「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第261話 付加価値額を積み上げる具体策、どれを選ぶか?
「人時生産性を高めるやり方を考えなければいけません。」
50人規模、産業用設備メーカー経営者の言葉です。
ロードマップの作成に着手しました。経営計画の必要性を感じての挑戦です。
これまで、年度の初めに前期の振り返りと今期の目標を従業員へ説明することはありました。ただし、その目標もほとんど「標語」で終わっています。
いよいよ、時間軸を設定して、具体的な成長戦略を従業員に伝えなければと考えた経営者です。全てを変えないとダメ。外部環境の変化に合わせて変わらないと生き残れません。
人時生産性を計算して、業界平均より低いことを知りました。人時生産性を高める具体策を決める必要があります。初めて検討することです。
これまで納期遵守だけを考えてきた現場ですが、これから変えていきます。
儲かる工場経営の要諦は「お客様に選ばれる製品を効率良くつくる」です。これを実現できれば儲かります。なにはともあれお客様に選ばれなければ始まりません。経営者の仕事は「外」とお伝えしている所以です。
ここに人時生産性向上の本質があります。
・分母を縮小する。
・分子を拡大する。
貴社の戦略はどちらですか?後者の方が発展的です。前者には限界があります。一方、後者は青天井です。やり方次第でドンドン伸びます。
論点は付加価値額の積み上げです。現状対比で「新たな」付加価値額を積み上げるには?と考えます。付加価値額積み上げの具体策が論点です。
リードタイム短縮は手段の一つです。
製造業は「加工」で原料、材料、部品、および製品に価値を加えます。そして「加工」の原動力が人や設備です。工数や稼働時間を現場に投入して付加価値額を生み出します。
生み出される付加価値額は投入された工数や稼働時間に比例するのです。
付加価値額 = a×工数 (人が主役の現場)
付加価値額 = b×稼働時間 (設備が主役の現場)
aやbは比例定数です。付加価値額レートと表現できます。
これが付加価値額積み上げの基本式となります。付加価値額の定義は複数ありますが、この式はそのうちの一つです。これによると付加価値額を積み上げる具体策がわかります。
積み上げの具体策とは次の4つです。
1)人による投入工数を増やす
2)設備による投入稼働時間を増やす
3)付加価値額レート(人)を高める
4)付加価値額レート(設備)を高める
1)と2)の重要性は論を俟ちません。お客様からの問い合わせがあったら全てを引き受けたい。これが経営者の気持ちです。
受注をこなすために工数や稼働時間を増やします。いけるとこまで行くのです。現行の人員と設備でさばけるなら、問題はありません。
ただし、それ以上になったら、人員増や設備投資が必要です。
1)と2)では、時間を提供して付加価値額を獲得しています。特に、1)で提供しているのは労働時間であり、場合によっては人工商売です。人工商売はお客様に価格決定権を握られます。中小管理者時代に体験したことです。
さらに、成長にはある程度の規模が必要です。人員増や設備投資で機会損失を回避します。ただ、注意を要します。
・固定費は階段状に増える。
・売上高(付加価値額)は徐々に増える。
一旦、人員増、設備増を実施すると後戻りすることは難しいです。したがって、固定費増に対して、計画通りに売上高(付加価値額)を積み上げなければなりません。
計画や見通しが大事と言われる所以です。計画をフォローします。
規模を大きくすることは付加価値額を積み上げる王道です。しかし、回収すべき固定費規模も増えます。売上減(付加価値額減)となったときは、固定費を回収できないリスクが高まります。
・時間(特に労働時間)提供による付加価値額積み上げ
・固定費増による付加価値額積み上げ
今はVUCAと言われる変動性が高く、不確実で複雑、さらに曖昧さを含んだ社会です。この2つだけで持続的成長は困難です。
市場が単純に右肩上がりに成長することが期待できない昨今、我々は変わらなければならないのです。そこで、経営者は付加価値額を積み上げる他の具体策を考えます。
1)と2)だけでいいのか?ということです。
投入工数や投入稼働時間を増やさなくても付加価値額を積み上げるやり方はないか?3)や4)の論点です。比例定数aやbを高める取り組みです。
儲かる工場経営のプロジェクトではこちらに焦点を当てます。
方針は2つです。
・詰めて、空けて、取り込む。
・スマイルカーブ戦略
少数精鋭の中小製造企業です。
やることを絞り、集中させます。
詳細はセミナーやご支援のなかでお伝えしていますが、いずれも投入工数や投入稼働時間を増やさず付加価値額を積み上げる戦略です。
中小製造企業の管理者時代、赤字職場を黒字化させたときの考え方がベースにあります。前者ではリードタイム短縮、後者では「加工」以外での付加価値創出がカギです。
大手でも展開している付加価値額積み上げ戦略です。
制約のある中小製造企業だからこそ、1)や2)以外の戦略で、5年先、10年先を見据え、人時生産性を現在の3,000円、4,000円台から6,000円、7,000円台へ高めるのです。
時間を味方につけます。
ただ闇雲にリードタイム短縮や「加工」以外での付加価値創出に挑戦してもうまくいかないことがあります。中小現場では大手のやり方をそのままやろうとしてもダメだからです。
中小ならでは論点も外してはなりません。
先の経営者はリードタイム短縮に挑戦します。プロジェクト体制を整えました。一方「加工」以外での付加価値創出については、経営者が並行して考えることにしました。
弊社は挑戦する経営者と一緒になってプロジェクトを進めております。
次は貴社の番です!
成長する現場は、人工商売に依存しない、付加価値額を積み上げる独自のやり方を探る。
停滞する現場は、労働時間を提供して付加価値額を積み上げるやり方のままなので辛い。