「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第225話 成長発展する現場がスクラップアンドビルドするものとは?

「評価制度を導入して現場の意識を変えたいと考えたのですが・・・・」

30人規模鉄筋構造物メーカー経営者の言葉です。

 

現場で作業者と一緒になってモノづくりに頑張ってきました。数名で始めた事業も気が付けば30人規模です。

ただし、これ以上の成長発展は望めそうにありません。個々の力量に任せてきたせいか、一体感に欠けると感じています。今までの仕事のやり方では、人時生産性向上も限界です。

 

ベテランならこのままでもいいでしょう。しかし、若手が定着してくれません。個力ではなく、若手も活躍できるチーム力で仕事をする現場に変えたいのです。

意識を変えなければと考え、外部の力を借りて「人事考課制度」をつくり始めています。冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

チーム力で仕事をする現場に変えたいが・・・・。相変わらず個力に依存したやり方をしている。30人~50人規模の現場。相談をいただく多くの経営者が抱えている問題です。

 

一方、30年も前のことですが、学校を卒業し入社した企業でこうした問題はなかったと記憶しています。配属された大手の工場、200~300人規模の工場でした。中小製造企業へ転職し、管理者を担った現場で始めて直面した問題です。

 

チームではなく個人が幅を効かせている・・・。そんな現場が目の前にありました。「中小の現場は、個力に依存しすぎて、変化への抵抗感が生まれ易いようだ・・・・。」

製造現場の仕組みづくりは一筋縄ではいきません。

 

先の経営者は人事考課制度で現場を変えようとしています。前職で所属した大手の工場にも人事考課制度はありました。

ただし、これのお陰で現場のチーム力が高まったわけではありません。変わることにドンドン挑戦できた理由は別のところにありました。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営の要諦は製販一体で人時生産性を高めることです。外に合わせて内を変えることです。新人で配属された大手の工場では、そのことを普通にやっていました。

なぜ普通にできていたのか?

 

「型」があったからです。「型」のお陰で、現場には、そうすることが普通であると感じさせる雰囲気がありました。

 

仕組みと言い換えても構いません。

仕事を進める手順です。

当時の工場に、職場に、現場に、そうした仕組みがありました。

 

仕事で成果を出す定石、お作法があったのです。「型」があったのでチーム力も高く、変わることにも挑戦できました。

「型」のない中小現場の管理者を任されて始めて気付いたことです。

 

 

 

 

 

「型」があればベクトルが揃います。その結果、人事考課制度も活かせるのです。

前職で所属していた大手の工場では、人事考課制度があったから「型」ができたのではありません。「型」があったから人事考課制度が機能していたのです。

 

先の経営者には「その前にやることがありますよ」とお伝えしました。今必要なこと、これに気付いてもらいたかったからです。

 

評価制度の土台となる個人目標管理や360度評価の前提は信頼関係です。関係性構築を抜きに評価しようとしても、不信感が生まれるだけです。

共感を持てない人にああでもない、こうでもないと言われては誰でもイヤになります。

 

 

 

仕組みづくりとは、貴社独自の仕事の流れ、生産の流れを見える化することです。

定時と非定時、常時と非常時の観点も欠かせません。

成果物は手順書、要領書、マニュアル、トリセツです。

ここで明らかにされるものは何でしょうか?

基準です。

「型」を持てば、考える基準、判断基準が共有されます。

思考回路の共有です。

 

 

 

中日程計画でスケジュールが一杯になっているところに、お客様から仕事の相談があった場合を想定して下さい。

貴社の現場はどう対応しますか?

お客様から仕事の相談があった場合の手順が下記だったらどうでしょう?

 

1)中日程計画を確認して、余力があるなら受注を決定する。

2)余力がないならリーダー達で知恵を出し、中日程計画の見直しをして受注を決定する。

3)納期対応がどうしても困難な場合、お客様に納期調整の相談をして受注を決定する。

4)納期調整が困難な場合、協力会社へ外注の依頼をして受注を決定する。

5)外注もダメな場合、なんとかねじ込む手はないかリーダー達で知恵を絞る。

6)どうしても知恵が出てこない場合、社長へ報告する。

 

こうした手順を通じて、リーダーや作業者は経営者の考えに気付きます。

「受注が届いたら、絶対に断らない。」

これが経営者の意思であり判断基準です。現場は手順書で経営者の意図を理解できます。上記の手順は経営者の考えを説明しているのです。

 

手順書がないと、「余力がないからできない。」「納期遵守が難しそうだからやらない。」となります。これでは判断基準が経営者ではなく現場です

 

経営者にしてみれば「あなたの判断基準は聞いていない!」となるかも知れません。ただ、そうであるなら「経営者が考える判断基準」を明らかにする必要があります。

現場は経営者の頭の中は見えないのです。

 

 

 

 

 

判断基準を明らかにすれば、思考回路を共有できます。

共有しなければならないのは「思考回路」です。「思考」ではありません。思考を共有するとイエスマンばかりです。

 

先述の手順書では、受注が届いたら、絶対に断らないという思考回路を共有しています。具体策は各自の思考次第です。

 

仕事の流れや生産の流れを見えるようにしで判断基準を明らかにします。これが仕組みの狙いです。具体的には手順書、要領書、マニュアル、トリセツです。

これが貴社独自の「型」となります。●●ウェイです。

 

現場改革は、価値観の大反転、コペルニクス転回です。現場にとっては、天動説から、地動説に変えよ言っているくらいインパクトがあります。

そうであるなら、まずは判断基準の変更を伝えなければなりません。そのための道具が仕組みであり、手順書であり、「型」です。

 

 

 

 

 

そもそも、「型」にはまっていないと成長発展できません。ブレークスルー、型破り、守破離。壊す対象がないと会社全体の革新的な進歩ができないのです。チーム力が活きません。

属人的な仕事のやり方では成長発展できない所以です。何を壊せばいいのか分かりません。

 

現場を変えたかった、まずは型にはめることです。判断基準をスクラップアンドビルドできる現場が成長発展します。

人時生産性を高めれば、仕事の水準も高まるので当然です。町の定食屋さんと高級ホテルのフランス料理店での仕事ぶりが同じと言うことはあり得ません。

 

人時生産性を高めた現場の雰囲気が変わる理由がここにあります。

 

マニュアル人間や型にはまった考え方はダメだという人がいるかも知れません。そう言う人に限って、本気で型づくりをやったことがないようです。

まずは型づくりに挑戦してみましょう。

大手のイイとこ取りという観点を持てば上手くいきます。

 

貴社独自の「仕組み」と「チーム力」を手にして、モノづくりのシステム運用に磨きを掛けて下さい。現場が変わります。

次は貴社が成功する番です!

 

成長する現場は、型をつくり、判断基準をスクラップアンドビルドしながら成長発展する。

停滞する現場は、型がないので判断基準が個人のままであり、チーム力を活かせない。