「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第316話 個性を発揮するところを間違えていないか?
「現場で見てもウチのだとわかります。」
産業設備メーカー製造部門担当幹部の言葉です。
仕組みの作り替えに着手しました。収益力向上のためです。
目標は人時生産性現行対比で2倍です。2割、3割ではありません。構造改革です。改善ではありません。
我が社の強みを議論していたとき、製造部門担当幹部からお客様の現場に設置される設備の外観上の特徴について発言がありました。冒頭の言葉です。
競合先の設備とは「仕上げ」の水準が違います。それが外観から受ける印象の差となって現れるのです。お客様に選ばれる理由がここにもあります。
お客様に選んでもらうには理由が必要です。お客様に貴社のことを見つけてもらわなければなりません。
市場へ向けて一生懸命に手上げるもヨシ、情報発信しながらじっと反応をうかがうもヨシ。お客様に見つけてもらうやり方はいろいろです。経営者が決めます。
ただ、どんな方法にしても、見つけてもらう理由、さらには、そこから選んでもらう理由が必要です。差別化の源泉となります。
差別化は中小製造経営者がとるべき唯一の戦略です。価格競争を回避します。そもそも、競争自体を避けたいのです。
生殺与奪の権を他人に握らせたくありません。そうしたビジネスモデルを可能にするのが差別化です。
差別化は無理だ~っと言っている限り人時生産性は高まりません。従来の儲からない下請け型モデルに甘んじることになります。ゆでガエル状態です。
生産形態分類の観点はいろいろあります。品種、数量、レイアウト、製造のタイミング、設計のタイミング、流し方、指示等。
例えばレイアウトの観点で生産形態を分類すると、機能別レイアウトと製品別レイアウトです。前者は柔軟性を追求します。そして後者は効率性です。
お客様の要望は多様です。お客様は自分のために造ってもらえると喜びます。オーダーメードです。現場では柔軟性が問われます。レイアウトは機能別です。
加えて、お客様はできるなら少しでも早く、安く手にしたいと考えます。マスプロによる効率性も必要です。その場合、レイアウトは製品別になります。
柔軟性と効率性で生産形態を分類できるのです。柔軟性と効率性のバランスを設定してプラントレイアウトをすることになります。
柔軟性で儲けるのか?
効率性で儲かるのか?
バランスの度合いは経営者が決める事業モデル次第です。
お客様の要望は多様です。それに応えてこそ差別化が実現できます。我が社ならではの価値提供をお客様にしたいのです。
我が社の商品には「個性」が求められます。競合と同じことをやっても儲からないのは商売の基本です。
個性を追い求めると現場は原則、機能別レイアウトになります。ただし柔軟性がある分、上手くやらないと効率が下がるのです。
先の企業では外観にも個性があります。「仕上げ」水準に競合と違いがあるのです。この違いは設備の細部にまで行き渡った設計上の配慮に反映されています。
Rや面粗さ、緩衝材などで使い勝手を良くしているのです。製品の個性で差別化を図ります。
ただし、仕事のやり方に個性はいりません。属人的な対応をしていると設計者や作業者によって仕事のやり方が違ってきます。
もともと機能別レイアウトは製品別よりも柔軟性が高い分、効率性が低いのです。
仕事のやり方が標準化されていないとムダが生まれます。人によって設計のやり方、製造のやり方が違う現場の工程間連携は低いものです。
全体最適の視点を作業者は持っていません。納期遵守でイライラしているのは管理者だけです。そして作業者は自分なりに頑張っていると思っています。両者がかみ合いません。
設計を含めた各種業務が標準化されていないと応受援性が低い現場が出来上がるのです。
経営者の判断基準ではなく、各自の判断基準で仕事をやっています。効率は上がりません。我が社のやり方さえあればイイのです。それが標準作業です。
我が社の商品に個性は必要ですが、仕事のやり方に個性はいりません。
柔軟性を目指した機能別レイアウトをベースにしながら、効率性も考慮して製品別レイアウトの要素も加えるのが、競争力を高めるプラントレイアウトの考え方です。
柔軟性と効率性、トレードオフの両者を両立させるビジネスモデルを考えます。
マスカスタマイゼーションは今の製造業が目指しているモノづくりを表現した言葉です。
お客様の多様な要望に応えるためオーダーメードに限りなく近い商品や製品を大量生産のコストで実現させます。
・オーダーメードの多様性
・マスプロダクションのコスト
真逆の形態を両立させます。
ここでカギになるのが標準化です。
・作業の標準化
・商品の標準化
商品を標準化しても、お客様には「自分のために造ってくれた。」と感じさせる知恵も必要です。このあたりのヒントは皆さんの周囲にあります。
我が社の商品に個性が必要ですが、仕事のやり方に個性はいりません。
仕事のやり方で求められるのは効率性です。大量生産のような低コストを実現します。生み出す商品や製品は個性的でも、それを生み出す現場には標準化が必要なのです。
こうした考え方は、納期遵守の仕事しかやらせていない現場では生まれません。お客様の要求に応えるだけでは「自分で考える」訓練が不足しています。
納期遵守以外のプロジェクトによる管理者の思考訓練が必要であるとお伝えしている所以です。我が社の商品に個性が必要ですが、仕事のやり方に個性はいりません。
貴社では個性を発揮するところを間違えていないか?
次は貴社の番です!
成長する現場は、業務標準化で工程間連携を高めて個性ある製品を生みお客様に選ばれる。
衰退する現場は、仕事のやり方では個性を発揮しているが製品に個性がなくて選ばれない。