「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第160話 斜陽で儲ける

儲からないのは外部環境のせいでしょうか?

 

「まだまだ、市場を開拓する余地があると考えています。」

素形材加工業を事業の柱としている中小製造企業経営者の言葉です。素形材加工業には、市場規模が縮小している分野があります。その企業が属しているのも、いわゆる「斜陽」と言われる業界です。

しかし、その経営者からは、前向きで、勢いある言葉がドンドン出てきます。聞いているこちらも嬉しくなる程です。

 

「国内の生産総数量を考えると、ウチが生産しているのは全体の1%にも満たないです。ですから、まだまだというところです。」

 

後継者不在や売上減などの理由で廃業する同業者が目立ってきた中、その経営者は意気軒高、意欲的な成長路線を設定しています。

事業撤退を考えている同業者を取り込みながら自社事業を成長させるアイデアも温めている経営者です。

国内市場の規模に着目し、縮小しつつある中でも、自社の存在感を高める方法に知恵を絞っています。

 

同業者の廃業が目立ち始め、業界の規模が小さくなっていることを脅威と考えるのか、機会と考えるのかは経営者次第です。その経営者は機会と捉え、成熟分野での積極的な投資を目論んでいます。

 

規模の時代から、生産性の時代へ・・・。

こうしたことに気が付いている経営者です。ご自身の夢の実現には、現場の意識改革が不可欠と考えたわけです。

生産性向上体制の確立で基盤を固めつつ、市場へ積極的に働きかけ、存在感のある企業を目指しています。

2年目に入った生産性向上の取り組みも佳境に入ってきました。

 

 

 

 

 

キラリと光る、ならではの事業を展開すれば、業界が縮小傾向にあっても、中小製造企業は十分に食べていけます。いわゆるニッチ戦略。

残存者利益を享受するのも選択肢のひとつです。

 

皆さんの属している業界が縮小傾向にあり、成長分野でなくても、社会に必要とされる技術があるならば、それは事業として成立します。

限りあるパイを、多数の競合と奪い合う業界は価格競争へ至ります。技術的には、先端分野であってもです。

 

一方、パイに限りがあっても、競合が減っていく分野ではどうでしょうか?競合が減りつつあるというのは、供給者が限定されることを意味します。

市場価格が存在するので、儲かる価格の設定が容易であるとは必ずしも言えませんが、顧客に選ばれる独自の理由があれば、価格交渉を有利にできるという期待感を持てませんか?

利益を生み出せるかどうかは、技術の先端度合いとか、市場規模とは無関係です。

 

 

 

 

 

鋳造やプレス、表面処理などに代表される素形材産業は、「川上」の原材料供給企業と「川下」の製品製造企業を結ぶ「製造業の要」です。その要は、現在、市場規模が小さいという問題を抱えています。

 

鉄鋼などを供給する「川上」と自動車などを製品を供給する「川下」の産業規模は120兆円をこえます。一方、素形材産業の規模は数兆円どまりです。加えて、縮小傾向です。

そもそも、製造業が世界経済、国内経済へ及ぼす影響度も変化しています。経済の主役が製造業からデジタル産業へ移行しているからです。

 

ですから、製造業が従来と同じようなやり方をしてはダメなのは火を見るよりも明らか。ましてや、規模が急速に縮小しつつある素形材産業ならなおさらです。

 

素形材産業は国内製造業の要であるので、それ自体が不要となることはありません。ですから、先の企業のように市場縮小、同業者廃業を機会と捉えて、成長戦略を設定するかどうかで、生き残るか、淘汰されるかが決まるのです。

 

規模の時代から生産性の時代へ・・・。

皆さんも、この変化を知ったうえで、行動に移しているでしょうか?

現場のパフォーマンスを生産性で語れるでしょうか?

 

売上高が儲かる工場経営の基盤であることは昔も今も、これからも変わりません。が、これだけではダメです。付加価値額人時生産性が重要な役割を果たします。

 

高級スポーツカーメーカーとして有名なフェラーリーの1台当たり営業利益額は1,000万円を軽く超えると言われています。一方、トヨタ自動車のそれは20万~30万円です。フェラーリの製品はトヨタの製品よりも50倍儲かる力があります。

そして、フェラーリは、それを1万台以下の生産台数で実現させています。一方トヨタの生産台数は世界で1000万台規模です。

我々、中小製造企業がどちらのビジネスモデルを目指すべきかは言うまでもないことです。

 

5年先、10年先、従業員数を減らさざるを得ない事態に直面するかもしれません。ベテランが引退しても、補完する従業員を採用できない場合などです。

たとえそうであっても、生産性を高めていれば、儲かるチームが出来上がります。売上高規模が小さくなっても、フェラーリのようなキラリと光る、ならではの強みで儲けるのです。市場規模は無関係です。

 

 

 

 

 

下請仕事だから儲からない、市場価格があるので儲かる価格を設定できないと語る経営者がいらっしゃいます。

下請け仕事だから儲からないのではありません。

市場価格があるから儲からないのではありません。

儲からないと思い込んでいるから儲からないのです。

 

儲からない理由を外部環境に求めていては、儲かる事業も儲からなくなります。成熟産業、斜陽業界と言われる分野でも、明るく、夢を持って、前向きに事業を成長させようとしている中小製造企業の仲間がいることを知っていただきたいです。

 

残存者利益を狙って、ニッチな領域で存在感を示す戦略があります。中小は柔軟性、小回り性、機動性が身上ですから、大手にはできない生き残り作戦を展開できるはずです。

まずは、付加価値額人時生産性でご自身の事業パフォーマンスを客観的に見てください。すべてはそこからです。

5SやIEの狙いも付加価値額人時生産性を高めることに集中させます。そうすることで成長戦略が見えてくるのです。

 

成長戦略を設定している経営者は皆さん、例外なく、勢いがあり、明るいです。こうした経営者と一緒に働く工場長や現場リーダーも明るく、感度が抜群であると感じます。

現場の雰囲気は、経営者の姿勢や考え方を映し出したものとはしばしば言われることです。

 

 

 

 

 

技術が先端分野であろうがなかろうが、業界が成長分野であろうがなかろうが、儲かる工場経営はできます。

多くの経営者は、縁あって今の事業に携わっているわけですから、この縁自体を機会として、最高のパフォーマンスを発揮いただきたいのです。

 

技術が成熟、業界が斜陽と言われても全く関係なし。我々がやっているのは学問ではなく、商売ですから。儲けるやり方のほうが大切なのです。

「現場一人一人が商売人」の思考回路を持った中小製造現場が生き残ります。

 

まずは、付加価値額人時生産性を150%へアップさせるための行動をしてください。経営者が語る明るい言葉に呼応するのが現場です。

弊社は、挑戦する経営者の後押しをしております。

 

・成長する現場は、業界が斜陽でも、残存者利益ニッチ戦略で儲かる機会と考える。

・停滞する現場は、業界が斜陽だから、市場も縮小し、儲からないと考える。

付加価値額人時生産性を高めて事業を成長させる仕組みをつくりませんか?