「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第12話 IOTを現場へ導入する前に考るべきこととは?
IOT(もののインターネット)の役割はモノづくりの本質強化を加速することにある。IOTを気にする前に、儲けるためのモノづくりの本質を把握して、理解を深める、という話です。
IOTを成功させるために必要なこととは何か、思い浮かびますか?
儲けるためのモノづくりの本質をイメージできますか?
IOT(もののインターネット)は道具です。
道具なので、目的がなければ効果は出ません。
ですから、現場へ導入するIOTを成功させる前提条件は導入目的の明確化です。
考えれば当然のことですが、情報過多の時代、新技術を過大評価してしまうことがありませんか?
周りも導入しているからウチも入れねばという”視野狭窄”に陥いる経営者が今後、増えてこないだろうか?と懸念しています。
それほどのIOTや人工知能(AI)など、現場を変えていくと思われる”道具”に関する情報が、やたらと飛び交い始めました。
加えて、厄介なことにこうしたIOTやAIはイメージ先行で、まだまだ、何をどうしてくれる新技術であるのかわかりにくい一面もあります。
IOTは”道具”以外の何物でもありません。まずは、こうした認識を持ちます。「~を~したいからIOTを導入する」という目的の明確化がなければ、せっかくの設備投資も失敗です。
導入すれば何かが変わるだろうという程度では、IOTに限らず、どんな設備投資も埃をかぶります。逆に言うならば、経営者が明確な目的を持ち、その想いを現場と共有した上で導入されたIOTならば、競合を凌駕する成果が期待できるということ。
IOTはそれだけ現場を変えるポテンシャルが高い技術であると考えています。情報通信技術(ICT)の進化は想像以上です。進化した技術を現場へ上手に取り入れ、儲けを増やすのも経営者の腕の見せ所です。
IOTがモノづくり現場へどのような恩恵を与えてくれる道具であるのか、その本質を知っておくことも極めて重要なことです。
今後、5年先、10年先、現場は大きく変わります。そして、付加価値を大きく拡大させる現場と、付加価値を拡大できず伸び悩む現場の、2極化が進むと予想されます。儲かるところはさらに儲かり、赤字に苦しむところはますます深みにはまり込む。
・モノづくりの本質を深く理解している現場が生み出す付加価値
・モノづくりの本質への理解度が浅い現場が生み出す付加価値
両者の「規模の差」がIOTで拡大するからです。そして、両者の分岐点は、モノづくりの本質への理解度の程度(深さ)です。
モノづくりの本質を深く理解している現場では、自社のコア技術をお金に換えるコツをすでに知っています。
そのコツを高度化し、よりいっそうお金を生み出すノウハウに高めるため、IOTを活用します。IOTで付加価値を拡大するのだという目的の共有化が、現場と経営者との間でできてます。
一方、理解度が浅い現場では、そもそも、自分たちの働きが顧客へどう貢献しているのか、そして、それがどう儲けにつながっているか、ということを知る機会がない。
納期に間に合うよう指示通りに”動く”だけに留まっている現場では、知らず知らずに蓄積しているノウハウを生かし切れず、自社工場の強みをお金に換えることができていない。
そうした現場へ焦ってIOTを導入した場合、現場としても何をどうする?ということになり、経営者自身の自己満足に終わります。
IOTを現場に導入する際のスタンス・・・・・・・・。自社工場の将来構想をIOTで加速させる、というのが正しい認識です。
ですから、IOTの導入を考える前に、自社工場の5年先、10年先の目指すべき状態を設定します。自社の強み、コア技術、モノづくりの本質を理解することなしに将来構想は立てられません。
モノづくりの本質への理解度が浅い現場では、まず、自社工場の”今”を整理することを通じて、モノづくりの本質を把握します。それと合わせてIOTの本質への理解も深めます。
小売り業やサービス業とは異なり付加価値を生み出す機会が多い製造業です。製造業は、あらゆる場面で”付加価値”を意識するべきです。
そして付加価値は顧客にとっての価値、顧客価値とか経験価値とも表現され、顧客視点の価値であることに留意します。自社都合では考えないということです。
既存の顧客、あるいは将来の顧客の顕在的なニーズや潜在的なニーズがスタートです。「モノ」のみならず「コト」の視点、つまり顧客が感じる利便性(ベネフィット)にも着目です。
私たちの仕事は、必ず顧客が感じる利便性に貢献しています。貢献がなければ、そもそも顧客に選ばれていないからです。そして、高品質で、可能な限り低コストで、タイムリーに貢献するため、現場では日々カイゼンを展開し、コア技術の深耕と強化に取り組み続けていると考えます。
現場の生産性を向上させる、製品の不良率を小さくする、生産リードタイムを短縮する、材料の原単位を下げる等々。
顧客が感じる利便性を高めるのに、こうしたカイゼンはどう貢献しているのか?自社独自に考えます。
経営者自身が明確な考えを持つことで、自分たちの製品やサービスを必要としてくれる顧客が居るのだということに、現場も気が付きます。「お客様の顔が見えるモノづくり」の実践です。
モノづくりの本質のひとつは、自分たちが持っている強みで顧客の利便性を高めることです。コア技術を生かし、カイゼン等の手法も駆使しながら、質の高い製品やサービスを生み出すこと、そして、それが顧客の利便性を高めることにつながること。
現場のモノづくり(コア技術、カイゼン)→ 製品やサービス→ 顧客の利便性向上(※)
の流れです。
さらに、顧客の利便性を高めることで、自社の付加価値を拡大させるイメージです。モノづくりを事業とするならば、この流れを太く、強く、速くし、お金を生み出す仕組みに磨きをかけます。
これがものづくりの本質であると考えています。自社が持っているコア技術が巡り巡って、自社の付加価値を拡大して、お金に変換される。儲かってなんぼのもの。
そして、モノづくり工場には必ず強みがあります。経営者が気が付いていなくても絶対にあります。5年、10年、20年と事業を継続できているののがその証左です。
まずは、それに着目します。コア技術こそが、モノづくりの本質の流れを構築してくれる現場における最大の宝であり資産。
IOTはこの流れを加速させる道具であり、手段です。
自社工場にモノづくりの本質を表現した流れ(※)を当てはめてみます。
これを強化するためにはどうするべきか?と考え、それを加速させるためにIOTを適用できないかと問うのが王道です。
まずは、自社工場のモノづくりの本質の流れを目で見えるようにします。IOTのことを考えるのは、その後で十分です。
IOTやAIを気にする前に、自社工場のコア技術をじっくり見直しませんか?
まとめ:IOTの役割はモノづくりの本質強化を加速することにある。IOTを気にする前に、儲けるためのモノづくりの本質を把握して、理解を深める。