「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第314話 社長の本気と覚悟を伝えているか?

「毎週、伝えることにしました。」

機械部品メーカー経営者の言葉です。

多くの経営者が直面しているように売上減が経営問題です。自ら新たな受注を積極的に獲得することに挑戦します。トップ営業です。

 

中小製造経営者なら当然やっていなければならないことをやっていませんでした。

これまではそれでもよかったからです。親企業からの電話を待っていれば、一定水準の売上高を維持できました。

しかし、20年度以降、状況はガラッと変わってしまったのです。売上高の右肩下がりが止まりません。経営者は、今後、「外」での仕事に軸足を置こうと決意しました。

 

重要な局面を迎えていることを現場にも理解させなければなりません。経営者が本気と覚悟を持って受注を獲得に挑戦します。

「社長の本気と覚悟をどうやって現場に伝えますか?」と尋ねたとき、冒頭の言葉が返ってきました。我が社が危機に直面していることを知らさなければなりません。

 

 

 

 

 

お客様に選ばれる商品や製品を効率よく造れば儲かります。要点は「お客様に選ばれる」です。お客様に選ばれない商品を効率よく造っても儲かりません。多機能を追求しすぎた90年代の国内家電業界の顛末がそのことを教えてくれています。

また「お客様に選ばれる」理由が唯一、価格だけでも辛いです。一時はいいかもしれません。しかし、低価格は即、競合に真似されます。価格競争に陥ることは明らかです。その後の体力勝負は避けられません。

 

電気自動車向け駆動用モーター事業を強化している日本電産は今、年商10兆円をめざしています(22年3月期 売上高1.9兆円)。同社創業者の永守会長の方針は明らかです。

低コストを武器に車載用大型モーター市場での占有率高めます。「結局はコストだ。性能で勝っていると言っているメーカーは必ず負ける。」とは永守氏の言です。

 

価格戦略は大手が採用する勝利への方程式なので中小の戦略になり得ません。したがって、中小製造企業の経営者は日々、必死に価格以外で「お客様に選ばれる」にはどうすればいいかを考えているのです。

 

 

 

 

 

今の事業を「価格以外でお客様に選ばれる」事業に作り変えるのが中小経営者の仕事です。儲かるビジネスモデルを構築します。

下請けで甘んじてはいけないと考えるなら自社商品、自社製品を開発することが必要です。中小製造現場の管理者時代、役員が「メーカーを目指さないとだめだよね。」と繰り返し言っていたことが思い出されます。

下請けモデルでも構いません。そうであるなら、儲からない下請け型モデルを儲かる下請け型モデルへ作り変えことになります。

 

したがって、経営者はお客様の言動に耳を傾けることになるのです。選ばれる要点はお客様しか知りません。儲けのヒントは「外」にあります。お客様と競合先で構成される市場にネタがあるのです。経営者の仕事場は「外」にあるとお伝えしている所以です。

儲かる事業構造に変えて、人時生産性を6,000円、7,000円を目指します。

 

貴社が今赤字なら、その原因のほとんどは売上減、販売不振です。受注件数が足りていません。その場合、経営者、自ら既存のお客様へ足を運んで新たな受注を探り、さらには新規のお客様を必死に開拓しているはずです。

昨今はオンラインでの商売も可能となりましたが、誠意を伝え、信頼関係を構築するのにリアルに勝るものはありません。商売には合理性の他に品位や品格も必要です。リアルでなければ伝わらないこともあります。

売上高を確保しようと必死な経営者は、外を飛び回り、会社にはほとんどいないのです。

 

今は赤字でなくても、3年後、5年後、事業を一層、儲かる事業に変えたければ、やっぱり経営者は、お客様へ足を運びます。競合先の動向や技術の進化も気になります。したがって、経営者は会社をほとんど不在することになるのです。

外での探索は、我が社の戦略を考える手がかりになります。ググれば簡単に情報を手にできる昨今、経営者は本物の情報があるところを知らなければなりません。

 

 

 

 

 

我が社を豊かにするネタは全て「外」にあります。「内」にはありません。したがって、経営者は会社にほとんどいないことになるのです。

経営者の仕事は、幹部以下従業員の仕事と全く違います。「価格以外でお客様に選ばれる」事業に作り変え、儲かるビジネスモデルを構築することです。

 

そして、幹部以下作業者の仕事は、経営者の仕事を支援するために、現場での仕事のやり方を変えることです。この一連の取り組みが改革になります。

改革と改善の違いは成果の規模です。

改善の成果が2割、3割に対して、改革のそれは2倍、3倍です。工場のことを現場に任せられない経営者は社長業に専念できず、いつまでたっても2倍、3倍の成果を手にできません。

経営者は、いつまでたっても悶々とすることになるのです。

 

現場の仕事は経営者の指示導線上にあります。現場はその指示内容から経営者の意志や意図を理解するのです。

ただし、経営者は「外」で汗をかいています。経営者の姿を会社や工場で見かけることはありません。「ウチの社長は何をやっているのだろう?」と素朴に思います。

だから経営者は、現場の素朴な疑問に答える必要もあるのです。

 

我が社を豊かにするネタは全て「外」にあるのだ~。

だから受注を獲得するために外へ攻めているのだ~。

返り討ちもあってなかなか受注に繋がらないが、なんとかするのだ~。

 

経営者は自身の本気と覚悟を現場へ示すことで、現場のベクトルを揃えられます。本気と覚悟を言葉で伝えるのです。

 

 

 

 

 

先の企業が直面している経営課題は営業力の構築です。売上が減ったときに、新規受注を獲得する術を持っていないことです。

これまでは親企業からの連絡を待つだけでした。このままではダメだと考えた経営者は自ら外へ出向き、新規受注を獲得する決意をしたのです。

 

売上高はピーク時の半分にまで落ちています。危機的事態です。今はまだ問題になっていませんが、このままでは資金繰りの問題が出てきます。

経営者自らが本気と覚悟を持って「外」に出て、既存のお客様、まだ見ぬ新規のお客様へ足を運び、新たな受注を獲得しようとしているのです。

 

先の経営者は、従業員に自分が抱く本気と覚悟を示そうと考えました。毎週、朝礼で、経営者自ら出向いたお客様への訪問結果を伝えることにしたのです。

 

受注につながらなかったお客様訪問にも触れます。現場は、経営者がお客様を訪問してもなかなか受注に繋がらないことを知るのです。

受注は空から降ってくるものでもなければ、地面から湧いて出てくるものではないことを理解します。受注は獲得するものです。

 

訪問の成果が要点ではありません。経営者には経営者の仕事があって、本気と覚悟を持ち、お客様を訪問している事実を知らせることが大切なのです。

できないことをできるようにするのだという経営者の必死の姿勢を見せます。心意気のある従業員は経営者の本気と覚悟を感じるものです。経営者の本気と覚悟は言動で伝わります。

 

 

 

 

 

ある2代目経営者が次のように語っていました。

「創業者は存在そのもので仕事をしていました。」

背中で仕事ができる唯一の経営者とは創業者なのかもしれません。

 

事業を引き継いだ2代目以降の経営者は創業者と同じ仕事のやり方をやっても上手くいきません。創業者とは違ったやり方で、今の事業を「価格以外でお客様に選ばれる」事業に作り変え、儲かるビジネスモデルを構築するのです。

必死に「外」で仕事をすることになります。従業員にはその姿が見えません。「背中を見ていろ」と言っても伝わるわけもないので、しっかり言葉で伝えます。

 

経営者はお客様や競合先の話を語り伝え、外に儲かるネタがあることを現場に知らせます。外での仕事を必死やっている姿を知らせて、経営者の本気と覚悟を示すのです。従業員に健全な危機感を持ってもらいます。

2代目以降の経営者は創業者とは違った仕事のやり方があるのです。

次は貴社の番です!

 

成長する現場は、経営者の必死な「外」での仕事から本気と覚悟を感じとり改革に頑張る。

停滞する現場は、「社長はなにをやっているのだろう」と思いながら納期遵守に頑張る。