「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第57話 生産計画で生きた情報のながれをつくる
貴社の生産計画は現場のワイガヤを引き出していますか?
生産計画の目的は見える化です。見える化があって、現場の標準化と全体最適化が進みます。そして、全体最適化とは、生産の流れをつくることにほかなりません。
昨今の多品種化が進んだモノづくり現場では、”モノ”の流れが滞りがちです。ですから、現場のあらゆる”流れ”に着目します。現場に顕在する問題の多くは”流れ”が滞ることで起きているからです。
現場に流れているのは”モノ”ばかりではありません。情報も流れています。情報が毛細血管を流れる血液のごとくに現場の隅々まで流れていると、現場は活性化されます。自律性が促されるからです。
現場のワイガヤを引き出せる情報こそが、生きた情報です。生きた情報抜きに、見える化は進みません。
経営者は、情報の流れにも目を光らせます。
先日、消費者向け生活製品の製造を主業とする企業様からご相談を受けたときの話です。
売上高を伸ばすにはどうしたらよいか、現場からアプローチができないかというご相談でした。
その企業様では、幸いにして継続的に仕事の依頼があります。しかし、たびたび、生産能力を超えてしまうので仕事の依頼をお断りしなければならない状況にあります。
さっそく、現場を観察しました。
モノの流れが寸断されている、モノの流れが複雑で見えない、こうしたところが散見しています。現場改善の余地はありました。
ただ、この企業様の場合、解決すべき問題の本質は、そこにはないとの印象を受けたので、社長へ次の質問をしました。
「生産能力を超えているか、超えていないかは、どのように判断をしているのですか?」
社長の答えは、これまでの経験で社長自ら判断しているとのことです。
現場には、案件別に、納期だけが示されたガントチャート式の生産計画が、掲示されていました。現場に計画を「掲示」することは、情報共有化という点でとても有効です。
「掲示」は現場での議論を生みだしてくれます。「掲示」を目の前にして、関係者であーでもない、こーでもないとやるのです。ワイガヤを引き出せる情報こそが、現場にとっての生きた情報です。
ただし、残念ながら、この企業様の情報共有は、納期に限定されていました。それ以上の情報は乏しく、状況の変化や変更に対して、現場は臨機応変に対応しがたいです。
社長のみならず、現場も現状を把握できていないので、知恵を出しようがありません。
適切な情報が、適切なときに、適切な人に届けば、その情報はさらに効果的に、拡散していきます。そうして現場の隅々に情報がいきわたり、現場の自律性を促すのです。
こうした情報の流れが、効率のよい生産の流れをつくります。
そこで、生産計画の形式を変えるのです。現場の自律性を促す情報を提供できる生産計画に変えるのです。生きた情報が流れる現場にします。
生産計画の切り口は、案件別のみではありません。
工程別、お客様、作業者別、等々。
実例を示して説明すると、「あっ、これならいけそうです。」
その現場の強みを引き出せる切り口がありました。
「掲示」を目の前にして、関係者であーでもない、こーでもないとやれる生産計画のイメージが浮かんでくればOKです。
生きた情報を現場で共有するだけで、モノの流れはよくなります。
現場の状態が見えるので、現場の余力を客観的に判断できるのです。それに加えて、特急、突発案件に関しても、現場の工夫を引き出しやすくなります。
社長が受注情報を受けたとき、その案件をいかにこなすのか、判断しやすい状況が整備されていきます。自信をもって、どんどん案件を受けることができるのです。
現場には、生きた情報が欠かせません。
生産計画が、モノづくりのスタートになります。その生産計画には、工夫の余地がたくさんあるのです。現場の強みを引き出す視点で、現場に適した生産計画の形式を検討します。
生産性向上は、次の3つの視点から考えます。
・ハードウェア
・ソフトウェア
・ヒューマンウェア
生産性を飛躍的に伸ばしたいのならハードウェアです。既存設備改造、新規設備導入による生産性向上です。
ただし、その前にやるべきことがあります。
それが、ソフトウェアとヒューマンウェアです。ハードウェアの効果を最大化するためにも欠かせません。
モノづくりのスタートとして、現場での議論を促す、貴社ならではの生産計画を考えるのです。情報の流れが、モノの流れを生みます。
生産管理において生産計画が果たす役割は小さくありません。生産計画で適切な情報の流れを現場につくり、現場からやる気や知恵を引き出します。
そうして生産のながれをつくるのです。
現場の強みを引き出せる生産計画の形式を考えませんか?