「生産性ロードマップ戦略」—儲かる工場経営を目指して—第73話 IOTを成功させる現場の文化や風土づくり

IOTを活かせる企業文化や風土になっていますか?

 

情報通信技術の現場導入をテーマにした研究会で議論をしていた時の話です。

現場へIOTを導入し、実践を開始したある金属加工メーカーの担当者が、情報通信技術を現場で生かす勘所について印象深いコメントを発していました。

 

情報通信技術を現場へ導入すると、成果物は一般的に「システム」と表現されます。

その出来上がった「システム」について、担当者は次のように説明していました。

 

「システムとは、その企業の文化や風土そのものです。なぜなら、現場が自発的にそのシステムを生かそうとしない限り、成果がでないからです。ベクトルがそろって初めて期待された効果を生み出すことができます。

当社でも、システムを活用してもらうため、現場への働きかけを重視してきました。社長が定期的に想いを現場全員へ繰り返し伝えてきたのです。これによって全社のベクトルがそろい、システムが出来上がりました。」

 

この企業では、独自のIOTシステムを立ち上げ、成果を出しています。

そのシステムの構築、現場導入を直接担当した担当者の話だけに興味深いです。

 

つまり、IOTを始めとした情報通信技術を現場へ導入するには、事前準備が必要であるということに気づきます。

・現状の現場の文化や風土は、システムを導入する水準に至っているかを判断する。

・至っていなければ何をどうすればいいのか対応する。

この判断と対応が必要です。

 

この企業でも、最初からうまく行ったわけではわけではありません。

現場の負荷を軽減するため、データ収集は、可能な限り、自動収集機能を採用していましたが、全てについてできるわけではないので、どうしても現場作業者の申告によるデータ入力が必要となる項目もありました。

導入当初はなかなか徹底できなかったそうです。

こうした作業をどうやって現場へ定着させるかが課題となりました。

 

その企業の具体的なやり方の詳細は、別の場でお話させてもらいますが、結論から言えば、トップ自ら現場へ繰り返し、想いを伝え、(ここが大事なことですが)教育することがカギでした。

システムを生かすには、現場の自発性が欠かせないのです。

そのシステムを使うことが自分たちのためになる、ということをいかに実感させるかが大切であるとも担当者は語っていました。

 

 

 

 

 

一方的な指示で、やらされ感たっぷりの現場では、システムは重荷となります。

大手から中小の現場へ移って、製造現場の管理者を担っていたとき、その企業では、受発注システムがうまく活用できない問題を抱えていた時期がありました。

 

営業担当の方が、次のように話していたことを思い出します。

「ベンダー主導で導入されて、現場の使い勝手がいまひとつよろしくなくてね。業務効率を高めたい社長の意図は大いに理解はできるのだけれども。」

 

社長の想いが先行しすぎて、ベクトルを揃える前に、ベンダー主導で導入してしまったようなのです。

その結果、システムを使うこと自体が目的化されていました。

 

現場の自発性を発揮する環境とは言えず、どちらかと言えば、義務感にかられてシステムを使っていたわけです。

やらねばならない、という義務感のみでは長続きしません。

システムが活用されるもされないも、現場の自発性次第であり、それはとりもなおさず現場の文化や風土が影響するということです。

 

情報通信技術を生かすには、それを使う現場の自発性が欠かせないこと。

そのために何をすべきか、経営者が自ら考え、実践すること。

現場へ導入したIOTを見事に使いこなしているその企業では、トップ自ら想いをつたえ、現場を教育した結果、現場の自発性を発揮させる環境づくりができました。

 

IOTの現場導入では、情報通信技術やビジネスモデル構築の方に焦点を当てがちですが、それらよりも重要な論点があるのです。

・システムを導入して成果を出すには、現場の自発性が欠かせない。

・それにはトップ自ら、想いを伝え、現場を教育することが欠かせない。

・なぜなら、ベクトルを揃える必要があるから。

 

 

 

 

 

昨今、生産性を高める手段のひとつとして多くの業界でIOTが唱えられています。

製造業もそのひとつです。

積極的な社長は、すでに動き、始めています。

会社の規模に関係ありません。

規模に応じてのやり方があるのが、昨今の情報通信技術です。

 

そして、積極的な社長は、こうしたシステムを成功へ導く勘所も押さえています。

積極的な社長は、想いを現場へ浸透させるという仕事も手抜きしません。

ベクトルを揃える重要性を理解しているからです。

これは、言い換えると企業文化や風土づくりであり、社長にしかできない仕事です。

 

そもそも、現場を豊かにしたいと熱望し行動をしている社長の姿を日ごろから目にしている現場はトップの想いが伝わりやすい状況に至っています。

「工場経営の本質は自分の想いを、他人を通じて実現することにある。」

積極的な社長はこのことを知っているのです。

社長は、自発性を促すため、日常的にいろいろな情報を現場へ伝えています。

 

企業文化や風土はトップの想いや行動が反映された現場から醸成されるものであるということを考えれば、IOTを成功させるポイントが社長の行動にあるという論点に納得できます。

情報通信技術を現場へ導入し成功させるには、技術の前にやることがあるということです。

 

貴社現場の文化や風土はどうでしょうか?振り返って下さい。

IOTを始めとした情報通信技術を現場へ導入するとき、ベンダー主導では失敗するという話をしばしば耳にしますが、当然のことなのかもしれません。

現場の自発性もなく、ベクトルが揃っていないところへ、どんなに高価なシステムを導入しても成功はおぼつかないのです。

 

現場へ導入するIOTを成功させる手順をつくりませんか?