「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第275話 お客様の工場見学を営業活動にする

「先生、新しいお客様との取引が決まりました。」

30人規模素材メーカー営業幹部の言葉です。

 

日常用品の素材を扱っています。創業以来の主要製品が斜陽になりつつあります。今、新たな製品を事業の柱にしようとしているところです。

新たな製品を対象にした生産性向上も大事ですが、まずは拡販に努めなければなりません。お客様に工場へ足を運んでいただくことも具体策のひとつです。

 

お客様がお越しになるにあたって、現場で何ができるか考えました。

お客様には、一旦手を止めて、目を見て挨拶をしよう、現場のホワイトボードに・・・。現場も新たな取り組みに挑戦しました。

 

誠意のある頑張りは報われます、冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

儲かる工場経営の要諦は「お客様に選ばれる製品を効率良くつくること」です。効率良くつくる前に、お客様に選ばれる製品がなければ儲かりません。

買うか買わないかの決定権はお客様にあります。

儲かるには、お客様に選ばれる理由が必要です。

 

自社製品を持って商売をしているなら、製品を手にとって、お客様に貴社の強みを説明できます。しかし、下請けモデルの事業では自社製品を持ちません。

下請けモデルでの貴社の強みは「コア技術」です。固有技術と管理技術の2つで構成されます。他社製品を事例にして強みを説明することがしばしばです。

 

ただ、「技術」そのものは目で見えません。

他社製品を通じてもコア技術の強みは伝わりますが、自社製品での訴求と比べれば、もう一息のプッシュが必要・・。そこで、お客様に現場へ足を運んでもらうことになります。

コア技術の源泉を現場で感じてもらうためです。

 

貴社製品を選ぼうとしているお客様にとって必要なのはなにか?

それは貴社を選ぶ理由です。

例えば、貴社工場を訪問した担当者は次のように感じます。

 

「なるほど、この会社の固有技術は業界でも特徴的だ。ウチのアイデアを具現化してくれるだろう。生産管理体制もしっかりしているのも好ましい。それに、なんといっても現場の雰囲気がイイ。作業者は全員、手を止めてまで、挨拶してくれた。ベテランらしい作業者から”よろしくおねがいします。”という声も掛けられたし・・・。ホワイトボードに手書で”〇〇工業〇〇様、工場見学ありがとうございます”と書いてあったのも嬉しかったな・・。」

これら、ひとつひとつが選ばれる理由です。

 

お客様にはなるべく多くの「理由」を持って帰ってもらいます。せっかく現場に足を運んでもらうわけです。この機会を生かします。

理由の大小は関係ありません。貴社製品選択の決定者の琴線に触れられれば小さくてもいいのです。選んでもらう後押しになります。

貴社の工場見学には、お客様に選ばれる理由がいくつありますか?現場も製販一体で新規受注に貢献したいと考えています。

 

 

 

 

 

固定費VS付加価値額の収益構造では成長と発展の原動力は付加価値額の積み上げだけです。全社一丸となって付加価値額を獲得します。

最早、高品質の製品つくって、安く大量に売り、売上を積む事業モデルは勝利の方程式でなくなりました。製販一体で積み上げるのは付加価値額、粗利です。

 

お客様に足を運んでもらう工場見学も営業活動と位置づけます。明確な目的を示されれば頑張るのが現場です。

 

コロナウィルス感染拡大は営業活動のやり方を変えました。オンラインでの商談もしばしばです。リスク回避で悪いけど訪問はしないで・・・・と言われた経営者もいます。

止められない時代の流れです。それに棹さしてもしようがありません。

その一方でリアルでなければ伝わらないこともあるのは確かなことです。現場に足を運んでもらう工場見学はリアルだからこそです。せっかくの機会をどう生かすか・・・。

 

コロナ禍の影響を受け、昨今、従来の下請け型モデルでは売上高が伸びないと危機感を抱いている経営者がいらっしゃいます。

営業部門を持たず販売費を掛けなくても受注を維持できていたメリットがデメリットになってしまいました。付加価値額を積み上げようと外へ取りに行こうにも具体策が出てきません。

 

営業活動は代理店や商社でやってくれますというある経営者は、現在、商社からのアイミツの連続で価格競争に追われています。

営業活動は主導権をもってならないと「生殺与奪の権を他人に握られる」ということです。トップが自ら新たに積み上げる付加価値額の源泉を自ら探すしかありません。

これまでやってこなかった営業活動をこれから強化すればいいのです。営業活動もできる下請け型モデルを目指します。

 

・製販一体で受注を獲得するのだ。

・現場も営業活動ができるのだ。

・お客様が工場に足を運んでくれたとき、あなたはどんな貢献ができるだろう?

 

こうした問いかけが、現場を製販一体へ導きます。

そもそも現場はお客様に触れる機会がありません。営業活動は自分たちには無関係だと考えがちです。現場も営業する活動に関われることを教えなければなりません。

 

現場はショールームにも、アンテナショップにもなるのです。

 

今は、高品質なものを安く大量につくる時代ではありません。儲かる工場経営の要点は「お客様に選ばれる」です。価格が高くても選ばれるには?

選ばれるために何ができるか?

お客様が足を運んでくれる工場見学は現場による絶好の営業活動の場となります。全員で営業活動!そうして売上減の難局に立ち向かうのです。

 

先の現場は、その後、順調に新たな事業の柱を伸ばしました。現場活動による直接的な効果は分かりません。しかし、全員で営業活動をやろうという心意気はお客様に伝わります。

作業者一人ひとりも営業マンです。

次は貴社が挑戦する番です!

 

成長する現場は、お客様による工場見学の場を絶好の営業活動の場と考え誠意を伝える。

停滞する現場は、お客様による工場見学の場は自分に無関係なので一瞥だにしない。