、付加価値額を評価するのに固定費は含めないということです。

しかしながら、この考え方が、今ひとつしっくりいかない経営者、経営幹部は少なくないようです。

 

先だって、個別相談でお話しした金属加工企業の経営者幹部の方へ、これまでの実績を付加価値額で説明したとき、その方は誤解されていました。

「固定費を製品毎に振り分けるのは難しいですよね。」

固定費の配賦率を気にされていたのです。

 

付加価値額を算出するとき、固定費は気にしません。

と言うか、固定費は経営者が5年先、10年先を見通して設定した将来投資です。

固定費の大部分は労務費であり人件費、つまり従業員の給料です。

多くの経営者は将来を見通し、つまり昇給率なども考え、その年度の給料総額を決めます。

 

言い換えれば、現場の人材、特に若手の将来での頑張りを期待した費用であり、将来への投資に他なりません。

ですから、この固定費を配賦すること自体に、何ら意味はなく、弊社では固定費を年度ごとの固まりでとらえます。

 

そうして、各製品から得られる利益を付加価値額で捉えるのです。

単価から製品1個あたりの変動費を引いた数値をその製品の付加価値額とします。

これが基本数値です。

 

簡単に、単純に、機械的に、容易に算出できます。

こうして評価できた製品毎の付加価値額をつかって生産管理の仕組みの成果を計るのです。

 

 

 

 

 

生産管理の仕組みづくりは、工場全体に関わり、さらには営業部門や設計部門との連携も欠かせない大がかり活動となります。

経営改革につながるわけですから当然のことです。

 

だからこそ、弊社も必死に真剣勝負です。

全体の仕組みづくりを、おおむね半年間を目途に、一気につくりあげます。

 

完成度60%程度でも構いません。

生産管理のフレームワークを活用し、その現場の独自性を生かした仕組みの骨格をまずつくって、早速、使ってみるのです。

 

仕組みは使い始めてからが本番であり、そこからの修正、変更をどれだけ地道にやれるかが成功のカギとなります。

ですから、新たにつくった仕事のやり方やルールで、どれほどの効果が得られるのか、数値で評価できなければなりません。

 

つまり、新たな仕事のやり方やルールの効果の見える化です。

これがなければ、現場に新たな試みは定着しません。

 

何らかの形で、途中でも、成果の一部を見える化して、現場が活動の効果を実感できれば、モチベーションを維持できるでしょう。

モチベーションを維持する仕掛けは意図してつくらねばならないのです。

 

 

 

工場経営の本質は自分の想いを、他人を通じて実現することにあります。

現場活動を継続させるために、現場からやる気を引き出す仕掛けをつくるのも忘れてはなりません。

 

したがって、生産管理構築のような大きな取り組みをするとき、まずは、小さい仕組みをつくって、それを回し、成果を付加価値額で測ることです。

規模が小さくとも、まずは現場に成功体験をさせることです。

効果を数値で実感してもらうことです。

 

 

 

そこで、特定の製品に焦点を当てます。

その製品を対象にして、新たな仕事のやり方やルールをつくるのです。

そうして、その製品に絞って、新たな仕組みを実際に回してみます。

 

工場全体で扱っている製品の規模に比べれば、特定の製品に絞っているわけですから、仕組みを回すのにも、それほど大きなエネルギーを要しません。

さらに、付加価値額に慣れるのにも効果的です。

・まずは、仕組みを小さく作り、小さく回します。

・そして、効果は付加価値額で評価します。

 

 

 

 

 

どんな活動においてでも、利益との関連をはっきりさせることです。

現場は活動の必然性を感じます。

 

また、付加価値額を使っているうちに、その勘所もわかってくるでしょう。

付加価値額のような数値は、使ってみて、「使えるな」と感じることが一番です。

最初は理屈で理解する姿勢も大切ですが、最後は感覚です。

 

皆さんも、売上高に関してならば、長年の経験から、その数値が意味するところを一瞬にして理解することでしょう。

それと同じ状態を付加価値額でもやりたいのです。

そのためには、まずは使ってみることです。

 

数値を見て、効果を実感した現場は、大きな目的に向かってモチベーションを高めます。

 

現場のやる気を引き出すのに、仕組みを小さく作り、小さく回して、効果を付加価値額で計測しませんか?