「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第209話 工場経営のボトルネックを解消するには?

「作業時間を単純に足すやり方ではダメですね。」

産業機器製造ライン管理者の言葉です。

 

中小製造現場で付加価値額の人時生産性を高める王道は「詰めて、空けて、取り込む」です。手離れがイイ、新たな仕事のやり方を現場に定着させます。挑戦です。

今、仕事量が薄いかもしれません。ただし、やるところはやっています。豊かな成長への準備です。儲かる工場経営を標榜する経営者は緊急度が低くても重要度が高いと判断した取り組みを厭わず実行します。

 

この企業の経営者もそうです。仕事量の関係で一時帰休を取り入れながら工場を稼働させる苦しい局面にあります。が、現場改革の機会にしようとリードタイム短縮に挑戦中です。

現場に求めているのは現場改革です。一定規模の生産量を維持している製品を選択し、新たなモノづくりのやり方を模索しています。

 

手離れがイイ、新たな仕事のやり方を考えるときに持つべき観点は生産現場の2重構造。詳細はセミナーやご指導の場でお伝えしていますが、作業者視点のヨコ連携による流し方から、顧客視点のタテ連携による流し方へ変えます。

多能工化も求められますが、多品種少量生産で効率を高めたかったらこれです。手離れがイイ生産を阻害する要因が見えてきます。それがボトルネックです。

 

先のライン管理者はボトルネックの考え方を知りました。そしてあることに気付きました。リードタイムについてです。冒頭の言葉です。

苦しい局面だけれども、こう言うときこそ現場改革!という経営者の決断があったので、管理者は人時生産性を高める上で重要な論点を肌感覚で理解できました。

 

 

 

 

 

生産性が高いラインでは「流れ」が見えます。その流れを阻害する要因がボトルネックです。つまり、手離れがイイ新たなモノづくりの初手はボトルネック探しです。工程間の同期を妨げている要因や工程を探します。

 

リードタイムは設計できます。この観点は重要です。リードタイムを決定する要因が分っていれば、そこに焦点を当てて現場活動を展開できます。

ボトルネックを解消するには「リードタイムを決定する要因」を最適化すればいいのです。こうした考え方を現場に身につけさせれば、経営者は現場の仕事を現場へ任せられます。

 

先の管理者はボトルネック解消のポイントを理解して工程を見直しました。そうして実践です。ストップウオッチを持ち、動画で記録し、結果を作業者と検証します。

ここからは仮説と検証の繰り返しです。やっているうちに、その管理者はあることに気付きました。リードタイム評価のやり方です。

これまで各工程の作業時間を単純に足していました。それではダメであることに気付いたのです。重要な気付きになりました。

 

 

 

 

 

ボトルネックの有無で作業時間の総和とリードタイムの関係は変わります。原則、次です。

●作業時間の総和とリードタイムの関係

・ボトルネックが無い場合 作業時間の総和=リードタイム

・ボトルネックが有る場合 作業時間の総和<リードタイム

同期していると作業時間の合計がリードタイムになりますが、同期していなければそうならないということです。(注:いくつかの前提条件があります。)

 

改善活動やIEの教科書で解説されていますが、こうした原理原則を知って現場活動に取り組むのと、知らないで取り組むのとでは、ある違いが出てきます。

再現性の有無です。前者の方が再現性は高くなります。

 

現場のことは現場で解決できる体制をつくることが経営者の願望です。そうであるなら再現性に注目します。

原理原則を現場に身につけされることです。原理原則を理解した管理者は具体策をドンドン打ち出します。

部品の配置、道具の使い方、作業スペースの設定、工程間作業時間のバランスなどなど。「知識」があるので考えられます。再現性があればその考え方は引き継げるのです。

 

工程管理やIEは勘や経験でもやれます。力尽くでも結果は出ます。しかし再現性はありません。原理原則が現場活動の再現性を高めます。

 

 

 

 

 

●ボトルネックは工場経営にも存在する

さて、ボトルネックは製造ラインに特有の考え方ではありません。日常業務や現場活動、工場経営にもボトルネックが存在します。成果を阻害する要因は全てボトルネックです。

・工程間を同期させてサイクルを揃えたものの外部から部品調達が思うどおりにならない場合、外注先がボトルネックです。外注先にも協力を仰がなければなりません。

・人時生産性を高める活動に着手しようと経営者が現場へ働き掛けたにもかかわらず、リーダーや作業者ができるとかできないとか、やるとかやらないとか言い始めた場合、現場自体がボトルネックになっています。社長がやると決めたのです。現場は一丸となってやらなければなりません。

・現場改革をやろうかどうか、幹部や現場のキーパーソンへ相談して決めようと考えた経営者の場合、自分で決められない経営者がボトルネックです。決められないトップに導かれるチームは難破船のようなものです。外部環境に翻弄されるだけ。やるならやる、やらないならやらないと自分で決めればいいのです。

 

 

 

 

 

ボトルネック最大の弊害は何か?

時間のロスです。

 

現場がああでもないこうでもないと議論にならない言い合いをしているうちに、競合はさっさとやっています。経営者が自分で決められず、課題を棚上げしているうちに、競合は次のステージへ進んでいます。

 

活動に着手して3ヶ月で成果を出す感度のイイ現場があります。即断即決で行動が早い経営者がいらっしゃいます。

そうでないところは競合に置いてきぼりの食うのです。小回り性、柔軟性、機動性という中小製造現場の強みを生かせていません。モッタイナイことです

全てはお客様に選ばれるためです。儲けの源泉は全て「外」にあります。「内」に存在するボトルネックでもたもたしているとお客様に選ばれません。お客様は競合を選ぶことになるのです。「内」で頑張っても儲かりません。

工場経営のボトルネックを解消したかったら、「外」に向けばいいのです。「内」を向いて、ああでもないこうでもないと言っていて埒があかないことに気付きます。

 

 

 

 

 

ボトルネック解消は製造ラインだけの課題ではありません。まずは経営者ご自身がボトルネックになっていないかのチェックです。

気がついたら、即、行動。現場も変わります。時間を買うことになります。変わった会社にお客様も注目するはずです。

次は貴社が成功する番です!

 

成長する現場は、会社にあるボトルネックを見つけては解消し顧客に選ばれる。

停滞する現場は、挑戦する度にボトルネックのため頓挫し置いてきぼりを食う。