「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第276話 2つのスキルアップを切り分けているか?

「先生、誰でもできるようにならないとできたとは言えませんよね。」

中堅部品メーカー現場管理者の言葉です。

 

経営者へ相談しながら現場体制を整備しました。半年前のことです。フラットな体制から、若手のリーダーを抜擢してチームを作りました。この30代後半の管理者は見事に組織を機能させています。実務がドンドン進むようになりました。

 

チーム力が機能している現場に共通していることがあります。

若手が活躍していることです。そして、得も言われぬ一体感があります。ベテランも若手リーダーを支えようとするのです。特別な指示がなくてもそうするのです。

この雰囲気は企業文化としか言いようがありません。ご支援時に感じる肌感覚です。

 

その管理者と工程分性を重ねました。「こうしたことをやってみたかった」と言いながら熱心にやり切った管理者です。

現場はこの管理者の仕事ぶりを毎日、目にすることになります。建設的な雰囲気になるのも当然です。キーパーソンが誠意を持って仕事をやれば現場に伝わります。

出来上がった手順書を手にしながら語ってくれたのが冒頭の言葉です。

その管理者は実務を通じてスキルアップの本質を理解しました。

 

 

 

 

 

固定費を成長させ、現場へ投資しながら発展していく。これが製造業の事業モデルです。経営者はいつも設備と人材のことを考えていなければなりません。

固定費は将来投資です。したがって、この投資をやめたら、その時点で終わりです。座して死を待つことになります。

 

技術の進化は加速され、競合先も生き残りに必死です。無策の企業はこれらにあっという間に追いつかれ、追い抜かれるでしょう。お客様が追い抜かれた企業を選ぶでしょうか?

製造経営者は常に設備と人材の将来投資構想を持っていないとならないのです。

 

特に人材への投資は命脈を保つうえで欠かせないものです。我々中小製造企業の強みである小回り性、柔軟性、機動性は人と人との関わり合いから生まれます。

そして、それは作業者1人ひとりの言動に大きく影響されるのです。

 

大手の千人、1万人という規模に比べれば、中小は50人、100人の少数精鋭規模と言えます。1人ひとりの影響力は大きくなるのです。

大手では1万人分の1ですが、中小では百分の1の影響力を持ちます。中小現場でベクトルが揃える大切さはここからきています。

人材への投資によって、経営者の意志や意図を実践できる部下を育てるのです。作業者1人ひとりのスキルを高める大切さは論を俟ちません。

 

 

 

 

 

人時生産性活動に着手した経営者はあることに気が付きます。

結局、課題は人材育成に行き着く。

生産性向上活動の狙いは、現場の「できない」を「できる」に変えることです。2つの具体手段があります。

・設備投資で「できない」を「できる」に変える。

・人材のスキルアップで「できない」を「できる」に変える。

 

経営者の投資対象はこの2つです。この2つへの投資をやめると現状維持になります。現状維持は相対的な遅れです。「技術の進化」と「競合先」にあっという間に追い抜かれ、お客様から選ばれなくなる・・・。

現状維持では生き残れないと申し上げている所以です。

 

 

 

 

 

大手の製造現場は属人的な要因を除去することにお金を掛けます。従来、職人技と言われた技能すら自動化の対象です。

大手工場での機械化、自動化、無人化、設備化。こうした取り組みは枚挙に暇がありません。昨今はこれにIOT、AI、DX化が加わっています。

 

中小でも必要な機械化、自動化、無人化、設備化はやらなければなりません。しかし、我々の強みはもともとも小回り性、柔軟性、機動性にあります。中小ならではの強みは現場での人と人との関わり合いから生まれることが多いのです。

 

ちょっとした工夫、緊急時のもうひと踏ん張り、さりげないサポートなど。少数精鋭だけに、作業者1人ひとりの言動が現場全体へ大きく波及します。

中小の現場とはそういうところです。

 

経営資源に制約がある中小現場です。設備への投資もさることながら、人材への投資も重視する必要があります。

 

今いる人材で何ができるか?と考える経営者はいません。この発想では経営者の夢を実現できないからです。

夢を実現させるにはどんな人材が必要か?と考えます。人材のスキルアップはそのためにやるのです。こうした投資は人材再生産に繋がります。

結果として固定費を健全に成長させられるようになるのです。

 

 

 

 

 

スキルアップを現場へ指示するとき、経営者は下記の2つを切り分けなければなりません。

・スキル水準の上限を引き上げたい。

・スキル水準のばらつきを小さくしたい。

スキルアップという点では同じですが、両者は似て居て非なるものです。課題達成のやり方が違います。

 

貴社ではベテラン従業員へ「若手に技能を伝えて欲しい」とスキルアップ業務を丸投げしていませんか?両者をごちゃごちゃにしています。

狙いが定まらずモヤモヤした仕事は結果もモヤモヤで定まりません。ベテランも困ってしまうのは目に見えています。

 

先の現場管理者はそのあたりをしっかり理解しています。だからこそ、冒頭の言葉が出てきたのです。狙いに沿った手順書が出来上がりました。

これまでなんとなくモヤモヤしていたものがスッキリしたようです。スキルアップのキモを押さえることができました。

現場と設計との連携強化という成果もありました。「こんな取り組みをやってみたいと思っていました。」とは設計担当者の言葉です。現場の成果が波及しています。

 

 

 

 

 

中小製造企業には、固定費を健全に成長させる戦略が必要です。大手のようにコスト削減だけに走ってはダメです。苦しくなるだけです。

貴社は既にかなりのコスト削減をしました。必要なのは次の戦略です。取り残しているムダを排除したら、すぐに次のステップへ進んで下さい。

 

固定費を成長させる戦略、設備と人へ投資する戦略、経営者の夢を実現させるスキルアップ、全て手順があります。我流では難しいです。

大手の仕事を真似てはダメですが、大手の仕事ぶりは真似ていただきたいのです。大手の現場と中小の現場を実地で経験している弊社が提供する手順の要点はこのあたりにあります。

 

次世代経営者の支援チーム、経営者の右腕役、経営幹部、工場長、現場管理者。

中小の固定費成長戦略では、設備投資と共に人材への投資によるスキルアップがキモです。貴社にはキーパーソンのスキルアップを図る手順がありますか?

 

先の企業の経営者はプロジェクトで手にした武器を使って、ニッチですがその業界でのリーディングカンパニーを目指し、歩もうとしています。

外部の力を借りて、お金で時間を「購入」した結果、1年で事業のステージを高めました。

次は貴社が成功する番です!

 

成長する現場は、将来投資でスキルアップを図り、夢を実現できるように現場を変える。

停滞する現場は、スキルアップをベテランへ丸投げするので夢の実現につながらない。