「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第235話 現場活動を構成する絶対に必要な2つの仕組みとは?
「忙しくなると、現場は直ぐに人が欲しいと言ってきます。」
今月からプロジェクトに着手した経営幹部の言葉です。
その幹部がプロジェクトを先導します。生産性向上に焦点を当てた取り組みにしたいと考えているところです。工程間連携が欠かせません。できないことをできるようします。今のメンバーで新たなことに挑戦し、やり切ることが必要です。
しかし、そうした雰囲気が希薄だと幹部は感じています。従来の仕事のやり方では、生産性を高める観点が生まれ難いようです。冒頭の言葉です。
日本生産性本部から公表された「労働生産性の国際比較2019」によると、日本の製造業労働生産性(付加価値額/人年)はOECD加盟主要31カ国中16位です。
ちなみに2018年16位、2017年14位、2016年15位、2015年16位、2014年15位。
2019年の日本の製造業労働生産性は、トップ水準のスイス対比50%、デンマーク対比65%に留まっています。
そんな日本も1990年代~2000年代前半までは上位常連国でした。1995年1位、2000年1位、2005年9位、2010位11位。2000年以降、他国に抜かれ始めた事実があります。
モノづくりで儲ける構造が変わってきました。効率優先のモノづくりだけでは生産性向上も限界です。儲からなくなりました。世界的にそうなのです。
儲かる体質づくりとは「外」の変化に合わせ「内」を作り変えることに他なりません。製造業は技術の世界で戦っています。貴社は技術革新と競合の追い上げに晒されているのです。
前職で携わった自動車部品製造工場での取り組みについて、しばしば取り上げていますが、あの頃も「変えることが」待ったなしでした。
「内」の事情は関係ありません。できるとか、できないではなく、やらないと競合に負けるのが分かっていました。
当時の「外」の変化とは「軽量化」と「日産自動車で展開していたNRP」です。
「外」の変化に対応できるよう、新たなプレス機、新たな金型、新たな工程やプラントレイアウトを考え「内」を変えました。
人時生産性を高めるためです。大手には「内」を変える取り組みを継続させる仕組みがあります。大手だからあるのではなく、こうした仕組みがあるから成長できたのです。
製造業は技術の世界で戦っています。できないことをできるようにした者勝ちです。イノベーションで人時性生産性を高めます。
貴社には2つの仕組みが設計され、機能していますか?
・納期遵守の仕組み
・人時生産性向上の仕組み
前者はあるはずです。納期遵守ができない現場はそもそも、生き残っていません。したがって後者の有無が論点となります。
人時生産性を高める仕組みがありますか?コスト削減、ムダ取りに加えて、付加価値額を積み上げる現場活動です。
納期遵守さえできていれば問題はないと考える思考回路を変えなければなりません。今の仕事のやり方に疑問を持つところからです。長年の思い込みを打ち破ります。
パソコンのアプリケーションはアップデートで質を上げます。さらにはバージョンアップで質のステージをぐっと高めますが、それと同じです。
「外」の変化に合わせて「内」をアップデート、バージョンアップさせないとお客様から選ばれなくなります。
・新たな受注の相談がお客様から届いたのにもかかわらず、日程計画が一杯だと、「できない」「無理だ」「一杯だ」という言葉が直ぐに返ってくる。
・忙しくなり、人が足りなくてできないから、「人が欲しい」と安易に言う。
・短納期や高機能を求められると、「それは無理だ」と言って即、外注へ出す。
納期遵守だけで儲かるなら、これでも構いません。納期遵守はお客様との信頼関係構築の土台です。しかし、今や競合も納期遵守はやっています。差別化にはならないのです。
「納期させ守っていればいい」と言う思考回路に固まってしまっている現場があったら、その思い込みを解いて上げなければなりません。生き残りの具体策を知らせます。
現場活動には2つあること。納期遵守だけでなく、人時生産性向上もやらなければ生き残れないこと。背景に技術革新と競合の追い上げがあること。
現場から「それは分かるけど、納期遵守だけでも手が一杯だ」との言葉が返ってくるかもしれません。それなら、納期遵守をチームで対応する仕組みをつくろう!と促せばいいのです。
「手が一杯だ、忙しい」の原因となっている「属人的なやり方」を変えて仕事のステージを高めます。
2000年以降、グローバルにも製造業で儲かる構造が変わりました。スイスやデンマークのようにブランド、技術、知識で付加価値額を積み上げる国が上位にきています。
貴社も儲かるやり方に舵を切ったらどうでしょうか?新たな価値を生み出すには工数がかかります。技術開発、製品開発、商品開発、サービス開発、プラントレイアウト開発・・。
コスト削減やムダ取りだけでは辛いです。工数を投入する以上に、付加価値額を積み上げれば人時生産性は高まります。
生き残るためには「外」に合わせて「内」を変えるしかありません。「付加価値額」分を支払ってくれるのは他ならぬお客様だからです。人時生産性を高める意義と論点を伝えます。
取り組みが佳境に入り、受注が上向きになると、仕事が忙しくなるでしょう。だからと言って、人を増やしていると人時生産性は高まりません。
利益規模が大きくなっても、従業員一人ひとりの給料は増えないのです。
「納期遵守」脳では気が付かない論点かもしれません。忙しいからと言って、人を入れていると何が起きるのか?ハッピーになれるのか?説明する必要もあります。
人時生産性を高める取り組みを定着させるには苦労が伴います。これまでやったことがないわけです。
おまけに、重要度は高いものの、納期遵守に比べれば緊急度は高くありません。なにかと後回しです。いつまで経っても「納期遵守」脳から逃れられません。
それを食い止めるのは、経営者や幹部の強烈な決意だけです。トップがまぁいいやでは、現場もまぁいいやです。
先の企業では、人時生産性を高める意義と論点を伝えるところからプロジェクトを始めます。元々チーム力のポテンシャルを感じる職場です。目から鱗を落としてもらったら、一気呵成に進みそうな感じがします。
人時生産性3,000円、4,000円台で甘んじてはモッタイナイのです。現場活動には、納期遵守の仕組みだけでなく、人時生産性向上の仕組みも組み込まなければなりません。
次は貴社の番です!
成長する現場は、納期遵守と人時生産性向上の仕組みを連動させ付加価値額を積み上げる。
停滞する現場は、納期遵守のために個人の判断基準で仕事をやり続けるので行き詰まる。