「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第33話 想いを現場に浸透させて影響力を高める

経営者は想いを現場の隅々にまで浸透させ、影響力を高めます。想いを上手に伝えたかったら、”自分のために語ってくれている”という感情を相手に抱かせる、という話です。

 

face to faceのコミュニケーションで、その想いをしっかり伝えましたか?

全員を前にして繰り返し、繰り返し語りましたか?

 

 

 

「100人を前にして話すときと、5人を前にして話すときとでは、同じ話をしても伝わり方が違うよね。」

 

先日、かって所属していた企業での同期に会いました。久しぶりの再会です。そして、互いの近況を語り合い、盛り上がりました。

 

彼は現在、製造部門の管理者として現場取りまとめの仕事で汗をかいています。海外事業所で仕事をした実績もあります。

 

自分の想いを現場に伝えることは簡単なことではない・・・・。こうしたことを肌で感じているエンジニアです。

その彼の言葉です。

 

製造現場は”他人”に動いてもらってなんぼです。組織力、現場力を最大化することが、経営者や管理者の仕事になります。

ですから、経営者の意思や狙い、目的や想いを現場へ伝え、理解してもらうことは最重要課題です。現場のベクトルを合わせるには欠かせません。

言葉や人種の壁なども存在する海外事業所ならばなおさらです。

したがって、現場へ語って想いを伝えるやり方に、工夫が必要となってきます。

 

 

相手の人数”は伝わり方にかかわる重要な要因です。100人へ語るときと、5人へ語るとき。同じこと伝えても受け取る側の印象はかなり違います。

 

同期の彼には、次のようなことがあったそうです。

国内事業所での話です。現場の数十人を前にして話したことはなかなか伝わらないなぁ、という感想を持っていました。

その一方で、工程毎の少人数(5名程度)を相手に話もしていたようです。その中には協力会社の職場もありました。

あるとき、その協力会社の方から、次のように声をかけられました。

「我々のような外部の業者にも、安全に気を付けて頑張ってほしいとの言葉を直接にもらってうれしかった。」

ここで、同期の彼は気が付きました。

同じことを語るにしても、相手の人数によって伝わり方が異なるということを。

協力会社へ語ったと同じ事は、全員を前にしても語っていました。ですが、”直接に”語ってくれたと受け取ったのは、数名を相手に話したときのほうだった。その協力会社の方の言葉のとおりです。

その協力会社の方にしても、多数のうちの一人として聞いたときのことも覚えていたかもしれません。しかし、心に響くように伝わったのは、彼の話を少人数で耳にした時だったわけです。

 

 

大手企業から地元の中小製造企業へ転職して現場の管理者を担ったとき、同様な経験をしました。

それまでなんら関連も縁もない人間が外部からやってきて、管理業務を担うには、工夫が必要です。

10名規模の現場のメンバーを前にして語ることもありましたが、想いを伝えるのに最も効果的だったのはface to faceのコミュニケーション、つまり個別面談でした。

こちらの想いを伝えるのに、”直接”ひとりひとりへ語るに勝る手段はありません。相手の本音を引き出すにもこれが一番です。

”自分のために語ってくれている”という気持ちを相手が抱いたとき、想いを受け入れる態勢が整う。想いを上手に伝えたかったら、”自分のために語ってくれている”という感情を抱かせることです。

先の協力会社の方も、同様な感情を抱いたと推察されます。心に響くように伝え、感情に訴える要素を加えることが工夫のポイントです。

 

 

 

・100名規模のメンバーに語るよりも、数名のメンバーへ語った方が心に響きやすい。

・数名のメンバーに語るよりも、ひとりへ語った方が心に響きやすい。

これは、その組織のリーダーが持つ”影響力”の大きさを反映しています。逆に言うと、影響力があるリーダーは100名規模のメンバーを前にしても、ひとりへ語ったと同じ程度に心を響かせ、感情に訴えることができるのです。

それが「影響力のある」リーダーの姿です。

ですから、影響力を高めるために、「影響力のない」リーダーは現場とface to faceのコミュニケーションをとります。あるいは、100名規模のメンバーを前に語るならば繰り返し、繰り返し語ります。

これは、外部から加わって新たに担った、中小現場の管理者時代に意識していたことです。

 

 

繰り返し、繰り返し、繰り返し語れば、「影響力のない」リーダーの想いも少しずつ、理解され、伝わり、浸透していくのです。想いを愚直に繰り返し、繰り返し、繰り返し語れば、徐々に影響力は高まります。

多数のメンバーを前にして一度だけ語り、言ったことが伝わらない!と嘆いている経営者は影響力を高める工夫をすればいいのです。

影響力を高めないと現場を掌握できません。

現場で問題が発生したとき、「それは以前に言っただろう!」と現場を責める経営者や管理者がいます。それは、自らの影響力のないことを棚に上げていることに他なりません。

 

face to faceのコミュニケーションでしっかりその想いを伝えましたか?

全員を前にして繰り返し、繰り返し語りましたか?

そうすれば経営者の想いは必ず現場に浸透します。想いが現場の隅々に浸透すれば、現場から共感を得て、やる気を引き出しやすい環境が整います。

こうした環境になれば、経営者は自らの考えを現場へ伝えることが容易になります。ベクトル合わせも楽になるのです。経営者が不在でも現場は意図をくみ取れるからです。

つまり「影響力のある」とは現場の隅々に自らの想いを浸透させた状態を言うのです。

経営者の想いが隅々に浸透している現場は強いです。

経営者のことを理解できていますから、やることも早ければ、先手も打ちます。

 

 

face to faceのコミュニケーションで、その想いをしっかり伝えましたか?

全員を前にして繰り返し、繰り返し語りましたか?

 

まとめ:想いを現場の隅々にまで浸透させ、影響力を高める。想いを上手に伝えたかったら、”自分のために語ってくれている”という感情を相手に抱かせる。