「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第92話 成熟した固有技術で事業を成長させる
貴社の固有技術が成熟した分野に属しているからと言って儲かる工場経営が難しいとは考えていませんか?
皆さんの現場の固有技術、どの程度の先端性があるでしょうか。
最先端技術分野の技術を有しているからと言って儲かるわけではありません。
成熟した固有技術の加工分野であっても、儲かる工場経営は可能です。
技術はそれ自体の進化度合い、あるいは先端度合いで戦っていると思われがちですが、必ずしもそうではありません。
地元に根ざして頑張っている中小現場を知るにつれて、その思いを強くしています。
自社固有技術を深耕させることは大切ですが、その”周辺技術”を強化することはもっと大切なのです。
要するに使い方、生かし方に長けるとお金につながるということです。
固有技術の深耕は純粋に工学的、科学的な課題が対象であり、場合によっては、お金も時間もかかる仕事と言えます。
こうした領域の仕事では、基本的に大手にはかないません。
大規模な世界最先端を狙う技術開発プロジェクトがそうした仕事の範疇にはいります。
業界最先端レベルで技術開発競争となったプロセス開発の管理者を担った時がそうでした。
人材もお金も時間もかなり要しました。
競合先との技術開発競争では、戦艦同士の砲撃戦のような戦いだったと言えます。
部門をあげての総力戦です。
勝ち負けがはっきりします。
負けると、沈没です。
かなり厳しい仕事でした。
多くのメンバーで構成されたチームで工学的、科学的な技術課題をひとつづつ、地道に解決していく必要がありました。
しかし、技術で戦うとき、戦いの領域は、必ずしもこの工学的、科学的な課題を対象にする必要はありません。
自社の固有技術をいかに上手にお金に変換するか?という視点でも十分に戦えるのです。
中小の現場では、まず使い方、生かし方に論点を絞って下さい。
中小の現場では、まず、弘法筆を選ばずの意気込みで自社のモノづくり力を磨きたいです
自社の道具を使いこなす腕を磨きます。
使い方、生かし方により強く焦点を当てて生産性向上を目指すのです。
(そこで、弊社では、生産管理3柱を切り口にご支援をしているわけですが。)
海外同業者の工場見学に行ってきた経営者との会話です。
「親しくしている海外同業他社の工場を見学してきたのですが、事業を拡大させるそのやり方に感心させられました。」
その経営者の現場の固有技術は一般的に、”成熟した”と言われている分野に属しています。
その”成熟”技術を固有技術として積極的な事業展開をしている経営者です。
固有技術の先端度合いと事業の成長度合いの相関性は必ずしも高いわけでなないことを事業を通じて示しています。
ある出会いをきっかけに知り合った海外の同業者から触発され、まだまだ、自社技術には高める余地があることに気が付きました。
それ以来、情報収集にも熱心に取り組んでいます。
その経営者は海外同業者の工場見学を通じて事業を成長させるヒントをつかんだようです。
固有技術のことよりも、その周辺技術、使い方、生かし方に興味があったとのこと。
「まだまだ、やることがありますね。これからも挑戦です。」
その経営者の言葉です。
製造業に属している私たちは、会社規模の大小に関係なく”技術”で戦っていることに違いはないです。
ですから、いわゆる固有技術と言われる分野での競争に注目が集まります。
材料開発における、機械的性質、電気的性質、磁気的性質・・・。
家電の省エネ性能やエンジンの燃費、電池の寿命など、技術の世界では多様な競争が繰り広げられています。
ただし、しばしば言われるようにこうした性能競争は体力勝負の一面があり、一時、優位に立っても競合がすぐに追いついてくるため、その優位性は維持しがたいものです。
また、高度な技術が即刻、お金につながるというわけでもありません。
例えば、半導体プロセスの微細化(線幅)競争はナノスケールの戦いをしています。
今後、配線の幅が10nm,7nm,5nm,3nmと微細化されるスケールの戦いとなっていますが、物性的な制約、技術的な制約のため、技術開発が成功しても利益が出るかどうかはまだわからない状況にあるようです。
コア技術を深耕させたいと考えたときには、しっかりとロードマップを描く必要があり、それが儲けにつながるかどうかの判断は重要です。
中小の現場は体力勝負になる性能競争は避けるべきです。
やるならば、お金につながる性能競争です。
したがって、まずコア技術の”周辺技術”の強化、そのコア技術の使い方、生かし方を対象にしたテーマに取り組みたいです。
モノづくりの足腰を鍛えるためです。
生産管理や現場のモチベーション向上、儲かる工場経営に対する姿勢など、生産性向上の”手段”に焦点を当てます。
こうした現場活動の取り組みのヒントを得るために、有効な手段があります。
現場見学です。
同業、異業種にかかわらず、そうです。
先の経営者も海外同業他社の現場を肌で感じることで、気が付いたことがありました。
場合によっては、現場の風土や文化を拠り所としていて、ブラックボックスになっているため、良い理由がわかりにくい現場があるかもしれません。
本質的なことを全て理解することは難しいかもしれませが、経営者ならば、現場に身を置いて肌感覚、皮膚感覚で”感じる”ことがあるはずです。
ヒントが得られます。
中小の現場管理者時代、トヨタ自動車グループの部品工場を訪れる機会がありました。
そして、その生産性の高さを”肌”で感じたことがあります。
モノはどんどん造られ、流れて行く一方で、人の動きがほとんどないのです。
”儲かる現場”とはこういうところなんだということを感じたことを今でも覚えています。
また、大手で開発業務の管理者時代、競合他社の現場を訪問したことがあります。
固有技術の核心部分を対象に訪問したわけですが、意外と生産管理のやり方やモノの置き方、実績掲示の仕方など、使い方、生かし方の方でヒントを得られました。
私たちは技術の世界で戦っています。
固有技術の深耕は欠かせない取り組みです。
ただ、それと同じくらい、あるいはそれ以上に周辺技術の強化による固有技術の”使い方“や”生かし方”の方へ焦点を当てる必要があります。
いわゆる管理技術の強化です、
貴社の固有技術が成熟した分野であっても、まだまだ強化すべきことがあります。
生産管理3本柱に焦点を当てて生産性を高める余地があるはずです。
固有技術の先端度合いと事業の成長度合いに相関はありません。
固有技術が成熟した分野にあるからこそ、その使い方や生かし方を強化しまくり、差別化を図るのです。
固有技術の使い方や生かし方を強化する仕組みをつくりませんか?