「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第38話 現場業務の構成も「品揃え戦略」で考える
現場に対して新たな業務を指示したら、その分、なんらかの現場業務を省く。現場業務にも「品揃え戦略」の発想が欠かせない、という話です。
現場の業務処理能力を把握したうえで、その新たな業務を指示していますか?
小売業の店舗では商品陳列に知恵を絞ります。
売れ筋商品を少しでも多く手に取ってもらいたい。
いい商品をお客さんに届けたい。
お客さんに商品購入を促す目的で商品の陳列を行っています。
ですから、商品陳列では、お店の方も気合が入ります。
新商品はたくさん並べたい、売れ筋商品は外せない、おすすめ商品も目立たさたい・・・。
少しでも多くの商品を並べたいと考えるのは当然のことです。
しかし、制約条件があります。
商品の展示スペースには限りがあるということです。
原則的に展示スペースは一定です。
ですから、限られたスペースをいかに有効利用するかがポイントになってきます。
店舗における品揃え戦略です。
何か商品を増やしたら、何かを減らす。
品揃え戦略ではこの、足し算、引き算の発想が欠かせません。
経営者は現場の業務の水準を上げるために仕組みづくりをします。
属人的な要因を排除し、組織的に仕事を進めるチームをつくるのです。
そこで経営者は、チームにどのような仕事をさせるべきかと考えます。
業務の数値化は大切だから、集計業務は外せない・・・。
日々発生するトラブルの原因データベースの情報のメンテナンスも欠かせない・・・。
3現主義にしたがって製品の品質を直に確認させることもさせなければ・・・。
経営者の頭には、重要業務が次々と浮かんできます。
仕組みをつくって業務水準を上げようとしているのでなおさらです。
現場でやるべきことが盛りだくさんとなります。
現場の本業は「生産活動の実務」であることを、ついつい忘れがちです。
仕組みをつくろう!と気合が入るあまり、本業に影響を及ぼすほどの管理業務を現場に設定してしまうことがあります。
現場の仕組みづくりでも大切なのは「品揃え戦略」です。
開発業務の管理者を担っていた頃、こんなことがありました。
新たに開発した生産技術を導入した生産ラインが立ち上がった時の話です。
新たに立ち上がる生産ラインでは、まず体制を整備する必要があります。
生産実績、品質、設備稼働、等々多岐にわたる管理項目を設定します。
このラインでは新生産プロセスが導入されました。
したがって、従来にはない管理ポイントが加わります。
従来にはない管理ポイントがしっかり守られているか、立ち上がったばかりの現場で何が起きているのか、様々な実績を記録して様子を観ることが必要でした。
そこで、現場リーダーへ新たな業務をどんどん出しました。
ある日のことです。
段取り作業を確認しようと製品切り替えが予定されていた時間に現場へ足を運びました。
時間になりましたが、段取り作業が開始されません。
現場の作業者は手持無沙汰で立っているのです。
「どうしたのだ?」と聞くと、いっしょに段取り作業をするはずの現場リーダーがまだ来ないから、との答え。
そこで、現場詰所へ足を運ぶと、当の本人は何やら資料をまとめているところでした。
なんてことはない、私自身が、今日までにまとめておいてと依頼をしていた不稼働要因実績の整理を一生懸命にやっていました。
「こっちはいいから、早く段取りを。」と指示した次第。
管理者として反省でした。
必要だからとは言え、本業へ影響を及ぼす程に、現場へ業務を加えてはいけません。
当たり前のことですが、現場の状況を把握していないと、ついついやってします。
ですから現場リーダーとのコミュニケーションは大切なのです。
また、現場業務にも「品揃え戦略」の発想が欠かせません。
現場に対して新たな業務を指示したら、その分、なんらかの現場業務を省く。
現場でこなせる業務量は原則的に一定なのです。
その一定の業務量のなかで、成果が最大化する業務の組み合わせを経営者が考えるのです。
品揃え戦略と全く同じです。
品揃えを増やしたかったら、店舗では陳列スペースを広げるしか方法はありません。
そして、空間の制約は如何ともしがたい時があります。
一方、現場でこなせる業務量を増やしたかったら、現場のスキル、現場リーダーのスキルを向上させるという方法があります。
生産性を向上させる人財の可能性は無限大です。
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まとめ:現場に対して新たな業務を指示したら、その分、なんらかの現場業務を省く。現場業務にも「品揃え戦略」の発想が欠かせない。