「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第74話 製品の固定費回収パワーをマトリックスで知る

儲け代の大きい製品、小さい製品を把握していますか?

「新規の製品を受注しましたが、かえって残業が多くなってしまい、儲かっているのか、儲かっていないのかわからなくなりました。」

金属加工企業経営幹部の話です。

 

新規製品を受注するさい、2つの判断が必要です。

現場に余力があるかどうか。

それと、儲けの水準です。

当コラムをご覧の皆さんなら、なんらかの方法でやっていると推察しますが、その確かさ、精度となると問題も少なくないのでは?

 

受注をしたのはいいけれども、現場の余力を的確に評価できなかったため、納期を守れなかったという状況は避けなければなりません。

生産計画上の「空き」を常時、把握しておくことです。

そこで、主に活用すべきは中日程計画であり、使い方は、ご支援のなかで実践的にお伝えしています。

 

それと、儲け代が大きいのか、小さいのかを概算でいいので知っておくことです。

見積もりよりも変動費がかかる状況になったときの判断基準をはっきりさせる必要があります。

蓋を開けてみないと儲かるのか儲からないのかよくわからないというのでは、儲かる工場経営を実践しているとは言えません。

利益獲得が経営者の目的である以上、利益に関連した意思決定をする判断基準が必要となります。

そして、その判断基準に使うのが付加価値額です。

 

 

 

 

 

利益は付加価値額で固定費を回収した後に獲得できるものです。

ですから、少なくとも、固定費を回収できる価格ならいいわけです。

言い換えると、単価>製品1個当たりの3大変動費計。

 

ただし、固定費を回収するパワーは、製品ごとに差があります。

固定費回収に大きく貢献している製品とそうでない製品です。

それが付加価値額率の差となって現れます。

 

見積もり時には、この付加価値率も見積もっておくのです。

従来実績との比較で、固定費回収パワーの優劣を事前に知ることができます。

そうすれば、目論見より費用が掛かりそうなとき、やるべきことも見えてくるのです。

 

皆さんの製品が持っている固定費回収パワーはどんなでしょうか。

回収パワーは小さいけど、たくさん売って利益を獲得しているのか、あるいは、回収パワーが高くで、少ない数量でも十分に利益を確保できているのか。

こうした傾向を明らかにしておくのは値付けをする際、重要な論点です。

 

 

 

そこで、マットリックスで整理します。

まずは、売上高と付加価値額率の相関をとるのです。

製品ごとにプロットすると、ある範囲で分布ができます。

 

そして、売上高、付加価値額率、共にある数値を基準にとれば、つぎの4つの領域がみえてくるはずです。

・売上高は大きく、付加価値額率も大きい

・売上高は大きいが、付加価値率は小さい

・売上高は小さいが、付加価値率は大きい

・売上高は小さく、付加価値額率も小さい

売上高と付加価値額率を掛け合わせたのが付加価値額となります。

 

いかがでしょうか。

皆さんの製品がこの4つの群に分類されたら、値付けのとき、固定費回収パワーのおおよそを判断できませんか?

 

ここから、さらに2つのことが知りたくなります。

それは、売上高が大きいのは数量のおかげか?単価のおかげか?

さらに、付加価値額に見合った手間がかかっているのか?そうでないのか?

 

前者では、製品数量と単価の相関をとります。

さらに後者では、付加価値額と製造の手間の相関をとるのです。

ちなみに製造の手間は、業種業態でいろいろな表現ができますし、その現場で何を重視するかでも変わります。

ですから、適した指標を選択します。

工数、生産リードタイム、注文リードタイム、などです。

 

 

 

利益は付加価値額で固定費を回収した後に獲得できるものですから、固定費回収パワーを多面的に見える化することで的確な意思決定ができます。

冒頭の金属加工企業経営幹部も製品の固定費回収パワーを事前に評価していれば、残業の多寡の影響を知ることができました。

製品ごとの固定費回収パワーを見える化する仕組みをつくりませんか?