「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第249話 変化を捉える方法を持っているか?

「こんな風になっているとは思いませんでした。」

実績の見える化で全社収益、お客様別売上高を分析した経営幹部の言葉です。結果を熱心に説明して下さいました。

 

特にお客様別売上高のグラフには特徴的な変化が認められます。

主要なお客様と思っていたのに売上高が減少傾向にあること。

地道に売上高を伸ばしているお客様があること。

こうしたことに気付きました。

 

月毎の数値だけを追っかけていても分らなかったことです。年商ベースの変化に注目して見えてきました。

ロードマップ全体構想を考えるための重要な情報となります。冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

経営者、幹部の仕事は時代の流れを読んで、自社を成長発展のスパイラルに乗せることです。まずは現状を踏まえる必要があります。将来を見通すためです。

現状を「点」とともに「傾き」で捉えるのです。貴社には現状を「点」と「傾き」で捉える具体方法がありますか?

 

経営者は様々な場面で意思決定をします。経営者だけが持つ特別な肌感覚や鋭い嗅覚は意思決定の大切な道具です。

ただ、それだけでは周囲を納得させられません。ワンマン経営は儲かる社長の特権ですが、工場経営の本質は経営者の想いを、”他人“を通じて実現させることにもあります。

”他人“を腹落ちさせることも大切です。

数字が大事な役割を果たします。

客観的な道具です。

 

 

 

 

 

現状分析の目的は将来予測にあります。

過去3年程度の実績を詳細に分析してそこから現状に至った原因を探ることもあるようですが、これでは経営者が知りたいことに届いていません。

経営者が知りたいのは将来です。実績の見える化を将来の見える化へ繋げます。数値の変化に焦点を当てることです。

 

数値から2つのことが読み取れます。

・大小

・変化

 

「5」と言う数値を見せられて何を判断できますか?

5段階評価の5なら最上の評価です。10段階評価の5なら平均的な評価となります。基準対比で「大小」を評価できます。

計画した売上高と比べて実績はどうだったかということを日頃やっています。数値はそれ単独で存在しても意味を成しません。基準、比べる数値があって初めて大小を判断できます。

 

さらに1→3→5の「5」と9→7→5の「5」からは何を判断できますか?

前者は増加しつつある途中の「5」

後者は減少しつつある途中の「5」

 

同じ「5」でも意味することが違います。将来を見通すうえで「変化」を知ることが欠かせない所以です。「傾き」あるいは「微分」と表現できます。

 

経営者はその瞬間、瞬間を大小で評価しながら、傾きを把握して将来を見通すのです。

 

 

 

 

 

実績の変化を捉えるやり方の一つに移動累計グラフがあります。売上高、付加価値額などのの変化を年間規模感で把握する方法です。

 

年間売上高、年間付加価値額の変化を月毎に知ることができます。毎月、年度決算する感じです。年商ベースで判断ができます。

月別の数値を評価しても、その月に特殊要因があると、その数値の良し悪しを判断できません。移動累計を使えば季節変動など、特定期間の特定要因による影響を緩和できます。

 

そして、この先1年間どうなるか?グラフの変化から将来を見通せるのです。前年度同月対比で増えれば増加傾向、前年度同月対比で減れば減少傾向のグラフとなります。

経営者が知りたい将来を見通す道具です。

 

さらに、お客様別の移動累計グラフも大切な情報を経営者に与えてくれます。

年間売上高や年間付加価値額は期末の時点で算出するものです。期末になってはじめて、前年度実績との対比ができます。

逆に言うと、年度末にならないと、年間規模の変化を知ることができないということです。

 

移動累計を使えば毎月、年間規模の変化を見える化できます。年間規模の変化を月毎に知ることができれば、その変化を営業戦略に生かせるのです。

主要なお客様であっても、減少傾向(マイナスの傾き)であれば、お客様のところへ足しげく通い、減少の原因を探ります。

逆に増加傾向(プラスの傾き)であれば、(やはり)お客様のところへ足しげく通い、積極的に我が社を選んでくれるている要因を探ります。

先手必勝の営業戦略のためにも欠かせない道具です。

 

 

 

 

 

変化は「マイナスの傾き(負の微分値)」、「プラスの傾き(正の微分値)」で捉えます。現時点の傾向から将来を予測するためです。将来の見通しは3つです。

衰退モード

横這いモード

成長モード

 

収益や受注の将来を現時点の変化から見通します。

移動累計の他、ABC分析分布図、手間暇-儲け相関図など、変化を捉える道具はイロイロあるので、まずは使ってみることです。

 

ただし、こうした分析は闇雲にやっても時間の無駄です。死亡診断書のような分析に時間を割く方がいらっしゃいます。

私達が知りたいの「将来」です。将来を見通すために分析をやります。試行錯誤しながらでもいいので、事業モデルに適した道具を選択し、それを使い続けることが要点です。

変化を捉えようとしています。継続できないと無意味です。

 

「こうした分析をやっておけば、迷うことなく、自信を持って、将来構想を現場へ伝えられます。”数字に語らせろ”という先生の言葉の意味が分かります。」とは先の幹部の言葉です。6月にロードマップ全体構想を全従業員へ公表します。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、瞬間、瞬間を大小で評価しながら、傾きを把握して将来を見通す。

停滞する現場は、数値の変化を知る機会がないので、将来を見通せない。