「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第172話 価格設定の仕組み

「先生、お客さんとの交渉でウチの価格を認めてもらえました。」

素材加工メーカー経営幹部の嬉しい報告です。

 

その企業は完成品メーカーへ加工済の素材を提供しています。注文がFAXやメールで届き、そこには希望価格が書かれています。

その企業では、以前より、提示された顧客の希望価格を基準に見積もりを出していました。請負型のビジネスモデルではしばしばあるやり方です。商習慣上のことであり、そうすることが顧客のためであると考えていました。

 

一方、それで本当に儲かるのか?それが、ウチにとっての正しい価格なのか?という疑問が経営者や幹部の間にあります。

そこで、先の企業は、自社の基準で価格を設定するやり方を新たに導入したのです。

顧客の希望価格は従来通り提示されますが、それはそれとして、自らのやり方で見積もりを算出することにしました。顧客の希望価格を睨みながら、その見積もりを提示するのです。

 

ある案件で、顧客の希望価格よりも高い見積もりを提案しました。

 

お客さんからは、ちょっと高いですねぇとのコメントがありましたが、最終的には、その見積もり価格で受けてもらえました。「モノ」は当然のこと、それまで、その企業が届けていた「コト」への評価が高かったお陰です。

お客さんは、「あるとありがたい」あるいは「ないと困る」と感じる「コト」にもお金を払ってくれるのだ!先の経営幹部はそう実感できました。

 

その価格が高いか安いかを決めるのは顧客であり、サプライヤーは届けている価値の対価を堂々と提示すべきです。

届けている価値を生み出しているのは他でもない現場の作業者ひとりひとりであり、その価値を反映させたものが価格となります。

 

現場のひとりひとりは、顧客から言われるがままで、頑張りを反映できていない価格に興味を示すはずもありません。儲かる価格を設定する仕組みは、現場の後押しもしているのです。

そうしたことに気付いたという経営幹部の想いが冒頭の言葉に表れています。

 

 

 

 

 

従業員の豊かな発展のために固定費を成長させたかったら、付加価値額を積み上げるしかありません。一方、投入できる経営資源は限りがあります。

したがって、儲かる工場経営の要点は付加価値額人時生産性向上です。生産性向上の具体策を共有、実践できていないと中小現場は生き残れません。

顧客から提示された希望価格で、提示された納期までに造っていれば儲かっていたのは過去のこと。こうした危機感を持ったその企業の経営者は、”継続的な”生産性向上活動を決意しました。

 

 

 

 

 

付加価値額人時生産性は「生産性」ですから、分子と分母で構成されます。

分子:付加価値額

分母:工数

 

構成はシンプルで明らかです。シンプルですが、モノづくりで儲ける原理原則が全て表現されています。ですから、儲けの見える化をやれば具体策がみえてくるのです。貴社では、どれくら「具体策」をお持ちでしょうか?

具体策のひとつに「儲かる価格」の設定があります。

 

 

 

 

 

「価格交渉の余地がないから、価格設定のやり方を決めても意味がありません。」

価格設定の話に触れると、こうした言葉がしばしば返ってきます。

 

請負型のビジネスモデルでは、概ね、顧客がQCDの決定権を握っています。これはある程度致し方がないことです。

ただ、だからと言って、「ショウガナイノダ」という思考回路の基、過去を踏襲するだけでいいでしょうか?

 

これは、白旗、不戦敗を自ら宣言するのに等しいです。儲かる工場経営を最初から放棄している、誤解を恐れずに申し上げると、ご自身の事業で儲けようとする意志が全く無いと言わざるを得ません。

 

儲けようとしなければ絶対に儲からないわけで、儲かる価格を算出できるようになることと、価格交渉の余地がないことは全く別物です。

儲けようと考えるなら、まずは、自社にとっての「儲かる価格」を知らなければなりません。「儲かる価格」を受けてもらえるか否かは、別の問題です。

 

 

 

 

 

儲かる価格とは何か?から考えます。

モノづくりで儲ける本質は、短期の現場目線では、毎月の「投入した固定費の回収」であり、長期の経営者目線では「将来投資型固定費戦略」です。つまり、固定費VS付加価値額。

 

ですから、儲かる価格の設定は、「固定費の把握」からです。固定費=総費用-変動費という定義に従えば、「適切な変動費の定義から」とも言い換えられます。

そして、固定費を把握できたら、次は、毎月の「投入した固定費」の算出です。儲ける本質が、毎月の「投入した固定費の回収」にあることを踏まえれば、そうなります。

 

「儲かる価格」を評価するには、そもそも、その製品を造るのにどれだけのお金がかかったかを知らなければなりません。いわゆるコストです。

家計に関して、赤字で困っている旨の相談ごとへ、ファイナンシャルプランナーは「まずは支出を把握してください」とアドバイスします。

「出ずるを制して・・・」は経営も家計も同じです。ですから、原価計算を抜きにして、「儲かる価格」はありません。

 

 

 

 

 

中小現場でのコスト評価で求められるのは、誰がやっても同じ結果が出るやり方を構築することです。

詳細はセミナーや個別相談でご説明していますが、コスト評価の精度はそこそこでも構いません。それよりも、誰が評価しても同じ結果になるやり方の方が重要です。

 

コスト評価の仕組み化に挑戦された方ならお分かりになることですが、精度を上げようとするとキリがなく、やることが複雑化します。そして、手間暇かけて算出したコストにどれだけの価値があるのか・・・・。

 

中小現場で必要なのは、儲ける判断基準としてのコストですから、そこそこで十分です。そもそも、複雑な手順を踏まなければならない仕組みを現場で使い続けるのは難しいでしょう。それに、状況変化へ対応するための手順見直しも容易ではありません。

 

具体的なコスト評価のやり方には様々な手法があり、その現場独自となりますが、弊社では、次のように考えています。

コスト=@変動費部分+@固定費部分 (@は製品1個当たりという意味)(※)

 

前者の@変動費部分は、いわゆる材料費、外注費の原単位です。

そして、後者が「投入した固定費」です。製品1個あたりに換算するために、固定費を工数と紐づけることになります。それが、いわゆる賃率、レートです。

 

現場での仕事のやり方が、@固定費部分を決めると気付くのではないでしょうか?価格を決めるのは経営者や営業だけではありません。現場も関わっているのです。

 

 

 

 

 

こうしてコストが把握できたら、あとは経営者の意図や意思にしたがって、技術料を加えます。弊社が考える「儲かる価格」とは次です。

儲かる価格=@変動費部分+@固定費部分+技術料

@固定費部分+技術料=@付加価値額であることは言うまでもありません。

 

結局、経営者の意図や意思を@付加価値額に反映させることになります。この@付加価値額で、「投入した固定費の回収」をしなければならないからです。

先の企業でも、@固定費部分の評価で新たな気付きがありました。現場活動の目的が見えてきたのです。

 

@付加価値額を高めて有利な価格を設定したかったら、現場での仕事のやり方も影響してきます。固定費と工数を紐づけてみると、現場活動のネタが見えてくるのです。価格設定と現場活動が結びつきます。

価格を決めるのは経営者や営業だけではありません。現場も関わっているのです。

 

 

 

 

 

儲かる価格は製販一体で設定します。儲かる価格とは、「投入した固定費を回収」することに加えて、顧客へ届ける価値に見合った技術料を反映させた価格のことです。

技術料と表現すると、テクニカルなことに焦点が当たりがちですが、その拠り所は、モノづくりのベースとなる固有技術だけではありません。管理技術も含みます。

 

機能性や寸法精度や粗さ、公差など数値で評価される論点は当然のこと、

・どんなときでも納期を順守してくれる。

・品質が安定していて、安心できる。

・納期や品質面での悪い情報も事前に教えてくれるので未然防止ができる。

・5Sがしっかりやられている現場が頼もしい。

・丁寧な仕事ぶりに安心感を覚える。

などなど、顧客満足度を高める論点も含んでいるのです。

 

儲けるネタは「モノ」以外にもあります。先の企業はそこに気が付きました。そこで、技術料を加えた儲かる価格を設定して顧客へ提案したのです。顧客は評価してくれました。

お客さんは、「あるとありがたい」あるいは「ないと困る」と感じる「コト」にもお金を払ってくれます。

 

 

 

 

 

付加価値額人時生産性を高める具体策のひとつに「儲かる価格」の設定があります。現場も関係していることです。

原価計算があり、そこへ価値に見合う技術料を加え、付加価値額として固定費を回収する。

こうした構造を知れば、「儲かる価格」と現場活動に密接な関係があると気付くはずです。弊社の現場活動指導で、「儲かる価格」の設定を重視するゆえんはここにあります。

 

技術料をいただく拠り所は現場が生み出す価値です。付加価値額人時生産性向上の論点は、本質的なモノの価値ばかりではなく、現場で生み出す付帯的、付随的な価値(コト)にもあります。

 

儲かる価格を算出できるようになることと、価格交渉の余地がないことは全く別物です。儲けようとしなければ絶対に儲かりません。

交渉の余地がないからと言って、従来の仕事のやり方だけを続けていては、現場活動を促す機会を作業者へ提供できないのです。儲かる価格を算出する仕組みは、現場活動を定着させるためにも欠かせません。

 

商売は、あくまで、顧客に「選ばれること」からです。自社に決定権はありません。顧客が選びたくなる「価値」を生み出さないことには始まらないのです。

中小製造企業では、その価値の多くを現場で生み出します。その価値の対価を評価する仕組みがなければ、そもそも、現場のやる気を引き出すのも、難しいのではないでしょうか?

 

現場の豊かな成長を願い、その実現を使命とお考えの経営者であるなら、儲けようと必死になるわけですから、なんとかして、儲かる価格を算出する仕組みを構築しようとされることでしょう。顧客視点を貫けば、そうなります。

 

試行錯誤しながら、時間をかけて構築するのも良し、競合に先んずるために、外部の力を使って、時間を買って構築するも良し。

次は貴社の番です!

 

・成長する現場は、儲かる価格を算出する仕組みで現場活動を定着させる。

・停滞する現場は、価格交渉の余地がないので価格設定の仕組みは不要と考える。

儲かる価格を算出する仕組みをつくり、現場活動を定着させませんか?