「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第439話 腹落ちしてもらって自主性を生み出しているか?

「材料費を減らす狙いがはっきりします。」

人時生産性向上プロジェクトに着手しようとしている経営者の言葉です。

 

これまでも経費削減の指示を出してきました。指示された現場は指示にしたがって動きます。ただ、経営者はもの足りません。

言われたことしかやらないと感じています。もっと自主的に経費削減をはじめとした現場活動をやってもらいたいと考えている経営者です。

 

プロジェクトの構想を考える時点で、製造業の収益構造を確認しました。構造を理解した経営者は何かひらめいたようです。

収益構造に沿った説明をすれば、現場活動を促せるのではないか?

これまで経費削減を目的としていました。そこで、狙いを人時生産性向上に変えるのです。先の経営者は、現場活動と利益が繋がって見えてきました。冒頭の言葉です。

 

 

 

 

 

「現場には自主的に動いてもらいたい。」

経営者の共通の願いです。

経営者の仕事場が外にある以上、経営者は、工場のことを右腕役や現場キーパーソンへ任せるしかありません。現場が自主的に動いてくれなければ、経営者は外に専念できないのです。

売上移動累計の肩上がりを維持できる経営者とそれができない経営者の違いは、「右腕役や現場キーパーソンへ任せるしくみ」を持っているか、持っていないかによります。

これはご支援先で感じることです。右肩上がりトレンドを創ることができている経営者は、この仕組みを持っています。

 

 

 

 

 

「任せる」には前提条件があります。4階層の指示導線です。明確なトップダウンで経営者の意志や意図を現場へ浸透させた先に「任せる」があります。

右腕役や現場キーパーソンが果たすべき4階層の役割を理解し、経営者に代わって現場を仕切らなければなりません。仕切るにしても、経営者の意志や意図を理解していないと、現場のベクトルを揃えようがないのです。

 

「右腕役や現場キーパーソンへ任せるしくみ」を手にしたかったら、まずは、指示導線を構築します。その上で、経営者は、現場へ働きかけるのです。

 

働きかけるとは、「協力を引き出す」、「協力をお願いする」であり、「説得する」ではありません。協力を引き出せる土壌は、指示導線に従った信頼関係の有無次第です。したがって、このあたりに問題を感じるなら、指示導線の構築、修正を急がないといけません。

 

右腕役や現場キーパーソンが4階層の指示導線を機能させてくれているなら、話は早いです。導線へ経営者の想いを、正しく注入すればいいだけです。

想いは抽象的ではなく、具体的な方が刺さりやすくなります。数値で伝えるのです。利益を拡大する具体策を現場へ説明します。

こうやって「右腕役や現場キーパーソンへ任せるしくみ」を創っていくのです。

 

 

 

 

 

製造業の収益構造は固定費VS付加価値額です。固定費の6~7割が人件費と設備費で占められます。そして、年間分の固定費を決めるのは経営者以外にいません。

したがって、経営者の意志や意図は、固定費に反映されます。経営者が決めた固定費を付加価値額で回収するので、「比べる」構造になるのです。

 

一方、売上高-費用ではこの考え方が出てきません。また、売上高も費用も、年間通して、生産量(販売量)と共に増減します。今の立ち位置を把握したくても、分かりにくいです。

 

その点、固定費VS付加価値額は、今の立ち位置を把握しやすいのです。

回収すべき固定費が文字通り、固定され一定値となっています。把握しやすいことは、人へ説明しやすいものです。

利益を拡大する具体策を現場に考えさせ、そして実践させるには、思考と行動を促す知識を手渡す必要もあります。製造業ではどうやって利益を出すのか?

考えるにも、知識が必要です。

 

 

 

 

 

利益は売上高-費用なので、コスト削減は、利益拡大に貢献します。これに間違いはありません。ただ、自主性を引き出すために、引き算ではなく、足し算で伝えたいのです。

固定費VS付加価値額の収益構造によれば、現場に頑張ってもらいたいことは、付加価値額の積み上げであると説明できます。付加価値額は@付加価値額×数量です。やることは@付加価値額を高めること、数量を増やすことの2つとなります。

 

価格アップと原材料や外注の見直しで、@付加価値額を上げられないか、考えます。さらに、詰めて、空けて、取り込んで数量を増やすこともやるのです。

利益を拡大する具体策が、コスト削減だけでは、視点が一方向です。付加価値額積み上げの考え方は、思考の多様性を引き出せます。

思考の多様性が自主性を生み出すのです。

 

まずは、単価アップのために必要なことは何か?を考えます。価格競争を回避して、お客様に選ばれる製品を造るにはどうすればいいのか?新たなコア技術に挑戦するのか?

さらには、原材料原単位を下げ@付加価値額を上げるることにも知恵を絞るのです。不良率を改善するには?外注でお願いしていることを内製化して外へ出ていくお金を減らすには?

そして、詰めて、空けて、取り込むために、ボトルネックをやっつけることも検討します。ボトルネックをやっつけるために、事務所も含めた全従業員から、どんな協力をしてもらえるか?こんなことも考えるのです。全ては数量を積み上げるためです。

 

こうした、多様な視点を現場に持ってもらえれば、思考の多様性が広がります。思考の多様性が広がれば、志がある従業員は、考え、やりたくなるものです。

 

コスト削減の思考では、「外注はよくないこと」と考えがちです。外へお金が出てしまいます。ただし、積み上げの思考も持っていれば、必ずしもそうはなりません。

従業員の工数を、内製化ではなく、ボトルネック工程のサポートへ当てた方が、効果大となるかもしれないのです。

思考の多様性があれば、広く、損得勘定ができます。状況を里香できれば、志ある右腕役や現場キーパーソンは、自主的にやりたくなるものです。

 

こうした右腕役や現場キーパーソン、ベテランや若手従業員がいる経営者は幸せです。

外の仕事に専念できます。専念できれば、売上高に妙なガラスの天井も生まれず、右肩上がりの成長を実現できるのです。

 

 

 

 

 

「プロジェクト全体の構想を、この図で説明できそうです。」

先の経営者は、固定費VS付加価値額の収益構造図で、まずは、右腕役や現場キーパーソンへプロジェクト方針を説明しようとしています。

利益は製品にぶら下がっているのではない。

このことを知ってもらうのも大事です。材料費を削減するのも、単なるコスト削減ではないと説明できます。

こうやって、製造業の収益構造を知れば、利益拡大には、チーム力が大事だと、腹落ちするのです。腹落ちした先で、自主性が生まれます。

 

自主性は、「指示導線」と「自主性を促す知識」によって生まれまるものです。狙いを分かりやすく説明し、協力をお願いし、協力を引き出します。

人は、理解できたことに、共感をしやすいものです。難しいことは易しく、易しいことはより興味深く伝えます。自主性は、説得しても生まれません。

貴社には、自主性を生み出す環境が整備されていますか?

次は貴社が挑戦する番です!

 

成長する現場は、狙いを分かりやすく説明し、腹落ちしてもらって現場の協力を引き出す。

衰退する現場は、自主性を引き出そうと説得し、ますます言われたことしかやらなくなる。