「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第168話 自主性

現場から出されたアイデアを大切にしていますか?

 

「これからは、アイデアを出したこと自体、評価してほめようと思います。」

製造担当経営幹部の言葉です。

 

”工場経営の本質は経営者の想いを他人を通じて実現することにある。”

このことを理解済みの経営幹部です。現場のひとりひとりが動かなければ、何も変わらず、結果は出ないと考えています。

「われら笛ふけどもなんじら踊らず」は避けなければなりません。

 

しかし、これまで、現場活動が続かなかったのです。何度も、現場活動をやろうと試みたことはあります。ただ、いつも頓挫していました。

生産性を高めることが現場の使命であると考えているその経営幹部は、現場活動を定着させようと目論んでいます。自主性がカギです。

 

一方的な指示による現場活動は「ヤラサレ感」タップリとなり、形だけの現場活動になるのを痛感しています。

そこで、作業者ひとりひとりに、生産性向上のアイデア、改善項目を出してもらおうと考えました。自主性を引き出すのが狙いです。

 

これまでやったことのない試みですが、今度こそ、現場活動を定着させたいところ。現場からアイデアを引き出すために、何をするべきでしょうか?と問いかけると、冒頭の言葉が返ってきました。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営では、現場活動を経営課題の解決手段としたいのです。IEのためのIEや、5Sのための5Sをやっている暇はありません。

現場活動で、付加価値額人時生産性を高めなければならないからです。経営者層も現場も付加価値額人時生産性にこだわりを持つことが求められます。

今後、中小現場が投入できる総工数を大きく増やすことはできません。

少子化を背景に、人材採用が難しくなっており、少数精鋭で儲けを効率よく積み上げなくてはならないので、指示待ちの現場では、儲かる以前の話となってしまいます。

 

納期を遵守するだけで精一杯、生産性を高める発想が浮かばない製造現場は、価格競争に巻き込まれ、自転車操業になるのがオチです。

ですから、中小現場の生き残りに欠かせないのは、現場の自主性。自主性が、アイデアの源泉です。”ウチの会社”感覚が生まれ、現場渾身のアイデアも湧くのも自主性次第。

 

ヤラサレ感タップリのヤッツケ仕事ばかりやっている現場では期待できないことです。経営課題を解決する現場活動に求められるのは、作業者ひとりひとりの当事者意識、自主性です。これがなければ現場活動は形骸化します。

ですから、現場から、生産性を高めるアイデア、改善項目を引き出したいのです。作業者ひとりひとりが生産性を高めるアイデや改善項目を言いたくなるように仕向けます。

その気にさせることです。これは自主性を促す際の重要な論点です。その気にならないと自主性は生まれません。

 

 

 

 

 

先の経営幹部は、現場からアイデアが出てくるのを期待しています。

一方、作業者にとっては”あえて言う”という行為となりますから、「意見を言った甲斐があったなぁ」と感じさせないことには、絶対に”あえて言う”ことはしません。

 

ですから、現場を、まずその気にさせます。これは自主性を促す際の重要な論点です。2つの観点があります。

1)現場から出されたアイデアを大切にして、その実現に熱意を持って対応する。

2)アイデアを出してくれたこと自体を評価する。

そして、取り組みの進捗を見せることです。

 

前者は現場から出された意見や提案を放置していませんか?という問いかけでもあります。

作業者にとっては、自分が”あえて言った”アイデアであり、それが、その後、どのように扱われるかを気にしています。

 

経営者や管理者が忙しさにかまけて放置し、あまつさえ忘れたとなると・・・、自主性を失う現場の気持ちも理解できるはずです。

そうしたことがないように、アイデアはリストにして現場へ掲示し、進捗を見せるようにします。掲示されたことで、それは”仕事”になるからです。

リストにして項目を掲示し、進捗を見える化した時点で現場は経営者の本気度を感じ取ります。その気にさせるには、出された意見に対する、経営者の100%リアクションが欠かせないのです。

 

また、後者の重要性も忘れてはなりません。アイデアを出したこと自体を評価します。そもそも、意見を出すことをしたことがない現場ですから、その気にさせるために、「出したこと」自体を評価するのは配慮した観点です

「イイアイデアをだしてくれたねぇ、それは気が付かなかったよ!」この一言が次へつながります。まずは、意見を出して欲しいわけですから、出すことに焦点を当てたいのです。

 

 

 

 

 

評価とは褒めることにつながります。マズロのー欲求5段階説の「承認欲求」を満たしてくれるのです。

人間は承認欲求を満たしてくれる人に対して協力的にふるまう傾向があると言われています。ですから、後者の観点は、継続的にアイデアを引き出すのに欠かせないわけです。

先の幹部は後者の重要性にも気づきました。「今まで、指示は言いっぱなし、話は聞きっぱなしだったかもしれません。」とは先の幹部の言葉。

 

自主性を促す2つの観点とは、現場を見守り、時間をかけて育成しようという懐の深さがなければできないものであると気づくのはないでしょうか?

気にかけているというメッセージを現場へ発信することでもあります。仕事を現場へ丸投げしておきながら、一方で、自主性をもって動くことを期待するのは虫が良すぎませんか?

 

 

 

 

 

中小の現場は多忙です。幹部のみならず、作業者もそうです。製造現場は毎日、すったもんだの繰り返し。

後手後手になり、日々、火消しの仕事ばかり・・・・、忙しさのため、せっかく現場から出されたアイデアも生かされず、放置され、忘れ去られ・・・。

組織的な生産性向上活動にはならないので、相変わらず、後手後手になり、日々、火消しの仕事ばかり・・・・。これを永遠に繰り返していては、らちが明きません。

 

その気にさせる2つの観点を生かし、現場からアイデアを出すやり方を定着させようと先の幹部は考えています。そうして継続的な現場活動を実現させます。

これから現場へ働きかけていきますが、もともとノリの良い現場です。現場への働きかけを強化した幹部の仕事ぶりに、感度よく反応してくれることでしょう。

その現場でも、付加価値額人時生産性を向上させる儲かる現場活動が動き始めたようです。

 

自主性とは自然と生まれるものではありません。経営者が現場へ働き掛けた結果生まれるものです。

現場活動を定着させたかったら、IEや5Sのスキルもやることながら、自主性を生み出すやり方に知恵を絞って下さい。

次は貴社の番です!

 

・成長する現場は、出されたアイデアを大切にして、その実現に熱意を傾ける

・停滞する現場は、出されたアイデアを生かせず、放置し、忘れるを繰り返す

自主性を生み出すやり方に知恵を絞りませんか?