「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第101話 挑戦する経営者
費用と投資をごちゃごちゃにして、成長の機会を失っていませんか?
「失敗しても、それをやったら失敗するってことが分かるので意味があります。」
事業を成長させるには仕事のやり方を変える必要がある、ついては現場リーダーの意識を変えて欲しいとのご依頼を半年前にいただいてご支援をしている企業の経営者の言葉です。
経営者の想いをお聞きした上で、事業を成長させた状況を想定し、将来へ向けて強化するべき現場リーダーの仕事をご指導しています。
経営者の意向を反映させた生産管理3本柱を軸に、生産性向上のPDACを回すことが、現場リーダーの仕事の柱であると判断しました。
年明けよりご支援を開始、その仕組み作りもいよいよ佳境に入っており、現場が自らPDCAを回せるようになるのも目前、という状況です。
部下の人材育成も欠かせません。
この企業の経営者は、企業の発展と従業員の豊かな成長を願って、積極的に事業の成長路線を描いています。
そして、しばしば口にする言葉があります。
”挑戦”です。
現場のため、技術のため、従業員のため、良いと考えたことはすぐに実行しています。
「この企業の風土は”挑戦”ですね。」との伊藤の言葉に対して、経営者の口から最初にあげた言葉がポンと返ってきました。
従業員の豊かな成長を願っているフットワークの良い経営者です。
弊社へご相談をいただく経営者がしばしば口にする言葉があります。
「挑戦」、「変える」。
今のままではダメなので、まずはやってみよう、という姿勢です。
伊藤には5年ほど中小現場で管理者を担った経験があります。
その企業の経営者へ、仕事を進める上での相談を持ちかけたときに、たびたび、次のように励まされました。
「やってみて、だめだったら、もとに戻してやりなおせばいい。」
10人規模の製造現場で、新たに自動車部品の製造請負業務を取り込もうとしたときのことです。
品質や納期を管理する業務が増えるので、今のメンバーでやりきれるかどうか不安がありました。
そうしたなかで、やる気のある若手を現場リーダーとして体制を敷いて開始すべく経営者へ相談したときも、同様の言葉に後押しされたことを覚えています。
直接にお世話になったその経営者も自社事業を成長させるのに積極的でした。
挑戦することには、前向きに耳を傾けてもらいました。
事業を成長、発展させたいとの想いを持っている経営者は、挑戦抜きに変化は起こらないことを知っています。
”従来の延長線上”に大きな変化は無いからです。
変化は”不確実性の先”にあります。
結果が出るかどうかはわからないけども、やってみて、思い描いている果実の刈り取りを目指し、これでもか~っと言うくらい全力投球するのです。
これが挑戦です。
成功するまで執念深くやり続けて、やめなければ失敗はありません。
伊藤が管理者を担っていた中小現場でも、新たな製造請負業務自体、それまでやったことがないわけです。
やったことがないので、上手くいくかどうか、当時もわかりませんでした。
現場の意識を変える必要があり、工程管理と品質管理を強化する必要もあったのは確かなことでした。
また、計画通り進むとも限らない状況にありました。
ただ、はっきりしていたことは、従来のやり方のままではジリ貧だったということです。
このままでは現場の維持も危うかった・・・。
経営者の言葉にも後押しされ、また現場リーダーや作業者のチームワークのおかげで、その業務を軌道に乗せることができたの幸いでした。
現場リーダーや作業者と一緒になって、これでもか~っと言うくらい挑戦し、頑張った思い出があります。
クレームや不幸にして労災などにも直面しましたが、乗り切りれました。
ご支援先の経営者も全く同じ姿勢を貫いています。
従業員のモチベーション向上や技術課題解決を目的として、挑戦を重ねているのです。
変えるために、やってみなければ分からないことに挑戦しています。
変えるためには挑戦が欠かせないと考えている経営者に共通して感じことがあります。
それは”投資”の感覚を持ちながら、不確実性に立ち向かっているということです。
投資とは、回収し、さらなる付加価値額を積み上げるために投じるものであり、費用とは違います。
積極的な経営者は、投資と費用を見事に使い分けているということです。
費用はあくまで消費されるだけです。
投入した分だけのアウトプットしか生み出しません。
現場に投入した原材料、設備、人から、原則、ある一定割合でしか製品は生み出されないのです。
そもそも、これが生産性の定義ですが、その生産性が、ある日突然、2倍にも、3倍にもなることは、”従来の延長線上”ではあり得ません。
従って、費用というものは、ムダを省く対象なのです。
一方、投資は変化を起こすために投じます。
一時的にキャッシュが出ていきますが、果実を刈り取ることで、それを回収し、仕組み化することで、経営者の手元に何倍ものお金として入ってくるものです。
不確実性という鉄のカーテンの向こうに”果実”があるのが挑戦であり、投資です。
変化とは改革のことですから当然かもしれません。
投資で大きく変えます。
現場改革→意識改革→構造改革へ至って、儲かる工場経営が構築されるのです。
費用はあくまで、管理や改善の領域に留まります。
費用対効果という言葉がありますが、ここには時間軸の匂いがしません。
即効性が求められニュアンスがあるからです。
現場の改善活動での論点ならこれでも構いません。
しかし、企業の5年先、10年先を見通して、変化を起こし、改革を進めようとするなら、投資の目線が必要なのです。
即効性はなく、数年の時間がかかるかもしれませんが、地道に回収し、付加価値額の上乗せが継続する仕組みを目指します。
挑戦とは投資の目線を持って行動することです。
投資の目線を持っ挑戦する経営者は、時間をお金で買っています。
5年先、10年先を見通したら、”今、しかない。”と判断しているのです。
費用対効果ばかりを気にしていると、せっかく出会った変化の機会を失うことにもなりかねません。
幸運の女神には前髪しかないと言われます。
積極的な経営者は時間をお金で買い、投資するのです。
そもそも、弊社にはそうした考えをお持ちの経営者からしかご相談がこないので、それ以外の経営者とお話しする機会は少ないですが・・・。
もし、投資の考え方に躊躇することがあったら次のように考えてみて下さい。
時間をお金で買うのか、お金を時間で買うのか?
挑戦によってあらゆることを変えるべきなのか、費用対効果を気にして管理あるいは改善の水準で現状の延長線上に留まるのか?
弊社は、挑戦し変えようと日々奮闘している経営者を全力で応援しております。
投資の目線を持ちながら挑戦する仕組みをつくりませんか?