「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第227話 変種変量、変事変流生産を成功させるには?

「ウチは品種が多くて現場が混乱しています。どうしたら・・。」

部品加工企業幹部の言葉です。コロナ禍の影響で受注は減少傾向にあります。ただ幸いに特定分野は堅調です。

 

お客様の要望へ丁寧に対応し、期待以上の価値を提供できれば生き残れます。多品種少量生産はそのための具体戦略です。

多品種はお客様の要望へ必死に応えてきた証に他なりません。受注があれば、ベテランを中心に、ああでもない、こうでもないと、現場でワイガヤの実践です。

 

しかし、時代も変わり、ベテランに頼るやり方では辛くなってきました。

冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

現場が混乱していること自体、問題ではありません。そもそも中小現場で日々の仕事が“粛々”と進むようでは儲からないのです。

単純極まりない仕事なら淡々と進みます。しかし、そんな仕事には、知恵を働かせる余地が多くありません。お客様は所要工数分の価値を認めてくれます。

しかし、それ以上もそれ以下もありません。いわゆる人工仕事です。積み上げられる付加価値額の規模も限定的です。これでは成長発展は望めません。

 

中小製造現場の戦略は価値創出です。人時生産性を高めながら、付加価値額の規模を拡大させます。人工仕事の逆です。

 

昨今、案件が高度化、複雑化しています。チームで知恵をひねらないとイイつくり方や流し方が見つかりません。お客様は、他で断られたから、貴社にお願いをしたのです。そうした仕事が舞い込みます。

多品種少量を超えて、今や変種変量、変事変流生産です。毎日、すったもんだします競合が嫌がるから付加価値額の規模も大きくできるのです。

変化へ対応するため、「前向きに」混乱しているのか?「後ろ向きに」混乱しているのか?これが問題となります。貴社はどちらですか?

 

 

 

 

 

中小製造現場はチーム力で戦っています。一体感が機動力、柔軟性、小回り性の源泉です。戦艦大和にはできない駆逐艦の強みがここにあります。経験を持ったベテランと意欲的な若手がタッグを組めば鬼に金棒です。

 

とは言え、気合いだけでこなすにも限界があります。現場のステージを高めるのが仕組みづくりです。

 

変種変量、変事変流生産での人時生産性向上活動。これが中小現場活動のトップテーマです。レイアウト、形態、生産計画、在庫、段取り、品質活動等々の具体論点と生産管理3本柱の知識と経験から独自のやり方を見つけます。

 

例えば、「製品の流れ」で分類した生産形態の論点は3つです。

フロー型、ジョブショップ型、プロセス型。

 

多くの現場は機能別レイアウトです。その結果、ジョブショップ型になっています。多品種への対応策です。

ただし、ジョブショップ型には、「製品の流れ」が滞りやすいと言う問題があります。空間的に「工程と工程の間」が存在するからです。

 

したがって、成果を出すにはそうした「間」の存在を前提に目的的行動ができる現場でなければなりません。

勝手な判断で「間」に物を置く現場ではジョブショップ型は機能しなくなります。作業者一人ひとりの思考回路、行為次第です。

 

 

 

 

 

人時生産性を高めるため、「外」に合わせて「内」を変えます。「内」を変えるときの論点がレイアウト、形態、生産計画、在庫、段取り、品質活動等々です。

 

各論点の最適解を組み合わせます。組み合わせなので独自解です。したがって、変種変量、変事変流生産では、仕事のやり方が「プロジェクト」のようになります。日々の生産活動で、小さなプロジェクトがそこここに展開するイメージです。

 

製造業は科学技術を使いこなして価値を創出する業界です。ファブレス企業も選択肢のひとつですが、多くの現場では「設備」を有しています。

そして設備は“固定”資産です。工場レイアウトが決まれば、それに伴い、マテハンが決まります。設備仕様が決まれば、それに伴い、製品仕様が決まります。

 

設備を持ったら価値創出の武器を手にできますが、固定化された制約も生じるのです。

「変化する」仕様やお客様の要望へ応えるのに、「固定化された」設備で価値を生み出さなければなりません「プロジェクト」のような仕事のやり方が求められます。製造業の難しさです。

 

 

 

 

 

現在の陸上シューズは靴底に金属ピンを取付ける製品が主流ですが、アシックスは「ピンなしシューズ」の開発をすすめています。設計思想は「地面と人とのインターフェース」です。

陸上シューズの役割は地面をきちんと捉えて、選手の走る力を余すことなく伝えることにあります。インターフェースとは「接点」や「境界面」を意味する語です。

コンピュータシステムで異なる機器やシステムを接続する部分を指す言葉として使われます。USBやHDMIなどの言葉を耳にしますが、あれです。

シューズが選手と地面の接点・境界の役割を担うインターフェースとは言い得て妙です。(出典:日経ものづくり2020年2月)

 

 

 

 

 

固定された道具で、変化する市場に対応します。固定された道具と変化する市場の「接点」「境界面」で頑張っているのが現場であり、一人ひとりの作業者です。

現場は、固定された道具を変化する市場へ合わせる役割を担って、日々のプロジェクトをこなします。市場と設備のインターフェースです。

 

変種変量、変事変流生産。これが中小製造現場です。千変万化の市場へ変幻自在に現場を対応させられる圧巻の柔軟性、機動性、小回り性が中小の強みです。

強みの源泉は人です。

 

作業者一人ひとりの思考回路、行為が問われます。価値観や判断基準を共有できているからベクトルが揃うのです。

ベクトルが揃えば、非常時・非定時にも経営者が希望する動きをしてくれます。ロードマップはそのための道具です。

利益アップ、給料アップの人時生産性向上を共通用語とします。価値観や判断基準を共有できれば組織の凝集性が高まるのです。

 

経験だけに基づく人に依存した仕事の仕方をしていては行き詰まります。モノづくりのデジタル化が加速されているからです。個々バラバラの仕事のやり方でDXは進められません。

IOTやAIをどう活用するか?建設的な議論ができる現場に変わらないと生き残れないのは火を見るより明らかです。組織の凝集性を高めなければモノづくりのDXも進みません。

 

 

 

選手の力 → シューズ → 地面へ伝達 走力アップ

固定された設備の力 → 現場(人) → 変化する市場へ対応 人時生産性アップ

 

変化する市場と固定された設備のインターフェースを高度化・高機能化すれば人時生産性を高められるのは明らかです。

そこで商品開発よろしく人材開発です。プロジェクトのやり方を知っているので、混乱を前向きに処理できるチームになります。

ここで手を抜くと固定化された設備を使いやすいように使うだけの人材が育ち、変種変量、変事変流生産、変化へ対応できません。いわゆる、人に仕事がついた状態です。

 

 

 

先の企業では個別面談で経営者の想いをフェイス ツー フェイスで語り伝えることから始めることにしました。時間を味方につけた現場改革です。

逆算の経営がスタートしました。ロードマップを使い倒します。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、人材開発でインターフェースを高機能化し人時生産性をグイグイ高める。

停滞する現場は、現場の使いやすいように設備が使われ、市場の変化に対応できない。