「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第104話 現場の生産性向上と製品開発

製品開発業務は特定の人の仕事である、と考えていませんか?

 

「売上高の減少を補うために、製品開発を進めないといけません。」

生産現場を対象にした生産性向上の講習会へ足を運んでいただいた現場管理者の言葉です。

 

その企業で直面している問題は売上減であり、新たな収益源を確保するのに、製品開発を積極的に推し進めなければという課題を抱えています。

講習会のテーマが製品現場の生産性向上なのに、課題が製品開発の推進・・・・。

この現場管理者の目論見がおわかりになるでしょうか?

 

弊社主催のセミナーで申し上げていることですが、生産現場で目指すべきことは「お金を生み出すこと」です。

ですから、現場で認識される問題は、全て、この「お金を生み出すこと」への阻害要因になっているはずです。

そうでなければ、生産現場の問題としての論点がずれています。

 

私たちはモノづくりの事業を展開し、あらゆることへ貢献しようとしているところです。

そのために欠かせないものは利益であり、キャッシュであることは言うまでもありません。

ですから、認識される問題は必ずこれらと繋がります。

 

生産現場で認識された”問題”は、「お金を生み出すこと」への阻害要因と捉えるのです。

そうでなければ、その組織は営利集団ではなく、単なる”同好会”でしょう。

 

 

 

 

 

生産現場の問題および課題を「お金」と結びつけるのに欠かせないのが、”全体最適化”の視点です。

これが抜けている改善活動は、いわゆる”利益(お金)を生み出さない改善活動”になってしまいます。

 

取り組みの観点が部分最適化にとどまると、現場の頑張りが、お金へ貢献することにつながりません。

セミナーなどで、事例を挙げてお話している通りです。

 

しかしながら、現場は、なかなか全体最適化の視点を持つに至りません。

ですから、経営者が繰り返し、繰り返し、説明し、現場活動がどのようにお金へ貢献しているのか説明するのです。

 

多くの中小現場は現場視点と顧客視点の2重構造から成り立っていますから、経営者の想いを通じて、現場が全体最適化の視点を持つように導きます。

経営者にしかできない仕事です。

 

 

 

 

 

さて、生産現場からお金を生み出す方針は2つしかありません。

「利益の最大化」および「棚卸資産のスリム化」。

 

具体的には、ここから6項目に細分化して、現場活動の貢献度合いを探る訳ですが、先の現場管理者の目論見は「人・設備の活用」です。

つまり固定費をフル活用することを目指しています。

 

しばしば申し上げることですが、固定費は原則、削減の対象ではありません。

そもそも、固定費は、経営者が5年先、10年先を見据えて決める性質のモノです。

将来へ向けた投資とも言い換えられます。

 

固定費の大部分は労務費、人件費であり、昇給分も含んでいることを考えれば、将来へ向けた現場の頑張りに期待をかけた経営者の想いが込められているのです。

ですから、固定費は原則、削減の対象ではなく、その効率を高める対象となります。

先の現場管理者の目論見は、将来投資の投資効率を高めることに他ならないのです。

 

 

 

 

 

その企業では、製品開発を専門の部隊で進めているわけではありません。

スタッフが1名、製品開発を主導しているようですが、他は現場メンバーです。

 

生産の状況に応じて、余力となったメンバーを当てています。

したがって、生産活動が多忙になると、製品開発が進まない問題が出てくるのです。

 

そこで、その現場管理者は、問題解決のヒントを得るために、生産性向上の講習会へ参加しました。

生産性向上というと、少ないインプットから多くのアウトプットを生み出す、右肩上がりのイメージがあるかもしれませんが、そうでない生産性向上もあります。

 

「人・設備の活用」はまさにそうであり、今より少ない人・設備のインプットで、同じだけのアウトプットを生み出すことが狙いです。

従来の仕事のやり方を変えて、余剰の経営資源をひねりだし、そのひねり出した人・設備を価値創出業務へ当てます。

 

現場での従来の仕事のやり方を変えて、製品開発ができる環境を整えるわけです。

現場も製品開発に貢献していることに気付くことでしょう。

その結果、製品開発は、特定の人の業務ではなく、全社一丸となって進めるべき仕事であるとの共通の目標が見えてきます。

 

人は行動に意味付けをしたいと考えているので、共通の目標を掲げることで、現場は活気付きます。

経営者や現場リーダーが、リーダーシップを大いに発揮して、現場の行動に意味付けする働きかけをすれば、チームの凝集性、つまり一体感は高まるのです。

 

製造現場には直接的に関係がないと思われる製品開発の業務であっても、現場が担わなければならない役割があります。

中小現場にとって、製品開発は、製造現場も含めた全社挙げてのプロジェクトなのです。

経営資源に制約のある中小製造企業の仕事のやり方であり、そうしたことを繰り返し、繰り返し、現場へ語ります。

 

現場の生産性を高めて、製品開発を強力に推し進める。

「生産性向上でしっかり成果を出して、開発業務を進めていきたいですね。」

その現場管理者の言葉です。

 

現場の生産性を高めて、固定費の投資効率をあげ、開発業務に当てる経営資源を捻り出すイメージを解説しました。

講習を通じて、何らかのヒントをつかんでいただけたようです。

 

全社一丸となって生産性を高め、製品開発を推進する仕組みをつくりませんか?