「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第36話 改善活動のテーマを経営者自ら選定する

QCストーリーの1項目、テーマの選定と7項目、今後の課題の設定を経営者が自らやる。現場の将来を考えているのは経営者しかいないから、という話です。

 

QCストーリーをご存知でしょうか?

 

改善活動や5Sを現場で展開している中小製造企業は多いです。そして、多くの経営者は改善活動や5Sの重要性を理解されています。

こうした現場活動を進める手法が「QCストーリー」です。標準化された問題解決の思考プロセスと言えます。

1)テーマ選定

2)現状把握

3)要因解析

4)対策の立案と実施

5)効果の確認

6)歯止めと標準化

7)まとめと今後の課題

 

QCストーリーはPDCAをまわす訓練をするには最適です。改善活動には現場の思考訓練、実践訓練の側面もあります。

問題を見つけたとき、どのように考え、どう動くのかを学べます。身に着けてしまえば、当たり前の思考プロセス。ですから、こうした基本中の基本を強化するのは極めて大切です。

これからのモノづくりで求められるのは地頭の強さ。言われたことをそのままやっているだけの現場ではこの先が不安になります。

人財育成で、基礎体力を強化するのは経営者の重要な仕事です。スポーツと同じです。仕事の基礎体力を訓練して、強化し続けます。

 

 

 

中小現場の管理者をやっていて痛感したのは仕組みの大切さです。業務が見える化されていないとまったく仕事が進みません。

管理者という立場にも関わらず作業に時間が割かれる事態に何度も陥りました。

そうなると、やるべき業務はわかっているのに、手がつかない。日々の作業に忙殺されます。忙しいだけで、”付加価値”を実感することができず悩んだことがありました。

 

モノづくりの現場は、本来、こうするともっともっと楽しく、張り切って仕事ができる、ということを知っていただけに、なんとも言えない閉塞感を感じたこともあります。

ですから業務を効率よく進めるという観点から、仕組みは不可欠です。仕組みがあってこそ経営者は、経営者にしかできない仕事に専念できるのです。

 

仕組みが持つ、業務効率化の側面とともに重視したいのは人財育成の側面です。

現場は、いい仕事をするための知識やノウハウを身に着けます。さらには仕事をやり切る根性や胆力も強化できます。

仕組みが果たす人づくりの側面を忘れてはなりません。

仕事をやり切る根性や胆力をしくみで育む

 

 

人に動いてもらわないと全く仕事が進まなかった中小現場の管理者時代に、最も時間を割いたのは仕組み作りです。

業務を効率的に進めるにも、人財育成を進めるにも有効でした。判断基準を現場へ与え、後は現場自身が自律的にPDCAを回すのを促しました。

そのためにフォローと評価へもかなりの時間を割きました。現場は自分のことに興味を持ってくれない上司の話には耳を傾けませんので。

 

それまで改善活動をやったことのない現場にQCストーリを指導したことがあります。そして、中小の現場で管理者の仕事を進めるにしたがって気が付いたことがあります。

それは、現場と管理者との役割分担についてです。

 

 

QCストーリーの1番目と7番目、つまり「テーマの選定」と「今後の課題」は管理者である私自身がやっていたということです。

その職場の1年先を思い浮かべ、今やるべきテーマを現場へ提示しました。(テーマの選定)

それをもとに、現場では改善活動を進めました。その後の取り組みは現場へ任せます。ただし、フォローは欠かせません。

そして、最後、今後の課題を現場へ提示しました。(今後の課題)それが、QCストーリーの1番目に戻って、次の改善活動のテーマに変換されます。

こんな感じです。

 

 

なぜ、その当時、管理者の立場で、QCストーリーの最初と最後をやることになったのか。

それは、その職場の1年先、2年先を考えて、手を打たねばならない立場だったからです。先のことを考えて構想していたのは私自身だったからです。

先を見通すと、逆算して今やらねばならないことが自然と見えてきます。

俯瞰した仕事のやり方が可能だったのは、お世話になった中小の経営者の方に全面的に任せてもらったおかげでもあります。

 

 

 

QCストーリーの1番目、テーマ選定をどのようにやっていますか?現場に任せているでしょうか?

それならば、経営者が考えている5年先、10年先の見通しが現場の隅々にまで浸透していますか?

浸透しているならば問題はありません。現場は経営者の想いを十分に理解したうえで、想いを実現させるためのテーマを選定します。経営者の役に立ちたいと思うのが現場だからです。

 

 

一方で、もし、想いが共有されていないのにも関わらず、テーマ選定をやらせているとしたら・・・。

それは”自主的”という表現に隠れて、テーマ選定の役割を現場へ”丸投げ”をしていることと同じです。

工場の長期的な目標も提示されていないのに、現場はテーマを決めなければなりません。現場が選定するテーマは工場経営との関連が薄いです。

現場はそうしたテーマに、取り組む必然性を感じるでしょうか?

 

まずは、経営者自らテーマの選定をやるのです。

現場の将来を考えているのは経営者しかいないからです。

そうしたテーマをやりきることで、現場は役に立つ仕事ができたと、有能感を感じます。持続的なやる気を引き出せます。

当然のことですが、改善活動ではテーマの選定が最も重要なのです。

 

 

改善活動のテーマを経営者自ら選定して、工場経営への貢献を現場に感じさせませんか?

 

まとめ:QCストーリーの1項目、テーマの選定と7項目、今後の課題の設定を経営者が自らやる。現場の将来を考えているのは経営者しかいないから。