「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第35話 仕事をやり切る根性や胆力をしくみで育む

仕事を通じてしか人を育てることはできない。仕組みを通じて人を育てる。業務の成果を数値で評価できるようにすることから始める、という話です。

 

仕組みで若手人財を育てていますか?

人財が育つような仕組みとなっていますか?

 

 

製造現場の管理ポイントは3つです。

Q(品質)、C(原価)、D(納期)。

品質管理、原価管理、生産管理を現場で展開します。管理なので比較対象すべき基準値が必要です。基準値が無ければ管理はできません。

 

さて上記3つの管理の中で特に注意をしなければならないのは生産管理です。生産管理の目的は納期順守です。顧客が要望するだけの数量を希望の納期に届けます。

ですから納期と数量を管理すれば生産管理ができていると考えがちです。

 

納期に間に合ったのか、間に合わなかったのか。

生産管理とは納期遵守をチェックすることだ。

 

これではダメです。なぜなら生産管理は、3つの管理で構成されている生産統制も要求しているからです。

現品管理。

余力管理。

進捗管理。

生産統制と呼ばれる3つの管理です。つまり生産管理は生産計画+生産統制です。納期順守のためには3つの管理が必要であるということです。

 

そのために生産活動の流れを見えるようにしなければなりません。

したがって生産活動を数値化する必要があります。

納期は重要な管理項目ですが、生産活動をそれだけでは表現できません。生産タクト、生産能力、生産リードタイムなど、他の工程指標も必要です。

管理である以上、対象となる各種現場活動の数値化が欠かせません。他の2つの管理、品質管理と原価管理のことを考えると当然のことです。

 

 

目で見る管理は仕組みの基盤です。

業務の定量化が必要です。

管理業務は判断基準がなければ始まりません。

業務の指数化は管理業務自体を進めるためです。

 

こうして構築されたしくみを通じて、業務の成果を客観的に評価できるようになります。業務の成果を客観的に評価できるので、仕組みが果たす役割がもうひとつ加わります。

 

それは、人財育成です。

しくみは人を育てます。

25年にわたる製造現場での経験を通じて感じたことは、人は仕事を通じてしか育てられないということです。数値で評価できる業務が人を育ててくれます。

 

 

先輩や上司、それに管理者として現場メンバーや若手人財とどれだけ直接に話をしてきたかわかりません。

やる気を引き出し、動機づけを図るには個別具体的に直接話をするに限ります。

こちらのことを知ってもらい、相手のことを知るのにフェイス ツゥ フェイスの対話に勝るものはありません。

現場にいい仕事をしてもらうためには、経営者も自分自身のことを知ってもらう必要があります。

 

 

しかし、こうした直接的なコミュニケーションでさえ、その役割は人づくり、人財育成のきっかけづくりまでです。

ここから先は仕事を通じて学び、経験を積んで訓練されます。そして、その時に必要なのは数値で評価できる業務なのです。

 

 

人財育成の過程で、現場が、特に若手人財が学んで身に着けて欲しいことはなんですか?

具体的な仕事のノウハウややり方、スキルでしょうか?

それもあります。

しかし、訓練を重ね、真っ先に強化して欲しいことが他にあるはずです。

 

それは、現場が自ら決めた仕事をやりきる力です。

経営者なら皮膚感覚で理解している、なんとしてでも仕事をゴールへ導く根性や胆力です。

 

中小現場の人財は貴重です。全員に全力で活躍してほしいです。将来の不安を感じることなく、経営者を信じて全身全霊込めて仕事に打ち込んでもらいたい。

その前提条件は仕事をやりきる根性や胆力です。少々の困難にめげすにやりきるエネルギーです。

経営者が仕組みを通じて学んでもらいたいことは、そうしたことではないでしょうか?

 

 

そのためには仕事が数値で評価されていることが不可欠です。頑張る判断基準となるからです。

もうすこし、もうすこしと、目標に近づきつつある状況を思い浮かべて下さい。最後、もう少しのところでゴールというところで発揮されるのは何でしょうか?

火事場の馬鹿力です。

 

こうした力が発揮できるのも具体的なゴールがあるからです。ゴールは輪郭が明確でなければなりません。そのためにはどうしても数値が必要なのです。

 

 

自ら決めた仕事にとりかかり、ゴールに近づいていく。目標の数値を見ながら自ら判断してゴールを目指します。

ゴールを目の前にして、もうすこし、もうすこし、となったところで最後のひと踏ん張りです。

これは、もう、自ら体感して感じ取り、達成感を味わうことなしには決して身につかない感覚です。

仕事をやり切るのに必要な根性や胆力は、仕事を通じてのみ訓練され強化されます。

 

 

多くの現場の管理者を経験した中で仕組みの重要性を感じたのはこうした観点です。しくみには人を育てる機能があるということです。

日々の仕事が最良の教師役を果たします。

 

 

仕組みの上で仕事をこなしていくうちに、仕組みにこめられた経営者の想いも現場に定着します。

それこそが組織の風土や文化につながるのです。

 

 

仕組みがない現場では、そもそも仕事をこなすのに時間がかかってしまい、忙しい毎日を送っていました。

仕組みづくりのきかっけを探っていましたが、なかなかその時間を作り出せずもどかしい思いもしました。

それだけ日々の業務をこなすだけで手いっぱいだった・・・。忙しいけれども、ただ、何かかが足りない感じがしていました。

上司や同僚との共通用語というか共通の思考パターン。仕事を進める上での組織風土や文化が欠けている感じがしたのです。

 

 

そうした経験から、仕組みは人づくりの役割を果たすとともに、組織文化や風土を生み出すことに気づきました。

つまり人づくりは組織文化や風土そのものなのです。しくみは人づくりであり組織文化や風土そのもの。

仕組みには経営者の想いが反映されているのだから当然のことかもしれません。

 

 

全ては業務の成果を数値で測れる体制を整備することから始めます。明確な目標を掲げることで現場は頑張れます。

 

業務の数値化されているしくみを生かして人を育てる体制を整備しませんか?

 

 

まとめ:仕事を通じてしか人を育てることはできない。仕組みを通じて人を育てる。業務の成果を数値で評価できるようにすることから始める。