「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第75話 生産管理の役割とは?

下の「    」にはどんな言葉を入れたいですか?

 

生産管理で経営者がやるべきことは、結局は、「     」である。

セミナーや個別相談のとき、しばしば、参加者や経営者へ投げかける質問です。

これは、中小製造企業の現場で、経営者が不在でも、生産管理をうまく機能させる勘所を示しています。

 

 

 

中小の現場の管理者時代、大手とは異なる環境で、現場のベクトル合わせに苦労したことがあります。

金属加工の職場です。

受注生産のうち、特注品が大部分を占めており、生産性を高めて、残業することなく受注を増やすには各設備担当者ごとの連携が不可欠でした。

 

その現場では、まだまだ多能化が進んでいなかったため、自分の担当設備だけが気になる状況です。

儲かる工場経営では絶対に必要な、全体最適の視点が抜けています。

現場に問題があったとか、そういうことではなく、従来は、それでも十分に仕事ができていたということです。

 

しかし、その現場も御多分にもれず、加工品の依頼内容が複雑化し、注文ロットも小さくなってきました。

そして、徐々に柔軟性が求められるようになっていったのです。

ひとりで仕事を完結するのではなく、他のメンバーと連携してやらないと納期に対応できない案件が増えていました。

 

従来にはない案件が増え、受注側としても仕事のやり方を変えないといけない時期だったのです。

そして、現場へ、残業を増やさずに受注案件を増やしたいから、各工程連携して仕事を進めてほしいと指示しました。

 

しかし、その現場で、相互連携はやりなれていなかったのか、なかなか、そうはならず、結局、私自身が、実際に現場へ行って、これは、こうして欲しい、ああして欲しいと具体的に話をすることがしばしばでした。

当然ですが、このやり方では、長続きしません。

 

案件も多いですし、管理者が細かいことを言っているうちは、効率の良い仕事のやり方が生まれようがありませんでした。

管理者が、現場へあれやこれやと、細かく指示しているようでは、現場からやる気を引き出す環境にあるとは言えないのです。

 

そこで、現場での効率的な仕事の流し方については、現場リーダーへまかせ、私は、残業することなく受注を増やすために必要な生産指標を設定することに取り掛かりました。

現場をフォローできる環境を整備しようとしたのです。

 

必要なデータが現場から上がってきて、それらをもとに生産指標で現場を評価するようにしました。

所要工数や人工数当たりの加工数量を現場へ提示することに専念したのです。

 

現場は、自分の仕事の成果を評価する適切な生産指標に興味を持ちます。

生産指標を設定すると目標と現状を比較できて、自分の仕事ぶりが理解できるからです。

誰でも自分が汗をかいたことには興味を持ちます。

 

生産性は、今、8だけれども、10をめざしたい、なぜならこの生産性を達成できれば残業なしで、受注を2割増やせるから。

このように根拠も明確になります。

 

仕事の現状や目標が見える化されるので、納得性が高まるのです。

知らされれば、頑張りたくなるのが現場ですから、現場に働きかけるのに必要なのは、作業のやり方ではなく、作業の根拠のほう。

 

 

 

生産管理というと、管理者も現場といっしょになって製品を追いかけ、まさにその時に、どうするか都度、指示する姿を思い浮かべる方がいます。

現場を対象にした管理なので、指示することが業務の柱であると考えがちです。

 

ある程度の規模の現場であるなら間違いはありません。

売上高規模も1億円を超えた程度で、成長の階段を上り始めた現場では、こうしたやり方でも乗り切れます。

 

物量への対応よりは、流し方のほうが課題となるので、力づくでも回るのです。

経営者が現場へ入り込み、自ら、細かい指示を出して現場を文字通りコントロールすることになります。

しかし、これでは、経営者は現場を離れられません。

 

 

 

そこで、経営者も生産管理をやり方を変えるのです。

指示を出すことではなく、生産指標で現場を評価して仕事の現状や目標を見える化して、納得性を高めます。

 

つまり、生産管理とは「見える化」の体系なのです。

正解はひとつというわけではありませんが、弊社では、先の「   」になかに、「見える化」を入れます。

 

知らされることで、現場の自律性を促すことが生産管理の最大の狙いです。

仕事のやり方を指示することは、生産管理の柱ではありません。

 

先日も、金属加工業の経営者から、事業成長の土台づくりのご相談を受けました。

「新たな事業展開を進めるのに、自分が現場を離れて、うまくいかなくなったら元も子もありません。」

見える化を狙いとした生産管理を導入して、現場の自律性を促し、経営者抜きでも回せる仕組みづくりをこれから進めていく予定です。

 

 

 

そもそも、「工場経営の本質は自分の想いを、他人を通じて実現することにある」わけですから、主体は現場です。

経営者の仕事は現場の自律性を促すことにあります。

 

働きかけ、促すことで、現場の自律性を高めるところにキモがあるのです。

そう考えると生産管理の役割は「見える化」にあることも納得できるのではないでしょうか?

生産管理とは指示することではなく、知らせることなのです。

 

生産管理で「見える化」の仕組みをつくりませんか?